セイコーH/創業家内でクーデター勃発② 1度あることは2度ある。
<銀座の不動産売却>一族間のやり取り
銀座4丁目はセイコー社の発祥の地、今だ本店登記は銀座4丁目角の和光堂ビルに所在させているほどである。銀座4丁目の同社や一族企業が所有するビルには、一族会社や和光の各ショップがあり、賃貸ビルとして運営されている。
不動産売買は、同社が所有する銀座の所有ビルの評価損が、3月期56億円発生することから、それを穴埋めのため、3月31日付けで三光起業と不動産の等価交換を行い、簿価との差額79億円を譲渡益計上するとして行われた。セイコーの本社ビル(和光ビル、銀座4丁目5番11号)横と思われる東京都中央区銀座四丁目4番4、銀座四丁目4番12、銀座四丁目4番6の計889.37㎡の土地(いずれも建物付)ほかを三光起業に売却、その交換として白金の豪邸跡地(16,815.37㎡、港区白金二丁目498番)ほかを三光起業から取得している。こうした動きも三光起業が、創業家服部一族の資産管理会社(青山企業・京橋起業も)であり、一族内で評価損対策を処理したといえる。そのため一族内で責任問題が発生、その矛先が本家筋(真二新社長)により禮次郎会長に向けられたものと思われる。
<気になる株式移動>
そうした動きの中で、服部禮次郎氏は昨年10月、それまでの5.3%から10.8%(186,565千株)の持株比率に引き上げた。またセイコーインスツルを本体の事業会社にしたことから服部純一氏が5.8%との大株主に躍り出た。(禮次郎氏の持株移動は、何故か2010年3月31日に報告されている)
<セイコーホールディングスの株主構成>2009.9.30
氏名又は名称 | 所有株式数/千株 | 割合(%) | その後の移動 |
三光起業 | 16,678 | 14.3 | |
第一生命保険相互会社 | 9,000 | 7.7 | |
服部禮次郎 | 6,134 | 5.3 | 09年10月1日付10.8%へ |
服部真二 | 6,101 | 5.2 | |
セイコーインスツル | 6,016 | 5.2 | 09年10月1日付3.71% |
みずほコーポレート銀行 | 4,419 | 3.8 | |
日本マスタートラスト信託口 | 2,781 | 2.4 | |
日本トラスティ・サービス信託口 | 2,644 | 2.3 | |
セイコーエプソン | 1,644 | 1.4 | |
東京海上日動火災保険 | 1,602 | 1.4 | |
京橋起業 | 09年10月1日付5.71% | ||
服部純一 | 09年10月1日付5.8% | ||
計 | 57,020 | 49.0 |
故服部謙太郎・元服部セイコー社長の長男、純一氏(スタッフォード大MBA卒)は、1996年セイコーインスツルの社長となった。その後会長兼社長代行となっていたが、中国工場移転問題で2006年の同社取締役会において解任(直前に辞任)させられた。純一氏と真二氏は兄弟であり、これまで本体副社長の真二氏をコントロールしていたと見られていた禮次郎氏に対して、兄弟が巻き返しをはかったとも見られる。
セイコー創業家の服部一族の問題は、1988年故服部謙太郎氏と従兄弟のエプソン社長であった服部一郎氏が相次ぎ亡くなったことにある。一族間の調整役がいなくなったことにより、謙太郎氏の弟である禮次郎氏がこれまで院政を敷き続けてきた。しかし、オーナー家の長男純一氏も、学や海外人脈はあるものの、セイコーグループを統率するには、セイコーインスツルの社長を解任されたようにあまりにも独善的であるとされ、弟の真二氏がセイコー本体の社長となった今、どう動くのか注目されるところである。
[ 2010年5月 7日 ]
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