地域動物問題

アイコン 【地域動物】長崎の犬猫引き取り問題を追う 県立保健所管内で591頭、壱岐では子犬151頭 飼育放棄防止と譲渡強化へ

Posted:[ 2026年9月20日 ]

数字で見る 長崎の犬猫引き取り問題
県立8保健所
引取数
591
うち犬
408
うち猫
183
壱岐の犬
151
すべて子犬
※2024年度。長崎市・佐世保市を除く県立8保健所の公表資料を集計。591頭は「引取数」であり、すべてが飼い主による飼育放棄を意味するものではありません。

長崎県では、飼えなくなった犬や猫を行政が引き取るだけでなく、飼い主による終生飼養や新しい飼い主探し、不妊去勢、地域猫活動などを通じて、そもそも行政施設へ入る犬猫を減らす取り組みが進められている。

一方、県立8保健所が公表している2024年度(令和6年度)の実績をJC-NETで集計すると、長崎市と佐世保市を除く県内で、犬408頭、猫183頭の計591頭が「引取数」として計上された。県南、壱岐、県央に引取りが集中するなど、地域による差も大きい。

ただし、この591頭すべてが飼い主による「飼育放棄」ではない。県立保健所の公表資料では、飼い主から持ち込まれた動物と、所有者が分からない犬猫などを分けていないためだ。長崎の飼育放棄・引き取り問題を見るには、単純な頭数だけではなく、地域ごとの事情や行政の対応をあわせて見る必要がある。

数字で見る長崎の犬猫引取り
・県立8保健所管内の2024年度引取数:591頭
・犬:408頭
・猫:183頭
・県南保健所管内:224頭
・壱岐保健所管内:161頭
・県央保健所管内:142頭
・壱岐の犬の引取数:151頭、すべて子犬
※長崎市、佐世保市は独自に動物行政を行っているため、この集計には含まない。引取数は飼育放棄数を意味しない。


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県立保健所管内で591頭 地域によって大きな差

長崎県が公表した各保健所の2024年度実績を集計すると、長崎市と佐世保市を除く県立保健所管内の引取数は次の通りとなる。

保健所 主な管内
西彼 西海市、長与町、時津町 1 2 3
県央 諫早市、大村市、東彼杵郡 40 102 142
県南 島原市、雲仙市、南島原市 210 14 224
県北 平戸市、松浦市、佐々町 2 8 10
五島 五島市 1 14 15
上五島 小値賀町、新上五島町 0 1 1
壱岐 壱岐市 151 10 161
対馬 対馬市 3 32 35
合計 408 183 591

※各保健所の「令和6年度事業実績」をJC-NETで集計。ここでいう引取数は、飼い主による飼育放棄だけを示す数字ではない。

特に多いのは、島原半島を管轄する県南保健所の224頭、壱岐保健所の161頭、諫早・大村などを管轄する県央保健所の142頭だった。一方、上五島保健所では1頭、西彼保健所では3頭にとどまっており、同じ長崎県内でも状況には大きな差がある。

壱岐では犬151頭すべてが子犬 繁殖管理が地域課題に

数字の中でも特徴的なのが壱岐だ。2024年度に壱岐保健所が引き取った犬151頭は、成犬0頭、子犬151頭だった。猫は成猫7頭、子猫3頭の計10頭で、犬の引取りが突出している。

壱岐保健所は地域の課題として、犬猫の放し飼いや繁殖制限が十分に行われないことで、望まれずに生まれた子犬・子猫について引取りを求められるケースが続いていると説明している。また、不適切な飼養管理に関する相談や苦情への対応も課題としている。

ただし、151頭について個々の所有者の有無や引取り理由までは公表資料から確認できないため、「151頭すべてが飼育放棄された」と判断することはできない。

県央保健所も、飼い主の都合によって行政に引き取られる動物が多いことや、不適切な飼育による近隣トラブルが続いていることを地域課題として挙げている。野良猫についても引取り依頼は依然として多く、不妊去勢や地域猫活動とあわせた対策を進めている。

佐世保市は飼い主からの引取りを分けて公表

県内でも、佐世保市は「飼い主からの引取り」と「所有者不明」を分けた統計を公表している。

公表されている詳細統計では、2023年度に飼い主から引き取った犬は8頭、猫は15頭だった。所有者不明の猫は39頭。所有者不明猫は2019年度には430頭だったため、公表値では大きく減っている。

ただし、佐世保市の現在の統計ページで確認できる詳細な年度別データは2023年度までで、2024年度以降について同じ区分で比較できる数字は確認できなかった。

佐世保市も、飼えなくなった場合はまず新しい飼い主を探すことを求めており、十分な譲渡先探しをしていない場合や、繰り返し引取りを求める場合などには引取りを拒否することがある。現在は動物愛護センターに収容された犬猫だけでなく、市民が新しい飼い主を探している猫などの情報も掲載し、行政施設に収容する前の譲渡につなげる仕組みを設けている。

長崎市は事前相談を徹底 猫の引取り93頭まで減少

長崎市では、犬猫を飼えなくなったからといって無条件に引き取る制度にはしていない。飼い主からの引取りは「相当の事由」がある場合を対象とし、事前相談を必要としている。新しい飼い主を探すなど、飼育を継続できなくなる前の対応も求めている。

猫については、2024年度の引取数が負傷猫を含め93頭となる見込みと市が公表した。市の集計では同年度、施設内で死亡した猫などを含む死亡・処分数は30頭だった一方、自然死や疾病・負傷などによる死亡を除いた「殺処分」は0頭となった。

ここは数字の意味に注意が必要だ。「行政施設に入った猫が一頭も死亡しなかった」という意味ではなく、自然死等を除いた長崎市の統計上の殺処分が0頭になったということである。

長崎市は2024年度から、離乳前の子猫を家庭などで一時的に育ててもらう「ミルクボランティア」を開始。市は2026年時点で、同制度を始めた2024年度以降、猫の殺処分はゼロとしている。

野良猫を増やさない 長崎市は2026年度700頭の不妊化を計画

飼育放棄・引取り問題では、飼い主のいる動物だけでなく、所有者のいない猫が繁殖して行政への相談や引取りにつながる問題も大きい。

長崎市は、野良猫によるふん尿被害や、野良猫が子猫を産んだとの相談が多く、猫の引取り依頼では生まれたばかりの子猫が多いとしている。

このため2026年度の「まちねこ不妊化推進事業」では、野良猫700頭を対象に不妊去勢手術を進める計画で、予算額は1172万9,000円。内訳として雌600頭、雄100頭を予定している。行政への引取りが必要になる前に繁殖そのものを抑える対策だ。

「飼えないから行政へ」から「飼えなくなる前に」へ

長崎県も、飼えなくなった犬猫について、まず飼い主自身が新しい飼い主を探すことを求めている。県の「ながさき犬猫ネット」も譲渡先探しに利用できる。

動物取扱業者からの依頼、繰り返しの引取り、繁殖制限の指導に従わないまま生まれた子犬・子猫、老齢や病気だけを理由とするケース、新しい飼い主を探す努力をしていないケースなどについては、県が引取りを拒否できる場合がある。

県南保健所や五島保健所でも、引っ越し、犬猫の高齢・病気、犬が吠えて近所迷惑になるといった飼い主側の事情だけを理由とした引取りには応じない方針を示している。

つまり行政の役割は、飼育できなくなった動物を最終的に収容するだけではなく、飼い主の責任、繁殖制限、譲渡先探しを早い段階で働きかけ、行政施設へ入る頭数そのものを抑える方向へ移っている。

多頭飼育も早期把握へ 10頭以上は県条例で届出

飼育困難が深刻化する前の対策として、長崎県では2023年4月に「長崎県動物の愛護及び管理に関する条例」を施行した。

一定の例外を除き、同じ施設で犬と猫を合計10頭以上飼育する場合には届出が必要となる。県は、多頭飼育状態を早い段階で把握し、不適切な飼養や周辺の生活環境への影響などにつながることを防ぐ狙いを示している。長崎市については独自条例があるため、県条例の対象外となる。

多頭飼育の問題は、犬猫だけで完結しない。飼育者の生活状況や周辺住民への悪臭・ふん尿被害などにも関係するため、動物行政だけではなく、地域や福祉分野との連携が必要になるケースもある。

老朽化した県施設を更新 新動物愛護管理センター整備へ

引取り後の譲渡体制を強化するため、長崎県は新たな動物愛護管理センターの整備も進めている。

現在の「アニマルポートながさき」は1976年に建設され、老朽化や施設容量などが課題となっている。県は新センターを、犬猫の収容だけでなく、譲渡、動物愛護の普及啓発、ボランティアなどとの連携拠点として位置付けている。

新施設については2025年12月に事業契約が締結されており、県は2027年度の供用開始を目指している。行政に入った犬猫の「出口」となる譲渡能力をどこまで高められるかも、今後の重要なポイントになる。

残る課題 「飼育放棄」が何頭なのか県全体では見えない

長崎の飼育放棄・引き取り問題を調べる中で、最も大きな課題の一つが統計の分かりにくさだった。

県立保健所の年度実績では犬猫の「引取数」は公表されているが、そのうち何頭が飼い主から持ち込まれ、何頭が所有者不明だったのかは確認できない。このため、県内で年間何頭が飼育放棄されたのかを現在の公表資料だけから正確に算出することはできない。

佐世保市のように所有者の有無を分けている自治体もあるが、自治体ごとに公表項目や年度が異なる。長崎市を含め、県全体を同一基準で比較できる統計にはなっていない。

それでも、壱岐で子犬の引取りが集中していること、県央では飼い主都合の引取りや野良猫の引取り依頼が課題とされていること、長崎市では子猫が行政へ入る前段階で不妊化やミルクボランティアを進めていることなど、地域によって問題の形が異なることは公的資料から確認できる。

「飼えなくなったら行政へ」という最後の段階だけでなく、繁殖を防ぐ、新しい飼い主を探す、多頭飼育を早期に把握する、保護された犬猫を譲渡につなぐ――。長崎県内では、引取りに至る前後の仕組みを広げる取り組みが進んでいる。今後は、地域ごとの引取り理由をより明確に把握できる統計と、飼育困難になる前に支援や譲渡へつなげる体制づくりが課題となる。 ```

 

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