アイコン リバースオークションについて  現状の官庁工事の入札は・・・

リバースオークション(Reverse Auction)とは、売り手が買い手を選定する通常のオークションと異なり、買い手が売り手を選定する逆(Reverse)のオークション。

政府による調達(Procurement)の際に行われる競争入札がこれに対応する。通常のオークションでは、売り手が商品を拠出し、買い手が価格を入札して最も高い価格を入札した者に商品が渡る。つまり、売り手が買い手を選定する。
 
日本では、消費税増税をめぐって民主党内でも激しい議論が起きているが、増税派の仙谷由人・政調会長代行はテレビ番組で、反増税派の小沢一郎元代表が無駄削減や行政抜本改革を主張していることを「行革を今からいくらやっても2兆円、3兆円は出てこない」と批判していた。しかし、予算の圧縮は無理というのが、大メディアを含めた増税派の常套句だ。

<リバースオークション>

 しかし、それは嘘だ。イギリスなど欧米諸国の入札制度改革を視察してきた民主党反増税派の村井宗明代議士は、入札方式を変えて「競り下げシステム」を導入するだけで、大幅に予算カットできると主張する。
 
「予算の無駄で一番大きいのは、物品やサービスの官民価格差。鉛筆1本でも政府や公共機関は民間よりはるかに高く買っている。
行政刷新会議で昨年4月から試験的に44件の調達に競り下げを導入したところ、厚労省のポスターの印刷費は1枚あたり22円から11円と半額になり、同省の報告書の印刷代は3分の1、農水省の消火器は4割近く下がった。 内閣府のトイレットペーパーは1個あたり62円から36円。政府の一般会計の直接発注だけで年間12兆円の予算がある。同じ品目を同じ数量買っても、調達方法を変えれば、莫大な財源が出てくる」(村井氏)
 
  現在の一般競争入札は、業者が1回だけ札を入れ、一番安い業者が受注する。それに対して「競り下げ」は、落札したい業者が、何度でも価格を下げて応札することができる。欧米では「リバースオークション」と呼んでいる一般的な制度。(注、1億円以上の総合評価方式による入札制度では、一番安い業者が落札するとは限らない)
 
イギリスでは2010年、政府歳出削減のためにリバースオークションを導入。調達コストを14%も引き下げた。米国のオバマ政権も、調達契約改善計画を設定して、年間400億ドル(約3.3兆円)の削減を目標にしている。
 
かっての年金官僚や道路官僚の無駄遣いを見ても、日本の政府調達価格は諸外国よりさらにバカ高い。12兆円の国の直接発注に競り下げを導入し、イギリス並み14%削減なら1.7兆円、半減なら6兆円が浮く。
 
  さらに国が自治体に補助金などで出している間接発注がざっと30兆円、特別会計の発注も30兆~40兆円と見られ、自治体の直接発注を合わせると、毎年100兆円規模で役所のバカ高発注が繰り返されている。
そこにメスを入れれば1割カットで10兆円、2割なら20兆円が毎年削減できる計算。
 
リバースオークションは、制度を理解して取り組まなければ、逆に価格が上がることすらある。しかし、欧州で実施され、大きな効果が生じているこの入札方法、その方法を研究して最適化したやり方を導入すれば、その成果は必ず出る。日本のこれまでの談合方式及びその考え方に馴染んでいないだけである。  現在、東北で官庁工事に対して応札がないのは、労賃が高騰しており、現状認識のない官庁側の予定価格が低すぎた結果の現象である。
 
伊藤忠テクノソリューションズは、企業の資材調達や工事にかかわるリバースオークションのコンサルをしているが、企業にあってはバイヤが叩いた仕入価格から、更に10%近い、コストダウンを得ているとしている。
  国に金があるなら、金に糸目はつけないだろうが、金がないどころか大借金の国の財政であり、国の仕事で儲かろうとするおぞましさは払拭する必要がある。しかし、中国と何ら変わらない利権国家の日本であり、日本の国の隅々までこうした制度が設けられたとしても浸透するには100年必要だろう。
 
以前、談合問題が論議され、大手ゼネコンが組織する土工協が談合廃止宣言を発した。その後、国交省は最低価格方式を導入。ゼネコンは、赤字覚悟で挙って下限いっぱいの7割の入札価格を出す業者が続出、そこで登場したのが、総合評価方式であった。
入札価格とともに、案件に関わる要求書を提示、それに対し、応札者に対して提案文書を書かせ、それを点数化して落札者を決定する。しかしながら、入札価格は決定した点数となるが、提案書面を点数化することは難しく、審査官の恣意が入りやすくなる。大きな物件では、審査官の変わりに有識者会議が組織され、有識者により点数が決定される。しかし、この有識者たるものが曲者で、御用教授や御用知識人から構成されていることが殆どで、官製談合の巣窟となっているのが実情である。
 
何故、予定価格の3割引きの最低制限入札方式がなくなったかについては、粗悪工事の危険性が浮上したからであった。それを誘導するように、国交省は過去の建設現場の問題箇所をいっぱいマスコミに流し報道させた。そのため、ゼネコン団体からの是正申し入れもあり、この方式は短期間で終わった。3割引きではゼネコンは生活できないだろうが、2割引ではどうであろうか?
 
その後、総合評価方式が登場、国交省が地方自治体にも推奨して、大型工事の発注方式は何れも総合評価方式となっている。
 
<<入札の現状>>
長崎県の場合、総合評価方式でも、最低価格を持っており、その最低価格を下回った場合、価格が失格となり、入札自体が失格となる。下の長崎県の例が示すように、12業者が応札し、うち5業者の価格が、県が決定した最低制限価格より安いことから、失格となった。同県の場合、最低制限価格が予定価格のほぼ9割に設定されており、オンブズマンの談合疑惑度全国一の県になっており、制限価格が他県のどこよりも高く設定されているのが特徴。
(離島が多いからとの理由を聞いたことがあるが、その費用も積算し予定価格に入れれば解決する。しかも、離島工事より本土工事分が圧倒的に多い。)
 
長崎市では、新市民病院の建設に当たり、清水建設グループよりも14億円も高い164億円で大成建設グループが落札したが、スーパーゼネコンの間で、どれほどの価格以外の評価部分で差が出てくるというのであろうか、不思議でならず、情報開示を求めても市は決して応じようとはしない。市議会が求めても応じないほど密室で決定されているのが実態である。これすべて税金でまかなわれている。・・・・こうしたことから、リバースオークション制度が日本に導入されたとしても、田舎へ浸透するには100年かかると先述したものである。
 
<長崎県の一例>
長崎県の場合  総合評価方式の一例  
発注番号( 55826 ) 入 札 結 果 一 覧 表
工事番号
23県北漁生第12-9号
 
入札執行機関
県北振興局
工 事 名
小値賀地区水産生産基盤整備工事(小値賀漁港5工区)
 
入札執行日
平成24年1月16日9時 30分
工事期間
  平成24年3月28日限り    
 
落札決定日
平成24年1月20日
工事場所
北松浦郡 小値賀町 笛吹
 
 
 
 
 
予  定  価  格
113,014,000
一般競争入札で
 
    (税抜き)
競争参加資格の
 
最 低 制 限 価 格
102,660,000
ない者の 有 無
 
    (税抜き)
 
 
低入札調査基準
 
 
一般競争入札
価格  (税抜き)
 
(総合評価型)
低入札調査判断
 
 
 
基準価格(税抜き)
商号又は名称
入札金額
標準点
加算点
評価値
結  果
(A)
(B)
(C)
{(B)+(C)}/(A)
(株)長崎西部建設 
109,800,000
100
6.8
97.268
 
(株)長崎中央建設 
102,990,000
100
7
103.894
 
(株)西部工建 
102,850,000
100
7.05
104.084
 
(株)トモダ 
107,000,000
100
7.05
100.047
 
大石建設(株) 
102,777,000
100
8.8
105.86
落札
門田建設(株) 
102,345,000
 
 
 
失格
(株)ダイコウ建設 宇久支店
101,898,000
 
 
 
失格
増山建設(株) 
102,843,000
100
7.5
104.528
 
(株)上滝 佐世保支店
102,278,000
 
 
 
失格
(株)西海建設 佐世保支店
102,028,000
 
 
 
失格
(株)三基 
102,900,000
100
8.05
105.005
 
大坪建設(株) 県北営業所
102,390,000
 
 
 
失格
参加(指名)者数 12
※ 評価値の欄は評価値×100,000,000の数値を表示しています。
 以前、建設関係の仕事をしていたが、談合では当番の会社から、あなたの会社は1回目では・・・円で応札してください。1回目で決まらない時は2回目の価格は・・・円で・・・・と事前に連絡が来ていた。神業に近い応札価格はどうしてできようか。
 
<福岡市の場合>
福岡市では、最低制限価格が設定されていなかった時期に、談合破りが多発した。談合破りしたある業者に取材に行き、何故談合破りしたのか問い質したことがある。その結果、「今は・・・組合に加盟していない。自分の会社でやれる価格で入札した。(入札)価格が安いのは、今、仕事がなく、従業員を遊ばせて給与だけ払うより、従業員の給与だけでも、(入札する)仕事で出せることから仕事を取りにいっただけ」と話していた。一理ある。
こうした談合破りと称される事態が続発、福岡市は予定価格と最低制限価格も提示するという入札制度に切り替えた(制限付一般競争入札分、予定価格が2,000万円前後~総合評価方式対応案件未満、最低制限価格は予定価格の85%前後に設定)。そのため、その最低制限価格での応札者が殺到、落札者の決定はくじ引きとなっている。
 
福岡市の制限付一般競争入札の例
件名
春吉3号幹線築造工事
業種
一般土木
所在地
福岡市博多区店屋町2−16
商号又は名称
錢高・日本国土・羽野建設工事共同企業体
代表者氏名
(株)錢高組 九州支店
予定価格(円)
1,348,474,050
契約金額(円)
1,169,999,250
履行期間
2012年02月18日~2014年03月15日
履行場所
福岡市中央区今泉1丁目外地内
入札者の商号又は名称
入札金額(円)
評価値
辞退等
錢高・日本国土・羽野建設工事共同企業体
1,114,285,000
110.6844
 
西武・梅林・西部建設工事共同企業体
1,114,285,000
106.4969
 
鹿島・株木・才田建設工事共同企業体
1,114,285,000
102.0098
 
戸田・三軌・オカトク建設工事共同企業体
1,114,285,000
107.8413
 
東急・アイサワ・矢西建設工事共同企業体
1,114,285,000
102.533
 
間・大豊・九建建設工事共同企業体
1,114,285,000
108.3663
 
前田・大本・澄男建設工事共同企業体
1,114,285,000
102.7573
 
松鶴・環境開発・福東建設工事共同企業体
1,114,285,000
104.0281
 
佐藤・淺沼・サンコービルド建設工事共同企業体
1,114,285,000
105.8984
 
大日本・徳倉・古賀建設工事共同企業体
1,114,285,000
100.8126
 
鴻池・松尾・福岡中部建設工事共同企業体
1,114,285,000
105.8607
 
飛島・三幸・高山建設工事共同企業体
1,114,285,000
103.1316
 
フジタ・村本・九州総合建設工事共同企業体
-
 
辞退
大林・福田・海山建設工事共同企業体
-
 
辞退
 
当案件は、制限付一般競争入札となっているが、予定価格が大きいため、総合評価方式も併用されていることから、くじ引き案件ではない。当案件は予定価格の▲17.4%引きに最低制限価格を設定していたようだ。
[ 2012年2月24日 ]
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