岐路に立つ「井筒屋」百貨店/実質私的整理のガイドラインで再建へ③
同社の躓きは不況だけに起因したものではない。これまで久留米市の行政サイドからの依頼を受け、放置していた不採算店「久留米井筒屋」閉鎖の遅れ、地域埋没型の不採算店「飯塚井筒屋店」の閉鎖の遅れなど指摘されるが、最大の失敗は「博多井筒屋」である。
同店は、九州新幹線開業に合わせ、新博多駅ビル建設に伴いJR九州とスッタモンダ、結局新博多駅のメインテナントは「阪急百貨店」に決定。同社はJR九州から45億円という巨額の営業保証金を入手した。ところが、何を血迷ったのか福岡市の第三セクター絡みで最大の失敗策である博多リバレンの地階に平成19年11月に入居。テナントがいたため追い出し料や高級百貨店仕様の内装工事など巨額の投資を行ったものと推測されるが、華々しく開業したものの地階2フロアーだけの店舗で中途半端、客も当然閑古鳥状態、平成21年6月、1年8ヶ月と2年も持ち堪えられず閉鎖、博多から井筒屋は完全撤退した。折角JR九州から貰った営業保証金兼立退料を湯水のごとく浪費してしまったのである。
今回の経営危機は、当博多リバレン入居の失敗がすべてを物語っているといえる。当然中村社長の責任である。そうした失敗が、社員のやる気を失しさせ、最近の夏冬ボーナス0という事態を招いたことはいうまでもない。正月元旦陣頭指揮を執っていた中村社長であるが、目先に長けていても長期戦略は既に老害であったのであろうか。
「そごう」跡地については、1993年「そごう」が北九州市小倉のメイン通りで開業したものの、会社そのものが破綻してしまった。その跡地は、元々百貨店としてライバル関係にあったことから井筒屋は見向きもせず、伊勢丹が入居するも商売にならず撤退、北九州地場のも一つの百貨店「小倉玉屋」が、室町再開発で閉鎖になることから入居するも、うまくいかず「小倉玉屋」も65年の歴史を閉じた。その後も紆余曲折があったものの旨くいかず、地元の強い要請を受け井筒屋が登場、「コレット井筒屋」として現在運営している。ロフトや無印良品なども入居させ健闘しているほうであろう。井筒屋は北九州の顔であり、これまでどおり北九州市の中核商業施設として再建されるべきであろうが前途多難。
昭和10年7月 | ㈱井筒屋百貨店を設立(資本金100万円) | ||
昭和11年10月 | 井筒屋(現 本店)を開店 | ||
昭和12年11月 | ㈱九軌百貨店を吸収合併(九軌鉄道は西鉄前身) | ||
昭和34年11月 | 八幡店(現 黒崎店)を開店 | ||
昭和36年12月 | 福岡証券取引所に上場 | ||
昭和39年8月 | 飯塚支店を分離独立するため㈱井光を設立(昭和40年3月、商号を㈱飯塚井筒屋(現・連結子会社)に変更) | ||
昭和40年10月 | ㈱飯塚井筒屋が飯塚店を開店 | ||
昭和40年12月 | ㈱博多ステーションビルと共同出資し㈱博多井筒屋(現・連結子会社)設立 | ||
昭和41年5月 | ㈱博多井筒屋が博多店を開店 | ||
昭和43年2月 | ㈱久留米井筒屋(現・連結子会社)の過半数の株式を取得 | ||
昭和44年10月 | ㈱宇部ちまきやと共同出資し㈱井筒屋ちまきやを設立(昭和47年4月、商号を㈱宇部井筒屋(現・連結子会社)に変更) | ||
昭和44年12月 | ㈱井筒屋ちまきやが井筒屋ちまきや(現 宇部店)を開店 | ||
昭和47年10月 | 本店増築完成 | ||
昭和48年7月 | 東京証券取引所第一部に指定替え | ||
昭和53年10月 | 中津店を開店 | ||
昭和54年4月 | 八幡店井筒屋ブックセンター(現 ㈱ブックセンタークエスト黒崎店)開店 | ||
平成5年4月 | 八幡店を黒崎店に名称変更 | ||
平成6年9月 | 書籍・文具等の販売部門を分離独立するため㈱井筒屋ブックセンターを設立(平成12年3月、商号を㈱ブックセンタークエストに変更) | ||
平成6年11月 | 店舗併設駐車場ビル「クエスト」を開設 ブックセンタークエスト(現 ㈱ブックセンタークエスト小倉店)を開店 | ||
平成10年9月 | 本店新館を開設 | ||
平成12年7月 | 本店を増築して小倉リバーサイド・チャイナを開設 | ||
平成12年12月 | 井筒屋中津店を閉店 | ||
平成13年10月 | 黒崎店を現在地に移転 | ||
平成14年2月 | ㈱井筒屋ファッションサービスおよび㈱井筒屋外商サービス(ともに現・連結子会社)を設立 | ||
平成14年3月 | 井筒屋アネックス―1を開店 | ||
平成17年2月 | ㈱ブックセンタークエストの過半数の株式を譲渡 | ||
平成19年3月 平成19年11月 | ㈱博多井筒屋が博多店を閉店 博多リバレンに「サロン・ド・井筒屋」開業 |
平成20年3月 ㈱小倉伊勢丹の全株式を取得し完全子会社化 平成20年4月 ㈱小倉伊勢丹をコレット井筒屋に商号変更しコレット井筒屋を開店 平成20年10月 ㈱山口井筒屋が山口井筒屋を開店(ちまきや跡地) 平成21年2月 ㈱久留米井筒屋が久留米店を閉店 平成21年6月 博多リバレンの「サロン・ド・井筒屋」を閉店 |
[ 2010年1月14日 ]
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