アイコン 建ち続ける賃貸住宅、過去最大の空き家の増加と空き家率、進む少子化、世帯数も就業者数も減少の一途

総務省が7月29日に発表した「平成25年住宅・土地統計調査(速報)」によると、日本国内の総住宅数は6,063万戸と5年前の調査に比べ305万戸(率で5.3%)増加した。
2010年の国勢調査によると日本の総世帯数は、5,184万世帯、住宅数が879万戸多くなっている。
結果、空き家数(別荘など差し引き)は820万戸と5年前に比べ63万戸(8.3%)増加し、空き家率(空家/総住宅数)は13.5%と、5年前に比し0.4%増加し過去最高となっている。

過去最高を更新した空き家率は、人口減少が進む日本が直面する構造問題の一つといえる。ただ、足元をみると、さらに空き家数の増加を助長しかねない事態も進んでいる。

来年(2017年)1月の相続税課税強化を前に、個人の節税対策としてアパートなど賃貸物件の建設が急増している。

平成20年の調査では、今後とも少子高齢化が進み、人口減少社会が現実のものとなりつつある中、総住宅数が総世帯数を上回り、空き家の増加が続いている。
空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は、昭和38年以降でみると、一貫して上昇を続け、平成10年(1998年)に初めて1割を超え、11.5%(576万戸)となり、平成20年には13.1%(757万戸)と増加の一途を辿っている。その空き家の内訳は、流通が見込まれる賃貸や売却用の住宅が59.1%(448万戸)で、全体の約60%を占めている。
今後、地方だけでなく都市部でも供給過剰が進み、入居者が集まらないことが懸念される。いくら低金利であっても投資回収期間はフル稼働で10年~20年、耐用年数は20年~35年程度、フル稼働的なければ、投資回収期間はさらに長引くものとなる。それも低金利が続くという前提である。
 
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 ■広がる相続税の課税範囲
  平成25年度の新設住宅着工戸数は、前年度比10.6%増の約98万7千戸で、うち賃貸物件は15.3%増の約37万戸。持ち家などは消費税増税の駆け込み需要の反動による減少でマイナスが続くが、賃貸物件は5月まで15ヶ月連続のプラス。当面この基調が続くとみられる。
 背景にあるのは、相続税の節税対策。来年1月から基礎控除額が4割、引き下げられて課税範囲が広がる。
相続税の対象となるのは、現在の死亡対象者数約5万人(年間)から1.5~2倍に増えるとみられている。ただ、遺産が土地に建てられた賃貸住宅だと、入居者の借地権などが資産評価から差し引かれ、相続税の評価額が大きく下がる。
賃貸物件の建設が都市部を中心に急増しているのはこのためだが、政府による課税強化だけではなく景気対策の一面も見え隠れする。
資産活用住宅業者は、相続税対策セミナーを相次いで開催。金融機関が賃貸物件の経営を資産運用の一環として顧客に勧めることも多く、積水ハウスでは、紹介された顧客が2~6月で前年同期比10%増となった。みずほ総合研究所の推計では節税対策で、年間に約1千人が15室程度の平均的な賃貸物件を着工、年間で約1万5千戸の押し上げ効果がある。

 ■金融機関に影響
 だが、人口減少もあって需要は減少傾向であることだけは間違いない。昨年の25年度の賃貸物件の新設着工戸数実績は約37万戸だが、みずほ総研の試算では潜在的な需要は約30万戸、26年度で約29万戸、27年度で28万戸にすぎない。
 空室率は、過疎化の進む地方だけでなく、都心でも新築物件の供給過多で増える傾向にある。入居者が集まらなければ建設資金を融資した金融機関の経営も揺らぎかねない。
 
日本賃貸住宅管理協会の担当者は「賃貸経営は立地条件を吟味するだけでなく、外国人や高齢者も積極的に受け入れるなどの工夫が必要」と節税対策のみに的を絞った賃貸物件の急増に警鐘を鳴らしている。
参照:報道記事、総務省、国交省
 
<資料1、人口減少>
日本の今後の人口推移 
   
2010
2020
2030
2040
10/40
全国
128,057
124,100
116,618
107,276
-16.2%
 
 
 
 
 
 
北海道
5,506
5,178
4,719
4,190
-23.9%
 
 
 
 
 
 
青森県
1,373
1,236
1,085
932
-32.1%
岩手県
1,330
1,206
1,072
938
-29.5%
宮城県
2,348
2,269
2,141
1,973
-16.0%
秋田県
1,086
959
827
700
-35.6%
山形県
1,169
1,062
949
836
-28.5%
福島県
2,029
1,874
1,684
1,485
-26.8%
東北地方
9,335
8,606
7,758
6,864
-26.5%
茨城県
2,970
2,853
2,661
2,423
-18.4%
栃木県
2,008
1,926
1,800
1,643
-18.1%
群馬県
2,008
1,920
1,787
1,630
-18.8%
埼玉県
7,195
7,133
6,796
6,305
-12.4%
千葉県
6,216
6,122
5,806
5,358
-13.8%
東京都
13,159
13,315
12,957
12,308
-6.5%
神奈川県
9,048
9,122
8,833
8,343
-7.8%
関東地方
42,604
42,391
40,640
38,010
-10.8%
新潟県
2,374
2,210
2,009
1,791
-24.6%
富山県
1,093
1,028
940
841
-23.0%
石川県
1,170
1,128
1,060
974
-16.7%
福井県
806
760
700
633
-21.5%
山梨県
863
809
741
666
-22.8%
長野県
2,152
2,019
1,851
1,668
-22.5%
信州北陸
8,458
7,954
7,301
6,573
-22.3%
岐阜県
2,081
1,978
1,830
1,660
-20.2%
静岡県
3,765
3,601
3,343
3,035
-19.4%
愛知県
7,411
7,440
7,213
6,856
-7.5%
三重県
1,855
1,773
1,649
1,508
-18.7%
東海地方
15,112
14,792
14,035
13,059
-13.6%
滋賀県
1,411
1,414
1,375
1,309
-7.2%
京都府
2,636
2,567
2,418
2,224
-15.6%
大阪府
8,865
8,649
8,118
7,454
-15.9%
兵庫県
5,588
5,422
5,088
4,674
-16.4%
奈良県
1,401
1,330
1,223
1,096
-21.7%
和歌山県
1,002
917
820
719
-28.2%
関西圏
20,903
20,299
19,042
17,476
-16.4%
鳥取県
589
544
494
441
-25.1%
島根県
717
655
588
521
-27.4%
岡山県
1,945
1,868
1,749
1,611
-17.2%
広島県
2,861
2,767
2,599
2,391
-16.4%
山口県
1,451
1,340
1,208
1,070
-26.3%
中国地方
7,563
7,174
6,638
6,034
-20.3% 
徳島県
785
723
649
571
-27.3%
香川県
996
937
860
773
-22.4%
愛媛県
1,431
1,329
1,206
1,075
-24.9%
高知県
764
693
616
537
-29.8%
四国地方
3,976
3,682
3,331
2,956
-25.7%
福岡県
5,072
4,968
4,718
4,379
-13.7%
佐賀県
850
803
745
680
-20.0%
長崎県
1,427
1,313
1,185
1,049
-26.5%
熊本県
1,817
1,725
1,603
1,467
-19.3%
大分県
1,197
1,134
1,050
955
-20.2%
宮崎県
1,135
1,073
991
901
-20.7%
鹿児島県
1,706
1,588
1,454
1,314
-23.0%
九州7県
13,204
12,604
11,746
10,745
-18.6%
沖縄県
1,393
1,417
1,405
1,369
-1.7%
・原簿:国立社会保障・人口問題研究所2014年版
・人口減少、高齢化率の上昇、働き世代の減少
・人口減少に対する日本政府の無能無政策が日本没落を招く
 
<資料2、年別 賃貸住宅着工戸数と就業者数の推移>
賃貸住宅着工戸数と就業者数推移
 
着工戸数
前年比
就業者数
総住宅着工戸数
1991
583,924
-27.6
6,369
1,370,126
1992
671,989
15.1
6,436
1,402,590
1993
663,608
-1.2
6,450
1,485,684
1994
595,812
-10.2
6,454
1,570,252
1995
553,946
-7.0
6,457
1,470,330
1996
622,719
12.4
6,486
1,643,266
1997
531,220
-14.7
6,557
1,387,014
1998
457,003
-14.0
6,514
1,198,295
1999
424,250
-7.2
6,462
1,214,601
2000
421,332
-0.7
6,446
1,229,843
2001
438,312
4.0
6,412
1,173,858
2002
450,092
2.7
6,331
1,151,016
2003
451,629
0.3
6,317
1,160,083
2004
464,976
3.0
6,329
1,189,049
2005
504,294
8.5
6,357
1,236,175
2006
543,463
7.8
6,390
1,290,391
2007
441,733
-18.7
6,428
1,060,741
2008
464,851
5.2
6,410
1,093,519
2009
321,470
-30.8
6,315
788,410
2010
298,014
-7.3
6,298
813,126
2011
285,832
-4.1
6,289
834,117
2012
318,521
11.4
6,270
882,797
2013
356,263
11.8
6,311
980,025
 
 
 
6,335
 
・就業者数はIMF2014年4月版、単位:万人
 
 

[ 2014年8月16日 ]
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