アイコン 【進化する建設技術(27)】清水建設/「UE-Netライト」で建設地周辺の飛翔性生物を見える化

今回は建物と緑および昆虫・鳥などの関係についての内容。
清水建設は、都市域における生物多様性空間の拡大に資するため、建設地周辺における飛翔性生物の多様性を見える化する簡易評価システム「UE-Netライト」を開発・実用化した。
同社が港区で施工中の集合住宅「六本木一丁目南地区第一種市街地再開発事業」(27階建マンション)に本システムを初適用したところ、皇居などから当該建設地にシジュウカラをはじめとする飛翔性生物の飛来が予想されることが判明した。今後、東京都下の案件を中心に本システムを適用し、評価結果を緑化計画やビオトープ計画に反映していく。

自然が少なくなった東京のような大都市域においても、各所に存在する緑豊かな公園には生物多様性空間が広がっている。鳥や昆虫などの飛翔性生物の供給源となりうる緑地面積2,500㎡以上の公園は、公立の公園だけでも都内に優に1万ヶ所以上存在。供給源の緑が周辺の住宅地や商業地で分断されていても、50~200m程度の間隔で飛翔性生物が好む緑地やビオトープを作ることで、緑のネットワークが形成され、公園からの飛翔性生物の飛来を期待できる。
そこで同社は、これまで培った生物多様性に関する知見を集約し、建設地周辺における飛翔性生物の多様性を見える化できる「UE-Netライト」を開発。本システムの特徴は、生物の専門家でない営業や設計の担当者でも手軽に操作できる「簡易さ」で、所用期間はわずか2日間程度。
評価手順は、初めにシステムに入力した建設地周辺の航空写真あるいは衛星画像を解析して、飛翔性生物の供給源となりうる緑や水辺を抽出。次に、抽出した緑や水辺の面積に応じて、そこに生息が予想され、生物多様性の評価基準となる飛翔性生物種を指標生物として選定し、その生物種の移動距離や行動範囲を画像上に表記して、建設地に到達できる可能性を予測する。最後に、予測結果を踏まえて植栽計画やビオトープ計画を立案し、お客様へ提案する。評価に用いる指標生物は鳥類9種類、昆虫19種類。
本システムにより、建設地周辺の飛翔性生物の多様性が見える化されるので、発注者は予測結果を踏まえた緑地やビオトープが周辺地域の生物多様性空間の創出・拡大へどの程度貢献できるか、つまり生物多様性保全に関する費用対効果を定量的に把握できるようになる。この結果、CSRの一環として緑化・ビオトープ計画を充実させる企業が増加するものと期待される。

「UE-Netライト」の開発に当たっては、新宿御苑に近接する伊勢丹新宿店「アイ・ガーデン(新宿区新宿)」、清澄庭園等に近接する当社技術研究所「再生の杜ビオトープ」(江東区越中島)へ本システムを適用し、その有効性を検証。アイ・ガーデンでは、システムで飛来を予測した指標生物種を含めて鳥類16種、昆虫46種を、再生の杜ビオトープでは鳥類25種、トンボ類17種など300種を超える生物の飛来を確認している。
なお、点在する緑地の規模や位置関係を考慮した詳細な生物多様性評価や複数のビオトープ計画案の生物多様性への貢献度等を比較検証する場合には、既開発の都市域の生態系ネットワーク評価システム「UE-Net※3」を活用し、詳細なシミュレーションを行うとしている。
「六本木一丁目南地区第一種市街地再開発事業」
地上27階、地下2階 集合住宅
 建築面積   1,220m2、延床面積33,750m2
 地上緑化面積   980m2、屋上緑化面積144m2

進化する建築 

[ 2010年10月 8日 ]
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