【解説】馬場善の破綻(仮説)
(株)馬場善は8月31日事業停止、事後処理を奥田貫介弁護士(福岡市中央区大名2-4-19 福岡赤坂ビル601、電話092-739-6262)ほかに一任して、自己破産申請の準備に入った。負債額は約16億5,000万円が見込まれている。
<会社概要>
社 名:株式会社馬場善
所 在:熊本本店:熊本市薄場1-13-27
福岡本社:福岡県糟屋郡粕屋町内橋686-8(登記本店)
代 表:馬場 譲(1947年10月生)
設 立:1976年6月
資本金:7,000万円
従業員:36名
業 種:硝子工事、建具工事
年 商:(10/5期)34億05百万円
同社は、高橋善商店などに勤め、業界経験を積み、1973年4月現代表により個人創業、1976年6月に有限会社馬場善商店として法人化、現社名に変更したのは2000年12月である。本社は熊本市に構えていたが、2002年10月実質的に福岡市中央区天神4丁目に移転、2009年8月に元々の本社であった福岡県糟屋郡粕屋町内橋686-8に移転している。一族以外の役員もいるが同族会社。
同社は、代表が以前から大手ゼネコンへの営業を続け信頼関係を構築、大成建設、竹中工務店、鹿島建設、西松建設などを中心とする大手ゼネコンとの取引を主体に運営されてきた。売上高に占める割合は8割近くに上る。元請による官庁工事は、硝子工事が独立して発注されるケースが殆どなく小さな仕事があるのみ。
同社は2005年、ベストセキュリティという防犯硝子事業を開始、遮熱効果の高い二重硝子としても取り扱うなど、利益率の高いリテール事業へも進出していた。
ところが、2005年5月民事再生法を申請して破綻した松村組に4,621万円焦げ付いた。それでも06年5月期は営業利益も出て不良債権償却後2,478万円の赤字で終わらせた。
07年6月には建設基準法の改正で、建築許可がなかなか出ず、多くの現場が建築着工できず社会問題化したが、それでも同社の売上高には影響せず、08年5月期は約30億円の売上高を計上した。また08年9月のリーマンショックでも09年5月期33億43百万円を計上、リーマンショックで建設現場がなくなる中、2010年5月期も34億05百万円を計上した。当期利益もそれぞれ計上してきた。(下記表参照)
<仮説>
増収を続け、利益を計上している同社が何故自己破産で破綻したのか疑問が生じてくる。
それゆえ、決算数値そもそもが長期にわたり粉飾されていたとしか考えられないのである。同社は元々借入依存度が高い、07年5月期の借入残は14億円(6ヶ月弱)を超えていた。しかし決算でそれなりの売上高と利益が計上されており、金融機関も強制的に取立に動
く内容では全くない。
問題点としてあげるならば同社の固定資産不足にある。熊本も以前いた福岡市内の事務所も賃借物件、主要資産は元々本社であった福岡県糟屋郡粕屋町内橋686-8の現本社兼作業場の不動産だけ(代表自宅も担保提供済)であった。10数億円の借入に対して、粕屋町の本社や自宅の不動産価値は知れており、無担保による運転資金貸し出しが主を占めていた。そのため、売上高を落とした場合、金融機関から引き揚げられる可能性が高くなる。さのため同社は粉飾を続けざるを得なかったと見る。
本社機能の福岡事務所を昨年8月移転している。当然経費を圧縮するため取られた措置であろうが、それほど資金繰りが厳しいものとなっていたと思われる。昨年12月から金融モラトリアムが施行され、金融機関の返済猶予はかなりの確率で可能となっている。しかしながらこれまで粉飾していたとしたら、金融機関の扱いは異なる。そのため金融機関に返済猶予の依頼もできかったと思われる。
そうしたそもそもの原因は松村組への焦げ付きにある。その後建築基準法改正問題、サブプライムローン問題からデベロッパー破綻問題、リーマンショックによる建設現場の大幅減少と建設市場は悪化を辿ってきた。同社が粉飾を続ける必然性を遡れば、松村組の焦げ付き事件に行き着くのであった。
馬場善の破綻が、民事再生ではなく、自己破産の理由がそこにもあるように思える。
以上、あくまで仮説ではあるが、同社がなぜ破綻しなければならなかったのかを検討する中で行き着いた結論である。
中堅同業者の殆どが、ここ数期売上高を落としている。
/千円 | 売上高 | 経常利益 | 純利益 | 備 考 |
05年5月期 | 3,087,000 | 60,000 | 17,528 | 4,621万円松村組に焦げ付く |
06年5月期 | 2,955,000 | 88,072 | -24,783 | |
07年5月期 | 3,053,000 | 49,337 | 30,210 | |
08年5月期 | 3,101,879 | 17,032 | ||
09年5月期 | 3,343,650 | 13,481 | ||
10年5月期 | 3,405,000 | 14,000 |
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