パナソニックホールディングス(HD)傘下のパナソニックが、40〜59歳の中高年社員と再雇用者を対象にした希望退職を開始した。対象者には最大で数千万円の上乗せ退職金を支給するほか、転職支援や最大3カ月の転職休暇も提供。5月に発表されたグループ全体で1万人規模の人員削減の一環であり、日本の大企業が長年維持してきた「年功序列と終身雇用モデル」に大きなメスが入った形だ。
パナソニックは2026年に主要事業会社を3社に分割・再編する方針を示しており、その前段階として「高コスト構造の是正」が急がれている。特に55歳前後の層を厚遇して退職を促す制度設計からは、中高年層の人件費が経営を圧迫している現実が透けて見える。
一方、台湾企業は“選別と再教育”で対応
興味深いのは、こうした人員整理へのアプローチが、台湾企業と対照的である点だ。台湾では半導体や電子部品の成長を背景に、ベテラン社員のスキル転換やデジタル教育を通じて現場に残す動きが主流だ。一定の年齢層に達したからといって自動的に「退場」を求めることは少なく、“再配置による最適化”を優先する文化がある。
その結果、台湾企業では技術の継承とイノベーションの両立が比較的うまく進んでおり、TSMCのような世界的企業の競争力にもつながっている。一方で、日本企業は「整理=退職」となりやすく、人的資本の最大活用という観点では、課題が多く残る。
今、日本企業に問われる「人材戦略の質」
今回のパナソニックの施策は、効率化としては合理的だが、企業と人材がともに成長するという理想には遠い。デジタル化、AI、グローバル競争が加速する中で、ただ中高年を削減するだけでは持続可能な成長にはつながらない。
真に問われているのは、人を切る力ではなく、人を活かす知恵である。