アイコン 家電業界の今期業績予想一覧と現状 2011年度 ランキング

日本のエコポイント政策に現を抜かした家電業界の国際戦略ミスのツケが、リーマン・ショックに至り、より多くの問題を残したまま、今期業績に現出してしまった。
これまで日本のお家芸であったTV・半導体は、今や韓国・台湾勢に苦戦、日本市場もエコポインと地デジでバカ売れした昨年の反動及び市場縮小から、日立がTV生産から撤退を表明するメーカーまで出現している。
その業績の悪化に円高を推奨した民主党政権のブレーン(ミスター円こと榊原ら)の功罪は明らかであり、政権の中途半端な円高対策は後手後手、超円高を定着 させてしまった。先般の介入では、世界から総スカンを喰らわせられ、既に安住殿は怖気づいてしまい、最高権力者の野田首相も2月4日「日本は今の円高を生 かして、やれることをやっていくしかない」と円高容認姿勢を露わにしてしまった。

<歴史は繰り返される>

バブル時代、アメリカが日本からの車や家電製品の輸入に耐えかね、天下のGEでさえ家電領域から完全撤退、今では世界の№1もしくは№2の事業領域以外から撤退してしまった。
今、正に世界では家電業界の大構造変化が生じており、お家芸であった日本勢は、韓国勢にその領域を完全に奪われてしまった。

過去、台湾企業がアメリカのファブレスメーカーの生産工場に徹し、当時開放路線を採った低賃金の中国広州深センに進出、今では台湾企業の富士康(フォックスコン)が何十万人も採用して電子機器のiphone製品やアマゾンのタブレッドなどを生産している。
当時、それを見た韓国の家電メーカー勢は、日本勢より早く中国に本格進出、世界の工場となった中国を生産基地とした。韓国勢が強いのは、アジア金融危機で矢面に立たされ、IMFから資金を導入、財政の超引き締め政策を実行した結果、多くの企業が倒産した。生き残った企業は、国内市場を独占することに成功。その結果、内需で財務基盤を強固なものとし、世界戦略へ打って出る財務内容を擁した。
海外戦略を実行するために、日本から多くの技術者をヘッドハンティング、生産機械も日本から最新の製造機械を導入して、中国生産の高品質の安価な製品を造り上げることに成功した。 

2007年(日本の不動産ミニバブル末期)、世界経済もバブル化していた。そこに台頭してきたのがBricks諸国、高い経済成長を遂げ、国民の所得も年々上がった。
ところが、そうした市場に日本勢は、当時の高品質で付加価値をいっぱい付けた高価な家電製品を持ち込んだ。しかし、新興国がいくら台頭してこようと、こうした新興国は低賃金を売り物に成長を遂げており、所得が少々増加しようが、日本や欧米の所得水準には程遠いものであった。
新興国に対して韓国勢は、日本製より安価な、それまで見ていたブラウン管方式のTVより画面も大きく、品質もよいベーシックなテレビを提供、大多数の新興国の庶民に受け入れられたのであった。

しかし、まだ日本も新興国向けに軌道修正するチャンスはあった。2007年~2008年がターニングポイントであった。家電業界の最得意客であるアメリカではサブプライムローン問題が表面化、とどのつまりはリーマンン・ショック。日本は、経済立て直しの一環で、家電のエコポイント制度を設け、更にTVでは地デジをごり押しした。家電業界は、新興国市場の現実から目を背け、国内販売に全勢力を注ぎ込んだ。その結果、TV業界は高品質・高付加価値のTVを競って開発にあたり、矢継ぎ早に新製品を投入、それはそれで日本市場では売れに売れて好業績を上げた。シャープの亀山ブランドが持て囃された時代である。
(そうした結果、今第3四半期のシャープは、テレビ+携帯の事業売上高が、昨年の地デジとエコポイント効果の反動で、前年同期比▲25.4%も落ち込んでいる)

しかしながら、世界市場では大きなマーケットであるBricks諸国が、リーマン・ショックにより疲弊した欧米市場を尻目に経済成長率は鈍化するものの、それほど大きな落ち込みはなく、市場を拡大し続けた。これら新興国を上得意客にした韓国勢がBricks諸国の市場を独占して行った。

所得が低賃金から少しづつ増加中のBricks諸国に、高価すぎる高品質・高付加価値TVを持ち込んだことに日本勢のすべての国際戦略のミスがあり、今期の日本の家電業界に業績に帰結した。

今では、Bricks諸国の家電販売店では、日本製TVが隅っこに追いやられ、メインを飾るのは韓国勢のサムスン・LG製品となっているのが実情である。

日本が、頼りにしたアメリカ市場は、庶民の多くがまだまだサブプライムローンに追われ、高品質のTVを購入するゆとりはない。EU諸国も周知の通り、財政赤字で経済が疲弊したままである。そうした先進国でも、国民=庶民は安価な韓国勢や台湾のファブレスメーカーの製品に集中、日本勢は苦境に立たされている。

筆者は、日本のファブレスメーカーの安価なハイビジョンTVを見ているが、同型機で2倍も3倍もする有名メーカーのTVと決して見劣りするものではない。日本に比べ、低所得の新興国の人たちや先進国の低中所得者層だったら、どちらを買う人たちが多いだろうか?

追、船井電機は、アメリカでの家電製品販売が主を占めている。特にTVには強く、フィリップスからTV事業を購入、ブランド使用権も更新して、アメリカではフィリップスブランドでも販売している。しかし、船井電機もアメリカ経済の低迷、韓国勢や台湾のファブレスメーカーなどの台頭により、最近は苦戦しているのが実情である。

ドウシシャは、今では家電量販店にも置かれている「オリオン」ブランドのTVのメーカー(中国生産)。同社はいろいろな事業を展開しており、一概に家電メーカーとは言いがたいが、一頃まで、店舗に並べてもらえなかったオリオンTVが、安い価格で品質も良いため、今ではどこでも販売されるようになってきている。そのためか、家電メーカーを取り上げる中で、エコポイントの反動はあるものの唯一、TV事業でも薄利ながら利益を計上している。

ここまで取り上げなかった携帯電話、スマホへの転換においても日本勢は敗退している。
下記の業績予想でもわかるとおり、日本の家電大手メーカーは全滅、専業メーカーが全滅している中で、重電等を擁している日立・三菱・東芝だけが、かろうじて利益を計上している。

 

日本の家電メーカーの今期業績予想(2012/3期)
連結/百万円
 
売上高
前期比
営業利益
経常利益/税引前純利益
当期利益
株主帰属利益
前期比
パナソニック
8,000,000
-8.0
30,000
-820,000
 
-780,000
ソニー
6,400,000
-10.9
-95,000
-115,000
 
-220,000
 
シャープ
2,550,000
-15.6
0
-30,000
-290,000
 
NEC
3,100,000
-0.5
70,000
35,000
-100,000
 
 
東芝
6,200,000
-3.1
200,000
125,000
 
65,000
-52.8
日立製作所
9,500,000
2.0
400,000
410,000
280,000
200,000
-16.3
三菱電機
3,670,000
0.7
210,000
210,000
 
100,000
-19.7
船井電機
265,000
-10.4
3,200
1,500
-2,800
 
ドウシシャ
103,000
10.2
9,000
9,000
5,300
 
20.6
・米⇒米国基準=経常利益のところは税引前純利益、日⇒日本基準=経常利益
サムスン
11,200,000
7.0
1,100,000
 
 
 
 
・サムスンの決算期は12月、営業利益の前年比は-6.0% ・日本円換算(売上高:1,470億㌦、営業利益145億㌦・・・76.5円換算)
 
参考1
韓国 サムスンの業績推移(連結)  /兆ウォン
 
2006
2007
2008
2009
2010
2011
売上高
85.8
98.5
121.3
139
154.6
165.0
  前期比
 
14.80%
23.10%
14.60%
11.20%
6.7%
営業利益
 
 
 
 
 
16.2
純利益
7.9
7.4
5.5
9.7
16.1
 
総資産
81.4
93.4
105.3
118.2
134.2
 
・1円は15.1Won  2011年12月期邦貨換算売上高:11兆円
 
参考2
サムソン パナソニック
 
[ 2012年2月 6日 ]
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