【解説】㈱荒井製作所はダイキンに潰されたのか
(株)荒井製作所(大阪府堺市中区伏尾722、設立1968年6月、資本金9,900万円、代表:荒井孝一、従業員325名)は7月28日、大阪地裁に民事再生法の適用を申請し、同日保全命令を受けた。
同社の破綻を追ってみた。同社は、1968年6月法人化、個人創業時代から80年の業歴を経過している空調機メーカー。1955年には既にダイキン工業との取引を開始、資本関係は無いものの同社の有力下請企業として知られ、本社工場、深井工場、和歌山工場を構えるほか、中国に生産子会社6社を有するまでに成長した。
空調機器向け熱交換器(60%)を主力に、その他配管部品や板金部品、送風機、ドレンポンプや低温ユニットほかの組立完成品など(40%)を製造。関連会社を含めてプレスから板金、塗装、組立までを一貫して手がける体制を構築、2009年3月期には年売上高約274億円を計上していた。今でもダイキン工業に対する売上高は7割に達する。
ところが、08年9月のリーマンショックによる急激な経済変動で受注環境が一変、中国進出を含めた設備投資で膨らんだ約60億円の有利子負債が重荷になった。
このため、昨年9月には金融債務の返済について短期間の猶予を要請するとともに、社内で製造原価管理などの経費削減に努め、ダイキン工業から支援を得るなど抜本的な再建計画の策定を進めてきた。ただ、拡大路線を採り積極的に設備投資を実施していた結果、採算性は低く財務体質の強化が進まない状態となり、有利子負債当の資金が固定化していた。
09年3月期は過去最高の274億円の売上高を記録したものの、輸出入経費の増加により、最終的には2億7,328万円の赤字を露呈、債務超過寸前となっていた。
このため、09年7月にはダイキン工業から役員として招き入れ、人員削減や子会社の統合など行う経営再建に着手した。
今年4月には金融機関からの再度の支援が決定するなど、事業環境は一時的に持ち直したものの、2010年3月期はリストラ負債も加わり大幅な赤字を計上したため債務超過に転落。ここに来て、自力での再建は見込めないことから、今回の措置となった。
破綻原因は、中国において6社も合弁ながら作るなど、過度な設備投資により、資金が固定化するとともに、リーマンショックで過去最高から一挙に受注不足に見舞われたことにある。
取引金融機関も2度にわたり支援、ダイキン工業も再建支援に乗り出していた。ところが、設備投資による減価償却費やリストラによる財務負担、受注不振などが重なり前期債務超過を露呈、代表者の経営失敗により破綻したものである。
ところで銀行は別として、ダイキン工業のスタンスはどうであったろうか。長年下請けとしてダイキン工業を支えてきた同社であったが、殆ど御用済みなのか。
同社売上高の70%を占めるダイキンの焦付きがあまりに少ないことに驚かされる。当然金融支援や材料供給支援などあっていたと思ったが、金融支援は0、材料供給支援は相殺契約で納品していた。単なる下請先の1社の存在でしかなかったようだ。
ダイキン工業が人も派遣して救済していると協力会社から思われていた同社は、いとも簡単にダイキンから捨てられたようである。
ダイキンは、せめて民事再生法で多くの犠牲が払われ健全化される予定の同社のスポンサーに名乗りを上げるかと思えば、後ろめたいのか名乗りを上げない。今後の動き次第では同社への発注も大きく減少していくものと思われる。
ダイキン工業の負債額が、ナンと少ないことか、
ダイキングループの債権者 | 相殺あり債権 | 一般債権 |
ダイキン工業(株) | 859,378 | |
ダイキン工業(株) | 22,411 | |
(株)ダイキンサンライズ摂津 | 14,860 | |
(株)ダイキンサンライズ摂津 | 1,152 | |
ダイキントレーディング(株) | 34,987 | |
㈱ダイキンアプライドシステムズ | 2,476 | |
ダイキン福祉サービス(株) | 1,399 | |
863,006 | 73,657 | |
936,663 |
こうした破綻のさせ方は、大手会社が使うよくある手口。支援を名目に役員を送り込み、その派遣された役員は、財務内容を調べ上げ、ダメと見たら、自社の債権を最小化する動きをする。最小化された段階で支援を打ち切り破綻させる。その役目を果たしたのはダイキンから派遣された松本専務であると思われるが、今も専務として在籍している。しかし60歳過ぎたダイキン工業OBであり、今後のダイキンとの取引の監視役としてまだ在籍しているものと思われる。
2日の債権者集会で担当弁護士は次の通り述べている。
長年にわたり主要取引先との取引において、細かな原価計算を行なわず、生産台数が低下すると原価割れをしてしまう体質が続いており、その状態が続いても単価の見直しなどは行なっていなかった。2009年9月以降の世界的経済不況の影響により主力得意先からの新機種導入が減少したことで売り上げが大幅に落ち込み、資金繰りが悪化。その後は再生計画を策定し、主要取引先の協力を得て計画を進めていたが、2010年3月期が赤字決算だったことにより事業環境は厳しくなった。7月末には取引先より一部売掛金の集合債権譲渡担保を実行される事態となったことから7月末の手形決済が困難となり、民事再生法の申請となった。今後の再建方法として、事業領域の絞込み、生産体制の見直し、中国工場への製品製造移管などを骨子とした収益性の確保と主要取引先などの支援による再建を図る。
①主力取引先の売掛金が他の債権者の担保になっている・・・住軽商事の債権10億55百万円の担保
②伏見工場を残し、あとの工場は売却する予定・・・深井工場、和歌山工場売却方針
③一部取引先とは具体的な話が出ているが確定している話はない。金融機関からはまだ同意を得ていない。再生計画を策定してからとなる。・・・ダイキンは発注で当初協力しようが逃げた。
④現在の役員を変更する予定はない。・・・責任を明確にする必要がある。
⑤子会社は利益を上げており、民事再生法の適用範囲内ではない。配当などで利益を還元していく予定。・・・売却が妥当。
としている。(・・・のコメントは筆者)
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