アイコン 改訂版:有明海・八代海の赤潮 養殖魚被害拡大へ

鹿児島県は2日赤潮警報を発令。県水産振興課などによると、8日までに死んだのはブリ2万匹だったが、7月15日までにはブリ、カンパチ計38万9000匹の被害が確認された。八代海の出水郡長島町を中心に被害が拡大している。
熊本県は2010年7月13日、八代海で発生しているプランクトン「シャットネラ・アンティーカ」による赤潮のため、天草市で41万4,000匹の養殖ブリやシマアジ、ヒラメなどが死に、被害金額は6億2400万円に上ると発表した。赤潮被害は3年連続。県水産研究センターによると、長洲町沖の有明海では、別種のプランクトン「コクロディニウム」による赤潮も発生している。漁業被害の拡大が心配されている。
長崎県では、2010年7月13日までに、有明海の広い範囲で発生している赤潮の影響で、南島原市口之津町の口之津港で養殖しているハマチが大量に死んだ。被害に遭ったのは同町の二つの養殖業者で、計約1600匹が死んだ。

赤潮は、植物性プランクトン「シャットネラ・アンティーカ」などの大量発生が原因。長崎県では7月3日に発生が確認されていた。県総合水産試験場によると、海水1ミリリットル中に10細胞を超えると魚介類を死滅させる可能性がある。口之津港では、9日に海水1ミリリットル中に14細胞だったシャットネラ・アンティーカの数が、10日には531細胞と急増。養殖業者によると、被害は9日から出始めたという。
 赤潮は、2009年も発生。南島原、雲仙両市などで養殖ハマチなど約24万匹が死に、被害総額は約4億2,600万円に上った。

赤潮プランクトン

<赤潮プランクトン「シャットネラ・アンティーカ」>
 シャットネラ・アンティーカ(以下、シャットネラ)は、海水中に生息する植物プランクトンで、古くは海産ミドリムシとかホルネリアとか呼ばれていた。 このプランクトンは、長さ約120μm(1μmは1mmの千分の1の長さ)の紡錘型(写真)で、光合成によって海の栄養素を吸収し、通常は1日1回の分裂をすることで増殖する。シャットネラは毎年出現しているが、条件が揃えば赤潮(プランクトンによって海水が着色する状態)まで増殖し、海水1ml当たり数百個になるとハマチは、呼吸困難に陥り死亡する。
 
<シャットネラ赤潮の発生した理由>

 シャットネラ赤潮は、過去の発生事例とこれまでの調査結果等から、
1、増殖するために必要な窒素、燐といった栄養素が海水中に十分含まれている。
2、栄養素を競合する他の植物プランクトンが少ない。
3、穏やかな晴天が続く。
 という条件が揃うと発生する危険性が高いことがわかっている。
 シャットネラが増加した時の環境条件は、「降雨が多く、栄養素は陸から十分に供給されていた。シャットネラ以外の植物プランクトンは少なく、また海も大きく荒れることはなかった」となる。
 日照時間は少なかったものの、他の植物プランクトンがほとんどいなかったため、シャットネラだけが表層で徐々に増加し、赤潮を形成してしまったと考えられる。

<被害が発生する理由>
 シャトネラが赤潮を形成しても分布が表層だけの場合、魚は赤潮の層の下で生きていられるが、中層まで数百細胞になると水深の浅い漁場で被害が出る可能性が高くなり、底層まで1ml当たり数百個になってしてしまうと養殖ハマチは逃げる場所を失い全滅してしまう。
表層で赤潮になった直後、気温の低下によって海水が混合し(冷やされた表層の海水が沈み、下の暖かい海水が表層に上がるために海水が混ざり合う)、表層で増殖していたプランクトンが中層まで拡散してしまった。その後、2週間くらいかけて増殖、 20m層で100細胞を越えたため、水深の浅い場所(水深20~25m)にある養殖場では、魚の逃げ場所がなくなり被害が発生する。

<今後の注意> 
今回の豪雨により陸域から栄養塩が供給されていることが考えられ、天気が回復して、高温・日照時間の増加などにより細胞数が急激に増加する可能性があり、これまでに出現した海域付近の養殖場では特に十分な注意が必要。

 

[ 2010年7月20日 ]
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