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<京大6月20日発表分>
シバニア・イーサン 高等研究院物質–細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)教授と伊藤真陽 同特定助教らの研究グループは、大きさ1mmという世界最小サイズの葛飾北斎「神奈川沖浪裏」を、インクを一切使わずにフルカラーで作製することに成功した。

ポリマー(高分子)が圧力にさらされる時、「フィブリル」という細い繊維を結成する「クレージング」と呼ばれる作用が起こる。このフィブリルが視覚的に認識出来るレベルでクレージングが起こった時に視覚効果が得られる。

本研究グループは、OM(Organized Microfibrillation:組織化したミクロフィブリレーション)と呼ばれるクレージングを調整してフィブリルを組織的に形成させ、その形成したフィブリルで特定の色の光を反射する素材を開発しました。そして、フィブリル層の周期を調整することによって、青から赤まで全ての可視光を発色する事に成功しました。 

OM技術は、様々なフレキシブルで透明な素材上に画像解像度数14000dpiまでの大規模なカラー印刷をインク無しで行うことを可能にした。

本研究成果は、インクを使用しないカラー印刷技術の発展に繋がることが期待されるとともに、紙幣の偽造防止など様々な技術への応用が示唆されるとしている。

<報道分>
インクを使わずに高精細でフルカラーの印刷ができる技術を開発したと、京都大のシバニア・イーサン教授らの研究グループが発表した。光の反射によって見える「構造色」を利用する。論文が20日、英科学誌ネイチャーの電子版に掲載される。

 構造色は、コガネムシやクジャクの羽など自然界に存在し、独特の光沢があり角度によって見える色が異なる。従来の構造色を使った印刷技術は費用が高く、精密な印刷は困難だった。京大は高解像度で安価な印刷に成功した。

 京大の印刷術は、アクリル樹脂やポリカーボネートなどの高分子化合物の溶液を塗り、印刷したい画像をかたどった「マスク」を置いて光を当てる。
露光した部分だけひび割れて多層構造ができ、溶剤に漬けると当てた光の波長の違いなどによって狙った色が出るという。

この方法はインクを使わないため環境に優しく、退色を起こさない。伊藤真陽京大特定助教は紙幣の偽造防止などに応用できるとし、「特別な光源装置は必要なく、どんな色でも印刷できる」と話した。

↓構造色印刷技術で作成した大きさ1ミリの葛飾北斎の版画絵
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