アイコン 原油価格設定力はすでにサウジからアメリカに移行したのか

 

アメリカでは次のように論説されている。

1月に約6年ぶりの安値(43ドル・WTI)を付けた原油価格は、先週に入って1バレル=50ドル台まで回復。国際的な指標となるブレント原油価格(62ドル)は、1月中旬の安値から20%以上も値を戻した。
 確かに、1バレルの価格は、いまだに昨年半ばの半値水準に沈んでいる。それでも原油価格は底を打ったと判断できなくもない。

もしそうなら、エネルギー分野の重要な役割は、今やアメリカのものになったと言えそうだ。

世界の原油生産量は、相変わらず需要を上回っているとみられる。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが指摘するように、アメリカの石油備蓄量はこの84年間で最大に達し、現在も増え続けているようだ(これまでの3億バレル水準がこの間3割超増加している)。
にもかかわらず、市場には楽観ムードが漂う。
原油安を受けて石油メジャーは、投資の削減を発表しており、結果として生産量が減少するはずだからだ。

さらに重要なのは、アメリカで油田掘削装置の稼働数が急減している点かもしれない。米資源開発サービス企業ベーカー・ヒューズによれば、昨年10月以降、掘削機稼働数は約25%減少している。言い換えれば、アメリカの原油生産者は超安値への対応として、掘削の規模を縮小しているとみられる。
原油業界では、前代未聞の出来事。油田開発に巨額を投じた企業は大抵、投資資金を回収するために何年も採油を続ける。だから供給過剰に陥っても、なかなか生産量を減らせない。

サウジが犯した判断ミス
だが、昨今のアメリカのエネルギーブームの中心は、シェールオイルだ。シェール用油井は短期間で産出量が低減するため、産出レベルを維持するには、新たな油井を掘り続けなければならない。原油価格が急落したら掘削をすぐに停止すれば、市場に出回る量は減る。

「アメリカのシェール産業は、生産の開始と休止を、ほぼ即座に切り替えられる。原油市場にとって画期的な事態だ」と、ハーバード大学ケネディ行政大学院のエネルギー専門家、レオナルド・マウジェリは指摘している。
専門家の間には、アメリカが新たな「スイング・プロデューサー」になったとの声もある。
需給の変化に応じて生産を増減して市場の動向を決め、原油価格の急騰や急落を阻止する重要な役割で、従来はサウジアラビアがこれを担っていた。
 
とはいえ、サウジアラビアは、常にその役目を果たすわけではない。昨年、アメリカのシェールオイル生産増大に伴って原油価格が下落していたときも、生産を減らさなかった。下落が止まらなくなったのはそれからだ。

サウジアラビアとしては、原油安で北極海の油田開発などへの投資が鈍れば、将来的に価格は上がると判断したのだろう。
自国の生産減は、アメリカの生産増を意味すると考えた上での行動だった可能性もある。

だが、アメリカの掘削規模は逆に縮小している。今や調整役を担っているのはアメリカだ。
 あるいは「それに近い役目」と言うべきか。サウジアラビアと違い、アメリカに国営石油会社は存在しない。
国内にひしめく小規模採掘業者は市場の動きに反応するだけで、下落を見越して先手を打ったりはしない。
 
掘削装置(リグ)の稼働数は急減していても、実際に産出量が減るまでには時間がかかる。その一方で石油備蓄量は増え続け、おかげで原油価格がさらに下がる恐れがある。
 果たして希望の光は消えるのか、残るのか......。
 以上、NW

実際、12月末までにシェールガス・オイルのリグの停止が大幅になっていると発表されている。しかし、それにもかかわらず、生産量は1月23日の週が過去最大の週となっている。
シェールガス・オイルは、当たり外れが大きいとされ、多くが埋蔵量の少ない部分を掘っているのが現実とされている。そのため、効率の悪いリグを停止するのは、今に始まった話ではない。埋蔵量の多い地域で成功したリグからは大量に産出しているものと見られる。その結果が、1月に生産量が過去最大となった証だと考えられる。

 また、サウジは、市場を奪われることを最大の問題としており、アメリカのシェールガス・オイルだけならば、輸出も限定されており、また輸入もしており、いまさら問題にはしないだろう。
ところが、カナダのオイルサンド産オイルが、パイプラインをメキシコ湾岸まで敷設して、アメリカに輸出されようとしている。価格が高ければ、すでに始まっていたかもしれないが・・・。

そもそも原油価格が高くなったこと原因で、生産コスト高のシェールガス・オイルやオイルサンドの開発が急ピッチで行われるようになった。需給バランスで仕方ないのだろうが、OPECほか産油国が暴利を貪ってきた。しかしその間に、アメリカでシェールガス・オイル開発が急激に進行、今では景気が良いアメリカでは、これまでのガス・オイルの輸入大国であったものが、輸入が極端に減り、世界の需給バランスが大きく崩れる結果となっている。
また、リーマンショック前から、ロシアなどの北極海の原油も大量に生産されるようになっていた。だが、リーマンショックにより、米国の需要が減り、その代わりに中国が公共投資に経済を活発化させ、輸入を拡大させてきた。欧州は米国とタイムラグを発生させながら不況に突入し、今も抜け出せない状況が続いている。
アメリカはその後、シェールガス・オイル開発というエネルギー革命により景気が良くなった。オイルやガスは自給体制が確立されてきている。
元気だった中国もすでに息切れし、燃料の需要の伸びが大幅に減少している。その中国さえシェールガス・オイルの生産を活発化させている有様だ。

原油価格設定力は、今やアメリカだと上述されているが、シェールガス・オイル開発は群雄割拠した企業が一攫千金を夢見て参入しており、生産量を大幅に減少させることなどできないと思われる。今やシェールガス・オイルも生産コストが大幅に下がっている中、採算割れでこうしたアメリカの開発会社の大型倒産が相次ぐならば別だろうが・・・。

向こう5年間は、世界経済が急回復する素地は見えず、大きく値戻しすることはないと思われる。せいぜい75ドル(WTI)止まりだろう。

なお、オイルサンドの原油換算埋蔵量は2兆バレル(原油埋蔵量1.6兆バレル)とされている。オイルサンドは、分布が限られカナダとベネズエラに90%あるとされている。
追、世界各地に眠るシェールガス・オイルの埋蔵量は原油換算3.6兆バレルとされている。
いずれの数値も石油便覧よる。

原油

 

[ 2015年2月20日 ]
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