アイコン 厳しさ続く建築金物業界/福岡

建築装飾金物業が一番良かった時期は、装飾金物により煌びやかな建物に施工されたバブル時代であろう。当時の建物は、重厚さや斬新さを醸し出すため、商業施設、パチンコ店、公共施設でも建築装飾金物が多用された。

バブル崩壊後も景気回復のため膨大な公共投資が発せられ、全国各地にホールや会館・資料館、以前の公民館とかけ離れデザインが付加された公民館、高齢者向け福祉施設など、大手設計会社が好き放題に設計して予算化、3次曲面や鏡面仕上げのステンレス回しなど多用され続けた。

しかし平成8年頃を過ぎると公共投資予算も底に打ち、その後公共投資額は減少、デフ
レ経済に突入、金融機関の不良債権処理などが本格かして、多くのゼネコンやサブコンが破綻していった。
こうした時代背景にマンションもローコストマンションの台頭により、コスト意識が強くなり、装飾金物類は次第に使用されなくなった。マンションで見る限り今日では、装飾金物はエントランス部分に少しだけという有様、金物は手摺や物干しなどに使用されるが建物自体がシンプルになっている。集合住宅などでは新たに集合郵便受けや宅配ボックスなど設けられるようになったが、平成14年頃から不動産ミニバブルが始まったものの、装飾金物の使用は限られたものであった。仕入商品群にしても建築価格が抑え続けられた影響を価格面で大きく受けた。そしてサブプライムローン問題からリーマンショックに至るまで材料高・単価安状態が続き、今日では現場まで少なくなりジリ状態に陥っているのが建築金物業界である。
こうしたなか

① 新栄製作所は、長崎における建造中の客船火災事故の後遺症もあり、大幅リストラ
して対応しているが、今後工場も閉鎖して受注と現場管理業に徹する方針を打ち出している。 
仕事がある場合は工場を持つ強みが発揮されるが、仕事が減れば固定費がかかり経営を圧迫する。外注先はこれまでにも多く利用しており、生き残りを掛け正解であろう。

② 九州洋行は周知のとおり、景気の荒波に揉まれ、後継者問題も抱えていたため、オーナーが岡山の全備(売上高約50億円)に売却、会社としての生き残りをはかった。
同社は工場を持たず、仕入商品を主体に、装飾加工金物は外注している。

③ 樫山ハードウェアーは、健全な大手ゼネコンにシフトして生き残りを掛けているが、
大手ゼネコンの仕事量が減っており、工場を有しているだけに、影響は大きいが、これまでにも何回も大きな波をクリアーしており、経営力で乗り切るものと思われる。
そのほか福岡の建築金物業者は、楢崎製作所・鐘川製作所・寿美アート工業など多く存在するが、建築金物を仕入販売する会社から工場を持ち装飾金物を作る会社まで幅が広い。
建物が建つ以上建築金物業界はなくならないが、特に装飾金物はそのニーズが限りなく少なくなっているのが現状である。

また店舗用は、店舗内装業界に属する装飾金物業界が手掛けており、JR新博多駅のような大きな複合施設ができない限り、両装飾金物業界は厳しい局面が続く。
内装業界や装飾金物業界にとって久々の大型工事で待ちどうしいJR九州新博多駅の内装工事であり、うきは市にはイズミの「ゆめタウン」も建設される。


余談
 ① 上村建設のハッピーハウスのように、元々百姓さんが施主であり、施主受けするようエントランス部分をキラキラにするゼネコンもいる。
 ② 岡山の全備はまだ九州で買収計画を持ち、後継者問題などある建築金物業者は、一報あれ。
③ 老健施設など民間の建物より、公共団体の建物がお金がかかるのは、日本ぐらいである。建物を安くシンプルにして、多くそうした建物をつくっていたら、特老などの入居待ち状態も少ないものとなっていたであろう。

 

[ 2009年10月14日 ]
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