アイコン ナノサイズの磁気センサー素子を開発/東北大の中山幸仁准教授ら

東北大学原子分子材料科学高等研究機構の中山幸仁准教授の研究グループは、 東北大学金属材料研究所の横山嘉彦准教授及び東北学院大学の薮上信教授らとの共同研究により、ガスアトマイズ法を用いて、磁化されやすい軟磁性の特性をも つアモルファス合金(金属ガラス)から、直径がナノメートルスケールのナノワイヤーを安価に生産し、これを用いてプロトタイプの磁気センサー素子を作製す ることに成功したと発表した。
さらに、外部の磁場によってインピーダンスが変化する磁気インピーダンス効果を確認している。
今回の研究成果は、磁気センサー素子がマイクロサイズからナノサイズにおいても構築できる可能性を示している。
当磁気センサー素子により、精密産業分野や生体磁気計測機器に応用され、安価な心磁、脳磁計測機器の発展が期待できるという。

 本研究成果は、米国物理協会誌 Applied Physics Lettersにおいて2014年11月19日(現地時間)に掲載された。

ナノワイヤー

【研究の背景】
 アモルファス合金は、理論的な限界値に近い高い強度を持っている。さらに、ランダムな原子構造のため、大きな荷重を加えても形状が回復しやすいという、高い弾性限界を示す。この優良な機械的特性を活用して、構造部材や圧力センサー等に利用しようとする研究が進められている。
さらに、磁化されやすいという軟磁性のアモルファス合金は、外部からの磁場によってワイヤーのインピーダンスが大きく変化する磁気インピーダンス効果を持つことが知られている。この磁気インピーダンス効果を活用することにより、高感度磁気センサーや電子コンパスなどが実用化されている。

ガスアトマイズ法は、粉体を製造する主要な方法として確立されているが、東北大学の研究グループは、このガスアトマイズ法をベースに独自のワイヤー化技術を開発してきた。高温で溶解されたアモルファス合金を融点以下へ過冷却すると、粘性が増大して飴のような状態になり糸をひく性質(曳糸性)が現れてくる。本研究では、この状態でガスアトマイズを行うことにより、ナノワイヤーを作製した。
この手法の利点は、ナノインプリントやリソグラフィーなどの高価な手法を用いずとも、容易に大量のナノワイヤーを束ねたナノファイバーが作製できる点にある。白金合金系やパラジウム合金系を用いれば、触媒機能を持つナノファイバーの大量生産も可能で、様々なアモルファス合金からナノファイバーを作製できる手法として着目されている。

【研究の内容と今後の展開】
 コバルト鉄系アモルファス合金は、優れた軟磁性特性を持つことが報告されている。これまでのワイヤー作製法では、直径が20.30ミクロ程度が限界だが、今回の研究では、独自のガスアトマイズ法を用いることにより、直径が100ナノメートルから3マイクロメートル程度の長尺なワイヤーの作製に成功した。さらに、作製したワイヤーを、集束イオンビーム法を用いて電極上へ固定し、プロトタイプの磁気センサー素子を作製した。
このデバイスを用いて、外部磁場を変化させながら、ワイヤーのインピーダンスを計測したところ、外部磁場に応じてインピーダンスが変化することが明らかとなった。
更に、インピーダンスのピーク位置も周波数に応じて変化することが観測された。このピーク位置の周波数依存性は強磁性共鳴と呼ばれている。
また、インピーダンス変化はGHz領域においても計測されており、従来の周波数特性と比較すると、1000倍以上の応答速度が得られること示している。
今後は、更に高い磁気検出能が得られるような合金の探索や、そのナノワイヤー化を進めると共に、磁気マッピングが得られるよう素子の高密度化を試みる。また、生体磁気計測を視野に入れた研究を進め、これが実現すれば安価な心磁、脳磁計測機器の発展が期待できるとしている。

 

[ 2014年11月20日 ]
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