アイコン 矢野研/ビル管理市場に関する調査結果発表

調査概要等は次の通り

1.ビル管理市場の現況:2009 年度のビル管理市場規模は、前年度比97.2%の2 兆9,184 億円となった。近年、同市場は鈍化傾向が強まりつつも、建築物ストックの増加とともに成長を続けてきた。しかし、2008 年秋に発生したリーマンショックのインパクトは、同市場にとっても非常に大きく結果としてマイナス成長へと転じる事態に至った。
2009 年度は、同業界が建設産業などと同じく景気動向が遅行する産業であるため、市場環境がさらに悪化することとなった。ビルオーナーにおける経費削減傾向は強まり、契約価格の減額要請や、喫緊の課題以外のリニューアル工事などは延期もしくは中止するケースが多発した。このような市場環境を受け、2008 年度には減収ながらも経営努力により増益を達成していた有力企業を含め、2009 年度は大半の事業者が減収減益となった。 

2.ビル管理市場の注目動向:市場環境のさらなる悪化を背景に、発注者の決定方法において入札方式を採用するビルオーナーが増加している。これを受けて、さらなる価格競争力をつける必要性が高まっており、有力企業では科学的アプローチによる業務改善などの取組みをはじめとして、コスト構造の見直しに注力中である。
この他、2008 年度より本格的な取組みが始まった環境・省エネ対応についてもさらに取組みが拡大している。2009 年度に目立った環境・省エネ対応への取組みは、改正省エネ法を受けて、全国に点在する複数物件のエネルギー量などを集中管理できるシステムの提供であった。このような管理システムの提供を本格化させている有力企業は複数あった。
さらに、ビル管理市場は従来の事業領域についてはこれ以上の大きな成長が困難と捉え、第四の事業を確立させようと注力している有力企業も少なくない。最も多いのは近年有力企業各社が注力しているリニューアル事業であるが、その他にも周辺領域への展開が随所で見られるようになっている。

3.ビル管理市場の将来見通し:2010 年度の市場規模は、前年度比95.1%の2 兆7,746 億円と予測した。2009 年度は、2008 年度に引き続いてリーマンショックに端を発した不景気の影響を受けたが、2010 年度に入っても、総じて同様の傾向が続いている。2010 年に入り少し需要が回復基調にあるとしている有力企業も一部でみられたが、大半の企業では、これ以上の後退はないものの底這いのような傾向で推移するとみている。(回復基調に入る時期については不透明とする企業が多い。)このことは、ビル管理業者227 社の短期需要見通しアンケート調査結果では、47.1%が横這傾向、33.5%がやや減少もしくは減少傾向と回答していることからも充分うかがえる。翻って、建築物ストックの総量は大きな伸びは見せないものの、大きな縮小もない。しかしながら、管理コスト(契約価格・単価)について、それ程大きくはないが、さらなる低価格化が進行している。ただ1990年代のように同スペックでの低価格を要請ではなく、ある程度のスペックダウンを了承した上での低価格化要請となっており、ビルオーナーでもこれ以上単価を下げることは困難という認識が拡がっている。
以上のような背景の下、2010 年度の市場規模は、2009 年度をやや下回る傾向で推移する可能性が高いと考える。

概要
① 2009年度のビル管理市場規模は2兆9,184億円、前年度比97.2%
2009年度のビル管理市場規模は、前年度比97.2%の2兆9,184億円となっ
た。2008年度に引き続き、2009年度も経済不況の影響を受ける結果となった。
② 有力企業における現在の注力事項は価格競争力のアップなど
市場のパイが減退する中、発注先の決定過程において入札方式が増加、定着する傾向が
強まり、参入プレイヤーにおいては従来以上に価格競争力をつける必要性が高まっている。
③ 2010年度の市場規模予測は2兆7,746億円、前年度比95.1%
2010年度のビル管理市場規模は、前年度比95.1%の2兆7,746億円と予測
する。2010年度の市場環境は、2009年度からさらに悪化することはないが、総じて回復傾向には遠く、下半期はやや回復基調がみられるものの、概ね底這傾向で推移する見通しである。

なお、調査対象はビル管理業者(清掃、設備管理、警備業務等を主たる業務内容とする業者)
 

[ 2010年11月 4日 ]
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