アイコン 「次世代有機EL実用化開発センター」安達千波矢センター長(九大教授)で建設整備へ

九州大学は、高い発光効率の次世代有機ELの特許を有しているが、有機ELの材料にレアメタルのイリジウムなどを使わず、高効率で電気から光エネルギーを 生み出すことに成功している安達千波矢教授がセンター長となり、「有機光エレクトロニクス実用化開発センター」を整備する。
当センターを整備するのは、福岡県の外郭団体「県産業・科学技術振興財団」。九州大学(福岡市西区元岡)近くの県有地に、2階建、延床面積約1800平方メートルの研究開発棟を建設する。
当センターは、クリーンルームや試作室、耐久性・性能評価室などを備え、安達教授をはじめ研究者など14人体制で実用化研究を行い、関連産業の育成や集積をはかる。

有機ELは、液晶に比べ、省電力・高精細のディスプレイとして既にスマホなどに用いられ、フィルム型なども開発されている。しかし、レアメタルを使用しており、産地である中国により輸出は制御され、価格も暴騰している。そのため、次世代有機ELの素材として、レアメタルを使用しない開発が各研究所で進められている。

その中でも、九州大学が開発した次世代有機ELは、高効率で電気から光エネルギーを生み出すことに成功しており、業界からも注目されている。

<有機光エレクトロニクス実用化開発センター概要>
センター長:安達千波矢九大教授
所 在 :福岡市西区元岡
着 工 :平成24年6月23日
竣 工 :平成25年1月
敷地面積:約3600平方メートル
建物面積:延床面積約1600平方メートル(2階建)
研究始動:平成25年春
総事業費:8億9,500万円(国・福岡県が補助金拠出)
事業主 :「県産業・科学技術振興財団」

有機エレクトロルミネッセンス(有機EL:Organic Electro-Luminescence)とは、
発光を伴う物理現象であり、その現象を利用した有機発光ダイオード(Organic light-emitting diode:OLED)や発光ポリマー(Light Emitting Polymer:LEP)とも呼ばれる製品全般も指す。
これらの発光素子は、発光層が有機化合物から成る発光ダイオード(LED)を構成しており、有機化合物中に注入された電子と正孔の再結合によって生じた励起子(エキシトン)によって発光する。
日本では「有機EL」と呼ばれることが多い。次世代ディスプレイのほか、LED照明と同様に次世代照明技術としても期待されている。

<有機ELの現状>
開発していた電気・電子製品メーカーが、液晶分野などで韓国勢に敗退、開発資金もままならなくなり、米欧日の各企業が技術開発投資意欲を失った。有機ELディスプレイの製品化から順次撤退していく中で、利用権の譲渡が行われていった。

<韓国LG>
「コダックの技術および知的財産の利用権」は2010年にLGグループへ利用権が譲渡された。
2009年6月、LGは出光興産との戦略的提携で、出光から高性能有機EL材料の提供とデバイス構成の提案を受け入れられるようになった。

<韓国サムスン>
「ダウケミカルの有機材料や、3MとNECのレーザー転写にかかわる、それぞれの技術および知的財産権の一部」はサムスングループへ。
2011年7月には、東京工業大学と科学技術振興機構が保持するIGZO薄膜半導体(酸化物半導体)の特許について、サムスンにライセンス供与している。

こうして、有機EL分野でも韓国勢が世界を圧倒しているのが現状。サムスンは今期、設備投資及び開発投資に邦貨換算3兆円を投じるという。資金的にも、もはや有機EL分野はおろか、次世代有機EL分野でも遅れをなしてしまう。

日本では、次世代有機EL分野での開発が、各分野でバラバラに次々と成果をおさめているが、工業化・量産化までにはまだ程遠い。また、量産化しても最終製品化するには、韓国勢・台湾勢・中国勢と組むしかないのが現状となる。

日本の電気製品メーカーが、最終製品市場を制圧するには、フルの無人化組立ラインの工場を作るしかないが、そこまでの投資リスクは出せない。

今回のような学官が共同して開発し、メーカーも参加していく形でも、今では最終製品の日本メーカーの顔が見えてこなくなっている。ならば、部材や素材メーカーとしての生き残りはかけられるが・・・。

九工大 山川教授のファジー理論の研究において、各メーカーの研究施設が、校舎のある飯塚市に集積して共同開発、メーカーが最終製品化に成功して、儲けたのは既に遠い昔のようだ。

iPhoneはアップルの製品だが、世界の電子部材が使用され、その組み立てをEMSメーカーである台湾のフォックスコンが請け負い、フォックスコンは、中国で何十万人も雇用して組み立て、製品化している。
iPhoneの販売価格の内訳は、製品のデザインやソフトウエア開発費用が58.5%、部品費用が21.9%(この中に日本の電子部品メーカーが含まれる)を占める。韓国企業の利益が4.7%、中国を除く労働者の人件費(3.5%)、アップル以外の米国企業の利益(2.4%)、 中国での労働者の人件費(1.8%)(以上合計92.8%)などだった(米経済誌フォーブス)。
売れれば売れるほどデザインやソフトウエア開発費用の原価率は下がり、利益がアップルに転がり込む(広告費用率がない?)計算となっている。

中国での組立費用は、上記のように製品販売価格の実に1.8%でしかないとされている。GEが市場での№1・2位の製品以外は切り捨てたように、日本もアップルのようなメーカーになるか、IBMのような知的財産をフル活用した企業になるか、選択をする時期に来ているのかもしれない。

 

[ 2012年6月11日 ]
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