アイコン 進化する建設技術シリーズ(21) 清水建設「Tプレート工法」による耐震補強

清水建設は、矩形トンネルの側壁などを効率的かつ経済的に耐震補強できる「Tプレート工法」を開発、その優れた耐震性と施工性を実証した。施工性の実証試験は、コンクリート構造物の補修・補強の専門会社である(株)ケミカル工事と共同で実施、ボックスカルバートを模擬した壁を作成して一連の施工方法と手順を確認した。

道路・地下鉄などの開削トンネルやアンダーパス、発電所の取放水路、上下水道などの多くは、断面が口の字型をしたボックスカルバートと呼ぶ鉄筋コンクリート製の構造物で構築されている。阪神大震災では、ボックスカルバートを含むコンクリート構造物の崩壊(せん断破壊)が多く報告されたことから、新基準ではせん断破壊を防止するために部材厚の割増、あるいはせん断補強鉄筋の配置などが求められるようになった。
一方、旧基準で設計され、せん断補強鉄筋が配置されていないボックスカルバートについては、側壁にせん断補強鉄筋を挿入し樹脂を注入することで耐震補強を行っている。ただ、鉄筋の挿入本数が膨大(20~30cm間隔のグリッド状に挿入)で、側壁への鉄筋挿入孔の穿孔や穿孔後の側壁表面の補修に多大な手間を要することから実施事例が少なく、効率的で経済的な工法の開発が求められている。
Tプレート工法は、せん断補強部材として、Tプレートと呼ぶ厚さ6~9mmのT字型鋼を使用する耐震補強工法。特徴は、側壁全体にせん断補強鉄筋を挿入していた従来の耐震補強工法と異なり、補強箇所を集約したうえで、従来工法と同等の耐震性と優れた施工性を確保していること。補強箇所は、側壁に2~3m間隔で設ける縦方向の溝の部分だけで、ウォールソーで切削した幅20~30mmの溝にTプレートを挿入してアンカーで固定するとともに樹脂で接着することで、側壁のせん断耐力を増強する。
側壁に溝を切削する際に、側壁の横筋を切断してしまうので、切削後の施工手順は、まず、溝を中心に幅500mm程度にわたってコンクリートを撤去して横筋を露出させる。次に、Tプレートのウェブ部分(挿入部分)に設ける孔に新たな鉄筋(添筋)を通して切断した横筋と溶接して復旧させる。その上で、Tプレートをアンカーで固定、撤去したコンクリート部分に補修モルタルを注入。最後に、Tプレートを接着する樹脂を注入すると、一連の耐震補強作業が終了する。
本工法は、従来工法に比べて、補強箇所が少なく施工性が優れていること、鋼材使用量が少なくて済むことなどから、工期・工費を3割程度削減できる。
厚さ600mm、高さ5m、延長100mの側壁を補強した場合のコスト試算では、工期・工費ともに4割程度削減できるという結果も出ている。すでに当社は、ボックスカルバートを有する道路管理者や電力会社などの事業者に対して、本工法に関するプレゼンテーションを展開しており、高い評価を得ているとしている。
以 上

≪参 考≫
1. Tプレート工法の具体的な施工手順
(1)ウォールソー等によって配力筋を切断してコンクリート側壁に幅20mm程度の溝を切削する。溝の深さは背面側の鉄筋の手前までとする。
(2)溝を中心として幅500mm程度のかぶりコンクリートをウォータージェット等によって撤去し、配力筋を露出させる。
(3)配力筋の位置に合わせてTプレートのウェブに穴を開ける。
(4)厚さ6~9mmのTプレートを溝に挿入してアンカーボルトで固定する。
(5)ウェブの穴に通した鉄筋を配力筋にフレア溶接して復旧する。
(6)コンクリートを除去した箇所を補修モルタルで断面修復する。
(7)溝とプレートの隙間に樹脂を注入して鋼板を接着する。
(8)注入管やエア抜き管を撤去して仕上げる。

≪添付資料≫

■施工手順
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■コスト比較(試算)
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※厚さ600mm、高さ5m、延長100mの側壁を補強した場合のコスト試算結。
(鉄筋挿入は在来工法を意味する)

■載荷試験結果
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■在来工法とTプレート工法の比較
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多数の鉄筋を挿入する在来工法(左図)では作業範囲が広範にわたるが、
Tプレート工法(右図)では緑色で示したTプレートの挿入部分だけが作業範囲となる。

■Tプレート廻りの拡大図
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不明な場合は、お問い合わせくださいとのこと。本社:電話03-5441-1111

 

 

[ 2010年9月 7日 ]
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