少子化が進むなか、自動車教習所を取り巻く市場環境が大きく変わっている。 警察庁の「令和7年版運転免許統計」によると、2025年末の指定自動車教習所は全国で1277校となり、前年の1288校から11校減少した。 2016年には1332校あったことから、この9年間で55校、率にして約4.1%減少したことになる。
一方、教習所を利用する人そのものが一様に減っているわけではない。 若者を中心とした普通免許の需要が長期的に縮小する一方、タクシーなどで必要となる第二種免許や、高齢者の免許更新に伴う講習の需要が増加しており、自動車教習所の役割そのものが変化しつつある。
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項目 |
2016年 |
2025年 |
増減 |
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指定自動車教習所 |
1332校 |
1277校 |
▲4.1% |
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卒業者総数 |
156万1361人 |
150万5044人 |
▲3.6% |
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普通免許卒業者 |
115万8327人 |
103万3525人 |
▲10.8% |
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普通二種卒業者 |
1万3308人 |
3万3182人 |
約2.5倍 |
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教習指導員 |
3万2167人 |
2万8715人 |
▲10.7% |
※警察庁「運転免許統計」から作成。指定教習所数は各年末現在。
普通免許の卒業者、10年で約12万5000人減
最も大きく減っているのが、教習所の中心的な収入源となってきた普通免許である。 指定教習所の普通免許卒業者は2016年の115万8327人から、2025年には103万3525人へ減少した。 約12万4800人、率にして10.8%の減少である。
2025年だけを見ると前年の102万1108人から増加しており、毎年一直線に減っているわけではない。 それでも長期的には、教習所数以上のペースで普通免許の卒業者が減少している。
総務省によると、2025年4月1日時点の15歳未満人口は1366万人と44年連続で減少した。 今後も免許取得年齢に達する若年人口の母数が縮小していくことは、教習所業界にとって大きな経営課題となる。
逆に急増する「普通二種」 10年で約2.5倍
普通免許とは対照的な動きを見せているのが、タクシーなど旅客運送に必要となる普通第二種免許である。 指定教習所の普通二種卒業者は2016年の1万3308人から2025年には3万3182人となり、約2.5倍に増えた。
特に2021年には1万182人まで落ち込んでいたが、2023年には2万2280人、2024年には3万3434人まで急増。 2025年も3万3182人と高い水準を維持している。
制度面でも変化があった。2022年5月から、一定の「受験資格特例教習」を修了した場合、第二種免許などの受験資格について、年齢を19歳以上、普通免許などの保有期間を1年以上とする特例が導入された。 ただし、普通二種卒業者の増加がこの制度改正だけによるものと断定できる統計資料はなく、両者の因果関係には留意が必要である。
高齢者講習は年間400万人を突破
もう一つ、教習所を取り巻く大きな市場となっているのが高齢運転者向けの講習である。 警察庁によると、2025年の高齢者講習受講者数は402万5601人となり、前年の387万3772人から約15万2000人、3.9%増加した。
75歳以上の高齢運転者については、免許更新時に認知機能検査が行われるほか、一定の違反歴がある場合には運転技能検査への合格が必要となる。 運転技能検査については、自動車教習所などが実施する公安委員会認定の検査を受けることもできる。
かつて自動車教習所といえば「若者が免許を取得する場所」という性格が強かったが、高齢化によって、免許取得後も運転能力を確認・教育する施設としての役割が拡大している。
生徒だけではない 教える側も減少
教習所にとって、もう一つの問題が教習指導員の減少である。 全国の教習指導員は2016年の3万2167人から2025年には2万8715人となり、3452人、10.7%減少した。 教習所数の減少率4.1%を大きく上回る。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)と全日本指定自動車教習所協会連合会がまとめた資料では、教習指導員の約3割が60歳以上とされている。 若手指導員の確保に加え、高齢の指導員が引き続き働ける職場づくりが業界課題として浮上している。
「縮小産業」だけでは語れない自動車教習所
若年人口の減少を考えれば、普通免許を中心とする従来型の教習市場には今後も縮小圧力がかかる可能性が高い。 教習所の統廃合や事業者間の競争も続くとみられる。
しかし、その一方では高齢者講習が年間400万人を超え、普通二種など職業運転者向けの教習需要も増えている。 自動車教習所業界で起きているのは、単なる市場縮小ではなく、「若者の免許取得」から「職業運転者の育成、高齢者を含めた生涯の運転教育」へと需要構造が変化する局面とみることができそうだ。
さらに、普通免許では2025年4月からMT免許の技能試験や技能教習について原則AT車を使用する新方式が始まり、中型・準中型などにも対象が拡大している。 人口構造の変化に加え、免許制度そのものの変化への対応も教習所経営を左右することになりそうだ。