
大村市新庁舎(庁舎棟)建設工事を落札したのは、噂通り大林組・西海建設・高瀬建設JVだった。
入札前から業界内で有力視されていた組み合わせが、結果としてそのまま落札者となった。
この事実だけで、不正入札だったと断定することはできない。
しかし、「予想されていたJVが落札した」という市民の疑問に対し、大村市が「適正に執行した」と答えるだけでは、疑念は解消されない。
前回、本紙は大村市議会に対し、行政の説明を追認するのではなく、審査過程を厳しく検証するよう求めた。
では、市議会が十分な資料を確認しないまま、関連する契約議案や予算議案に賛成した場合、誰がその責任を負うのか。
答えは明白である。
賛成した議員一人ひとりである。
議員の一票は「市長への白紙委任」ではない
大型公共工事に関する契約議案は、単なる事務手続ではない。
議員が賛成票を投じるということは、
「この入札手続は公正だった」
「この落札者を契約相手とすることは適切である」
「工事の安全性、施工体制及び法令順守にも重大な懸念はない」
と判断したに等しい。
ところが、その判断の前提となる資料を確認せず、執行部の説明だけを聞いて賛成するのであれば、それは審議とは呼べない。
市長部局に対する白紙委任である。
後になって問題が発覚したとき、「市から問題ないと説明を受けていた」
「詳しい資料は見ていなかった」「他の議員も賛成していた」
という言い訳は、市民には通用しない。
議員は、自ら調査し、自ら質問し、自らの責任で賛否を決めるために議席を与えられているからだ。
指名停止期間中の落札決定を、どう検証したのか
広島市は、大林組について、令和8年7月10日から同年8月9日までの1か月間、指名停止措置を行った。
その理由について広島市は、大林組が代表構成員を務めるJVの工事現場で発生した労働災害に関し、所轄の労働基準監督署に事実と異なる説明を行っていたとして、令和8年3月24日付で同社及び社員2人が労働安全衛生法違反による罰金刑の略式命令を受けたためと公表している。広島市公表資料
そして、大村市新庁舎建設工事の落札決定は8月7日である。
つまり、少なくとも広島市における指名停止期間中に、大村市では大林組を代表構成員とするJVが落札者となったことになる。
もちろん、広島市の指名停止措置が、そのまま大村市の入札参加資格に及ぶとは限らない。
問題はそこではない。
大村市は、広島市の処分をいつ把握したのか。
把握した後、契約担当、建築担当、安全管理担当、法務担当の間で、どのような協議を行ったのか。
入札参加資格を維持させることについて、誰が、どの資料に基づき、どのような判断をしたのか。
さらに市議会は、その判断経過を確認したのか。
ここを曖昧にしたまま契約を認めるのであれば、議会は自ら監視機能を放棄したと言われても仕方がない。
「大手だから安心」という思考停止
新庁舎は、平常時の行政サービスだけでなく、大規模災害時には災害対策本部となる防災拠点である。
だからこそ、施工企業には高度な技術力だけでなく、徹底した安全管理と法令順守が求められる。
スーパーゼネコンだから安心。
施工実績が豊富だから問題ない。
有名企業だから間違いはない。
そんな看板だけを信じるのであれば、入札参加資格審査も議会審議も必要ない。
企業規模が大きいことと、個々の工事における安全管理や報告体制が適切であることは、まったく別の問題である。
まして今回、公表資料によれば、問題となったのは労働災害の発生そのものだけではない。
労働基準監督署に対する説明の内容が問題とされ、法人と社員に罰金刑の略式命令が出された事案である。
防災拠点となる新庁舎を任せる以上、大村市は通常以上に厳しい確認を行う必要があったはずだ。
市議会もまた、その確認が本当に行われたのかを検証しなければならない。
JC-net・日刊セイケイ編集長 中山洋次