アイコン 造船業界はもはや中国に敵なしか  韓国業界を現代重工業に見る

世界最大の造船業者となっていた現代重工業、2014年4~6月期の売上高は12 兆8,115億ウォン(約1兆2,800億円)、営業損失▲1兆1,037億ウォン、当期純損失▲6,166億ウォン(約610億円)を露呈。主力の造船 と海洋、プラント部門で、大型工事の工程が遅れて費用がかさみ、約5,000億ウォンの工事損失引当金を計上して損失が大きくなった。
結果、上半 期に▲1兆2,926億ウォン(約1,290億円)の営業赤字。上記のとおり、安値受注と工事遅延の損失引当金の計上によるものだ。リーマン・ショック 後、中国勢などを前に、これまでの度を越した「受注してから利益のことは考える」という取りまくりのビジネスモデルの崩壊。
2014年問題が露見しているだけでもあるが・・・。(2014年問題とは、リーマン・ショック前に受注した利益の大きな案件が2012頃までに消化され、その後の低価格競争で受注した案件が売上高と利益に反映してくる問題)

英国の造船海洋調査機関のクラークソンによると、9月の韓国の船舶受注量は42万1,500CGT(標準貨物船換算トン数)で、中国の92万2,800CGT、日本の55万1,800CGTに後れを取っている。これまでなかったことだが、円安を背景にした日本にも押され、今年になり4月、7月、9月と月間、受注CGT高は日本の後塵に甘んじている。
過去、世界一であった日本の造船業界、その後、世界一となっていた韓国の造船業界であるが、昨年僅差で中国に抜かれ、今年は大きく溝を開けられるようだ。

2013年 世界主要造船国別 竣工量
順位
国・地域名
竣工量(総トン)
1
中華人民共和国(中国)
2,590.3
2
大韓民国(韓国)
2,450.4
3
日本
1,458.8
4
フィリピン
133.1
5
ベトナム
54.2
6
ルーマニア
50.4
7
台湾
48.3
8
ドイツ
35.0
9
インド
25.2
10
トルコ
19.4
2014日本造船工業会編、受注高ではない。
 
<現代、全役員に辞表を提出さす>
現代重工業では、1973年の会社設立から最悪の業績を出し、「全役員(=幹部)が辞表提出、若いリーダーと営業・生産中心の組織改編」すると発表した。
12日午前9時、蔚山の現代重工業本社。日曜日にもかかわらず崔吉善会長と権五甲社長は、本部長7人を緊急に呼び出した。2時間にわたる会議を主宰した権社長が決断を下した。「常務補以上の260人余りは全員辞表を出す。各本部長は今週17日までに改革青写真を持ってくること。その上で再信任を問う。組織は営業中心に変える」。

毎年11月末から12月初めにしていた同社の役員人事は、今月中に前倒しする。時期よりも内容が破格とみられる。現代重工業関係者は、「全役員数は200人前後に減り、入れ替え幅は30%以上なるようだ。特に能力のある部長級を抜擢して組織を刷新するという方針」と説明した。
同社の役員入れ替え幅は、毎年10~15%台だった。今回の措置には現代尾浦造船、現代三湖重工業などが含まれる。
管理と現場組織も手術台にのせられる。支援組織を大幅に縮小し、生産・営業を中心に前進配置するというのが骨子。現場組織改編は費用削減に焦点を合わせる。「絶対に必要な費用も削減する」というのが基本方針。
具体的な事業・人材構造調整案は、今月中に発表される見通し。会社側は「好況期に進出した海外法人と収益創出が難しい事業を原点から見直すだろう」と話した。
 
業界では太陽光・風力など再生可能エネルギー事業からの撤退説が流れている。
新たな枠組みを組むという覚悟は新しいが、外には暗雲が立ちこめているというのが悪材料。
権社長は、「われわれの現実を直視しなければならない。強力な改革を通じ新しく変わらなくてはならない」と強調した。
崔会長と権社長は10月31日の臨時株主総会と理事会で代表理事に選任される予定。
以上。

現代重工業の現状は、韓国の造船業界を物語っているが、形振り構わぬ受注とウォン高。中国の優位性は、バックボーンの鉄鋼業界にも関係してくる。今や世界全体の48.4%の粗鋼生産量を誇る中国の鉄鋼業界(2013中国7億79百万トン/世界16億07百万トン、PM2.5の元凶)であり、世界不況に行く手を遮られ、造船業界へ格安で納品され、造船業界の価格競争力は群を抜くものとしている。鉄鋼も含め、技術力の差など技術者がグローバル化した世界にあり、もはや存在しない。(中国の造船業界もリーマン・ショック後中小の多くが倒産、今では国家主導で再編されている。鉄鋼生産に欠かせない石炭は世界一の産出量でありながら、輸入国でもある。総コストが安い)

現代重工業のこうした業績の責任を取るのは当然、権社長であろうが、韓国風に幹部社員に責任を覆い被せている。小泉-竹中平蔵時代、経営不振に対処し、日本の大企業が挙って行った聖域なき大量リストラにより、研究開発予算が大幅カットされ、肝心の研究開発者を大量に放出したことにより、世に置いてきぼりになった今の日本と類似しているようでならない。(出世力はズバァ抜けているものの、実質能無し)権力を持ったサラリーマン社長のなせる業の宿命だろうか。
[ 2014年10月14日 ]
スポンサード リンク

 

コメントをどうぞ

関連記事

  • この記事を見た人は以下も見ています
  •  
  • 同じカテゴリーの記事です。
  •   


PICK UP

↑トップへ

サイト内検索