アイコン 暗雲立ち込めるルネサスの再建策/ロイター

ロイターは、ルネサスの再建策について、現在の状況を調査した上、次の通り詳細に分析している。

以下ロイター記事。


工場再編や早期退職によるリストラ策を打ち出した半導体大手ルネサスエレクトロニクス。先送りしてきた構造改革に取り組む「決意」を示し、経営再建に向けようやく一歩を踏み出した。だが、発表内容は「譲渡または閉鎖を検討する」というあいまいな表現が多い。
赤字が続くシステムLSI(大規模集積回路)の分離が再建の命運を握るが、主力の鶴岡工場(山形県鶴岡市)の売却交渉も難航しているもようで、改革の実現性は不透明だ。金融支援交渉や成長戦略の立案も同時並行で進める必要があり、依然として課題は山積している。

<TSMC会長が工場買収を否定>
「ルネサスのどの工場も買う計画はまったくない」――。合理化策発表の翌日4日。半導体受託生産(ファウンドリー)世界最大手、台湾積体電路製造のモリス・チャン会長はこう断言した。鶴岡工場の売却交渉相手であるTSMCのトップが台湾の公式の場で買収の可能性を否定したのだ。必死に交渉を続けているルネサスにとっては厳しい一言だったに違いない。
これまでも半導体業界では、コスト競争力や技術力に優れるTSMCが「鶴岡工場を買う理由が見つからない」と否定的な見方が優勢だった。本当に不要なのか、交渉を有利に進めたいとの思惑があるのか、発言の真意は不明だが、チャン会長を知る業界アナリストは「よほど安い買い物なら検討するかもしれないが、合理的で採算に厳しい会長が買うとはどうしても考えにくい」と話す。

家電やデジタル機器に使われるシステムLSIは国内メーカーの販売不振に引きずられ、営業赤字が続いている。製品や顧客ごとに仕様が異なり、各社の要望に応えて作る多品種少量製品のため生産効率が悪い。ルネサスは生産部門の鶴岡工場を売却し、残る設計・開発部門は富士通やパナソニックとの事業統合で本体からの切り離しを目指すが、富士通は「ルネサスのリストラ断行がまず先」(幹部)と慎重姿勢を崩していない。交渉の行方が注目される。

<3年以内のリストラ実現は可能か>
鶴岡以外の工場再編の行方にも不透明感が漂う。ルネサスは、設立母体であるNEC、日立製作所、三菱電機の全国に散在する工場をそのまま引き継いだが、地域経済などに配慮し、整理統合に手をつけてこなかった。
3日の発表では、国内18工場のうち「将来的に譲渡も検討」とした大分工場(大分県中津市)と熊本大津工場(熊本県大津町)を含め最大10カ所を売却・閉鎖する方針に加え、5000数百人規模の早期退職による人員削減策が示された。

3日に会見した赤尾泰社長は、拠点再編を「3年以内にやり遂げる」と説明したが、各工場の方向性については「譲渡または集約を検討する」とあいまいな表現に終始した。売却には相手がいるため、明確にできない事情も分かるが、「存続」と発表した高知工場(高知県香南市)についても、関係筋によると「水面下で国内企業に売却する方向で交渉が進んでいる」。発表内容は修正される可能性もありそうだ。

組み立てや検査など半導体製品に加工する「後工程」の工場9拠点のうち6拠点については、生産能力縮小の上、譲渡または集約を検討する計画。だが、後工程はルネサス自身もコスト面などから海外シフトを加速する方針を打ち出しており、他社でも「日本での後工程生産に積極的な向きはほとんどおらず、売却はかなり難航する」(外資系証券の半導体業界アナリスト)とみられている。

工場閉鎖となれば、雇用面を含め地域に及ぼす影響も大きい。東京商工リサーチによると、ルネサス本体と今回のリストラで縮小・譲渡・集約される国内生産拠点の関係会社6社の仕入れ先・販売先は合計3209社に上る。

市場では、手つかずだった合理化策の決定を評価する声もあるが、「多くの交渉が暗礁に乗り上げるのではないか」と実現性を疑問視する声もある。シティグループ証券クレジット・スペシャリストの高橋克英氏は「半導体業界としては3年という時間軸もスピードがやや遅い」と指摘する。
今後は「どれだけ前倒しでできるか。『絵に描いた餅』にならないかどうか、合理化策の執行能力に注目したい」と話す。

<資本増強や成長戦略立案など課題山積>
一方、財務体質の強化策や肝心の成長戦略もまだ明らかになっていない。割増退職金などのリストラ費用を確保するため、NEC、日立、三菱電の大株主3社と主要取引銀行に要請中の資金支援について、赤尾社長は「受けてもらえる方向」と語ったが、具体的な言及は避けた。
複数の関係筋によれば、計画している総額1000億円規模の支援のうち、500億円を大株主3社で負担し、残りの500億円は銀行が既存融資枠を活用して融資する方針だが、まだ3社の負担額などは決まっていない。

赤尾社長は、3年以内の拠点再編に伴う人員削減数として「今回の早期退職と同じような規模が加わるのではないか」とも話しており、削減数は最終的に1万人以上になる見通し。将来的に人員対策費用が膨らみ、資金が不足する公算が大きい。

合理化が進めば、工場閉鎖の設備処理費用などで多額の特別損失が発生し、財務の悪化も必至。今年3月末の自己資本は約2180億円、自己資本比率は25.4%で、資本増強が必要になる。成長への投資資金も要る。
ルネサスは、複数の外資系投資ファンドに第三者割当増資の引き受けを打診しているが、関心を寄せる外資系投資ファンドは「システムLSI事業の分離などリストラの実施が前提条件」(関係筋)という。ファンドの出資を仰ぎ、再建策を軌道に乗せるためにも、リストラの早期実現が欠かせない。

ルネサスは赤字体質のシステムLSI事業を切り離し、トップシェアを維持するマイコン事業に特化して再生を図る考えだが、そのマイコン事業では、東日本大震災で部品調達不足に悩まされた自動車メーカーが購買先を分散させており、中長期的にシェアを落としかねない状況だ。「新規の製品開発もほとんど止まった状態」(業界関係者)で、社員の士気も低下している。事業を成長させるための前向きな施策を早急に打つ必要がある。ルネサスにはまだ多くのハードルが待ち構えている。
以上。

 これまでJC-NETのルネサス記事は、多くの方々が読まれている。再建策を打ち出したルネサスについて、厳しい内容を掲載したロイター記事を、読者の方々に参考になると思いそのまま掲載した。(ロイターさんよろしく)

[ 2012年7月 9日 ]
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