アイコン 積水ハウス/今期310億円の赤字へ/ビジネスモデルが崩れる?

積水ハウスが変になっている。福岡でも最後まで分譲マンションを造り続けていたことから、当然の結果であろうが、積水の勢いでもリーマンショックを突き破ることはできない。

20年前はこれほどまで会社ではなかったが、バブル崩壊後の低金利時代に資産活用アパートを営業展開していたことから、時流に乗り大成功をもたらした。大東建託、レオパレスなどと同じ動きである。本業の戸建も分譲開発も織り交ぜながら、市場が消費税増税で落ち込み、デフレへ展開したもののその後の景気回復で①戸建②分譲マンション③資産活用アパートの3本柱がすべて旨く行った2008年1月期までだった。その結果、自己資本は7541億円(09/1月期連結、同率54.33%)を蓄え、優良企業に伸し上がった。 

しかし、サブプライムローン問題からリーマンショックに陥る中で、今日では社会の構造変化もおきている。同社がこれまで順調に業績を伸ばした戸建・分譲マンション・資産活用アパートは何れも市場では頭打ちから減に転じ、中でも分譲マンションは極端な落ち込みとなっている。2010年1月期の売上高は、前期より落ち込み、赤字に陥るという同社にとって異常事態を露にしている。

積水ハウスの中期業績計画数値

連結/百万円
2009/1月期
2010/1月期
2011/1月期
2012/1月期
2013/1月期
売上高
1,514,172
1,370,000
1,440,000
1,500,000
1,600,000
営業利益
73,960
-41,000
51,000
57,000
68,000
経常利益
77,072
-41,000
51,000
60,000
75,000
純利益
11,516
-31,500
27,000
34,000
42,000

 ① 戸建住宅・賃貸アパートを読む
同社では、工業化住宅請負事業としてセグメント表記しており、戸建用と賃貸アパート用の建物が入る。そのため09/1月期の売上高は、6828億円と45.09%に達している。
戸建は、不況によりパワービルダーが復活してきており、戸建市場に影響を与えている。デザインや機能など遜色ない住宅が登場しており、積水ハウスは差別化から中流層に的を絞るしかなくなっている。不況下で販売層が狭まるということは、中堅住宅メーカーや地場メーカーとの競争も厳しくなり、同社の市場を取り巻く環境は、決してよくない。
資産活用アパートは、資産持ちのオーナーであっても金融機関が、不動産事業への投資案件に対しては貸し渋っている。それとこれまでの資産活用アパートや投資用不動産が乱造され、市場が荒れ、今では採算利回りが効かない物件が続出している。低金利の状況は変わっていないことから、乱造されたこうした資産活用・投資用の物件市場は、調整されるまで長期間を要しよう。

② 分譲マンション事業
同社は分譲マンション事業を不動産販売事業として位置付けている。三大都市圏を中心に事業展開を行っているが、福岡市で見る限り、土地の高値取引等資本力に物を言わせた都心部での開発を行っており、それも不動産ミニバブルの最後まで作り続けていたことから、今はその収拾に追われている状況である。
また、都市再開発事業については、「東京ミッドタウン」をこなし「御殿山プロジェクト」及び「本町ガーデンシティプロジェクト」など開発しているが、不況が深刻化するなか、都市再開発事業が継続して行えるかはなはだ疑問である。ファンド等が借入金の関係から、安値処分して手放すことができない物権が山と存在する以上、こうした物件の処理が進み、再度景気回復の兆候が現れない限り限定されたものとなろう。
戸建住宅販売事業は、「まちづくり」を提案しており、団地開発を行っている。またデベロッパーの開発地を区分所有して、建築条件付きで販売している。団地開発も場所さえ間違わなかったら販売できるが、
不況下に開発するのは、冒険といえよう。これまでに開発した団地の販売が優先されるものである。
こうしたことから、不動産販売事業は、08年期に比し▲21.3%減の3,172億円を計上していた。

③ 不動産賃貸事業
同社は、2003年から同社が受注した賃貸アパートをオーナーから一括借り上げ、賃貸事業に参入している。借上期間は10年を基本に20年・30年を用意している。これまで建てた賃貸物件も取り込んでいることから、売上高を伸ばし続け、2009年期も前年比6.7%増加させ3,570億円を計上している。
しかし、当事業は先に爆弾を抱えている事業といえよう。建築利益は完成時に借上ることから、当該期に計上される。ところが、10年先・20年先には建物も老朽化し、入居者不足からの賃貸収入で賄えなくなる可能性がある。現に福岡の学生街の築後20年以上の1Rは暴落しており、2万円台からある。今回のミニバブルで建物が新しく乱立、入居者獲得競争から値崩れしており、新築さえ4万円そこそこの価格となっている。同社が得意とするアパートの場合は、都市近郊に多く、こうしたところも資産活用マンションが建ってきていることから、借り上げによる10年先・20年先の賃貸アパート経営は非常に厳しくなると見る。

④ その他事業
 同社は、住宅事業に徹しており、その他事業の主たる事業はリフォーム事業となっている。当然借り上げ賃貸アパートのリフォームを柱に、戸建などを対象に太陽光発電やリフォーム事業など行い、前期は1,569億円計上している。

以上が、積水ハウスの事業であるが、不況に左右されなく伸びているのは、一括借り上げの不動産賃貸事業だけである。しかし、伊藤忠系企業やエイブルなど多くの企業が、一括借上保証会社を設立しているが、10年先の契約更新期に、借上家賃と保証家賃とにギャップが生じ、保証家賃の減額ともなれば、ローン返済もあり、問題化する恐れもある。当事業もオーナーサイトに対して金融機関の融資が厳しく、これまでのような伸びは自社物件では期待できない。
 
<不動産賃貸事業の売上高推移>
連結/億円
売上高
前年比伸率
05/1月期
2,707
8.0%
06/1月期
2,926
8.1%
07/1月期
3,118
6.6%
08/1月期
3,362
7.8%
09/1月期
3,570
6.7%
 
住宅産業だけに、不況ともなると同社も影響を受ける。暫くは同社にとって我慢のときであろう。
 
[ 2010年1月21日 ]
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