建築鋼材価格動向-鉄鋼価格はもっと下げよ!
建築市況悪化の原因の一つは、建築代金の高さにもある。その価格設定力は大手メーカーが牛耳っている。鉄鋼・生コンが代表格、新日鉄と太平洋セメントである。
鉄鋼価格が中国建設市場の好調から暴騰した時には、世界価格だとして一機に値上げして空前の利益を享受した鉄鋼メーカー。ここに来て世界市場が冷え切っているにもかかわらず、生産調整で値下げ幅を鈍化させ、価格維持をはかっている。
太平洋セメントは、値段を上げる根拠となった燃料費などが続落、それにもかかわらず、値段を上げた。太平洋セメントは40%の市場占有率を持つ会社だ。横暴そのものである。
今回は鋼材価格を取り上げる。
☆電炉メーカー (単位:百万円)
東京製鐵 | 売上高 | 経常利益 | 当期利益 |
09年3月期第3四半期 | 241,706 | 49,988 | 29,746 |
08年3月期第3四半期 | 178,193 | 16,717 | 9,821 |
09年通期予想 | 276,000 | 55,000 | 32,000 |
09年通期-09第3四半期 | 34,294 | 5,012 | 2,254 |
★高炉メーカー
新日本製鉄 | 売上高 | 経常利益 | 当期利益 |
09年3月期第3四半期 | 3,830,217 | 410,429 | 212,113 |
08年3月期第3四半期 | 3,506,192 | 434,669 | 263,056 |
09年通期予想 | 4,750,000 | 360,000 | 175,000 |
09年通期-09第3四半期 | 919,783 | ▲50,429 | ▲37,113 |
★鉄スクラップ価格(炉前価格) 関西価格 (単位:トン当り、円)
08年1月 | 第5週 | 46,067 |
08年6月 | 第2週 | 77,000 |
08年10月 | 第5週 | 13,500 |
09年4月 | 第2週 | 21,500 |
08年9月はリーマンショックで暴落している。
09年3月期第4半期単独(09/1~09/3)を上記に比較した、電炉メーカーの東京製鐵の経常利益は、50億12百万円の黒字に対して、新日鉄は504億29百万円の赤字。
その理由は、電炉メーカーが材料とする鉄スクラップ価格が暴落したため、原料安で利益を計上でき、新日鉄は、高炉原料の鉄鉱石・コークス用原料炭を年間契約で購入、昨年4月より一昨年より2割以上値上がりした原料を使用している。そのため、新日鉄等高炉メーカーは生産量を調整して価格維持をはかっているのが現状。
こうして建築に使用するH鋼は、高炉メーカーの生産量が圧倒的に多く、需給バランスから見て市場価格の下落率が低くなっている。高炉メーカーも現在使用している原料は高値分であろうが、4月からは安い原料価格(年1回4月価格改定)となっていることから、大きなトレンドで確実に表のように下落している。
最近の価格は大きく安値に動いており、地元ゼネコンもこうした鋼材価格動向には常に注意を払い、建築単価を少しでも安くする努力が必要である。
東京製鉄は4月20日、5月契約の製品販売価格を前月比でH形鋼などの品種は据え置くと発表している。新日鉄への気遣いか。
高炉メーカーはもっと下げよ!
[ 2009年4月21日 ]