アイコン カントリーリスク/鹿島建設を悩ますアルジェリア高速道の未払金問題

非上場の竹中工務店を除くスーパーゼネコン4社の第3四半期の決算が出揃った。各社売上高が落ち込む中、原価管理の徹底や不採算受注回避により営業利益を大幅に増加させている。鹿島が前年同期比2.4倍の366億円、大成が11.2%増の285億円、清水が40.5%増の187億円となっている。一方、大林組は売上減が営業利益に影響して、▲43.9%減の75億円と唯一減益となっている。

<アルジェリア高速道建設・カントリーリスク>
アルジェリアの隣国チュニジアでは、先般フェイスブックによるジャスミン革命が成功した。その勢いはエジプトに波及して、ムバラク大統領は失墜。アルジェリアのアブデルアジズ・ブーテフリカ大統領も1999年4月からFLN(民族解放戦線)をバックに君臨し続けている。政治腐敗からデモが散発的ではあるが発生しており、今後の成り行き次第では不透明な政治情勢となる可能性も秘める。
そうしたアルジェリアであるが、鹿島を筆頭とするゼネコンJVが、同国の高速道路を受注金額約5,400億円、工期2006年10月から40ヶ月の予定で受注していた。昨年2月完成予定であったが、諸般の事情でまで7割程度、現在も工事中である。
しかし、これまでに1,000億円以上の未払金が生じているとされる。完成が計画より遅れており、その工事の遅れにより完成している部分の代金を支払拒絶しているというのである。

<アルジェ外相がカンカン>
アルジェリア・メデルチ外相は、工期が大幅にずれ込んでおり、日本側の対応に不満を表明、鹿島JVに損失が出る可能性が出てきている。
日本政府はこの問題で、異例の仲介に乗り出し昨年12月13日、前原外相がメデルチ外相と会談。政府間問題として扱うとの認識で一致したとされる。しかし、日本の弱腰外交の危さは、これまでに幾度となく裏切られており、決して楽観視できない。 

鹿島では、前期決算において当工事の完成工事未収入金として466億円計上している(別途ドバイ道路交通局210億円も計上)。しかし、当工事のJV企業である大成建設・西松建設・ハザマ・伊藤忠商事には、こうした完成工事未収入金は計上されていない。
工事を止めればこれまでの未収入金が入ってこない可能性があり、また工事を継続すれば、まだ1,000億円以上の建設工事代金が新たに必要となる。政府間交渉で、ある程度は取れると思うが、同国がネット革命で政変でも起きれば、現在工事をしている分の支払さえも受けられなくなる可能性がある。
こうした問題は、JV頭の鹿島の問題にとどまらず、大成や西松・ハザマにも波及するものと思われる。

<工事が遅れている事由>
①アルジェリア側の設計問題
②資材調達・通関に必要以上に時間がかかる
③脆い地質(粘土岩、マール(泥灰岩))
④悪天候
⑤テロ対策により爆薬の利用制限
しかし、中国のJVが請負った中工区と西工区は予定通り2009年12月完成済み。

<工事概要>
企業者: アルジェリア公共事業省高速道路公団 
資金源: アルジェリア政府自己資金
工事金額:5,400億円
工 期: 2006年10月~2010年2月(約40ヶ月)
契約形態:工事請負及び一部設計施工
施工者: 鹿島・大成・西松・ハザマ・伊藤忠共同企業体
工事内容:チュニジア国境~ボルジブ・アレリジ399km(東工区)
片側3車線上下6車線高速道路、インターチェンジ22ヶ所
トンネル14本(計17.3km)、本線橋梁55ヶ所
横断橋梁87ヶ所、アンダーパス58ヶ所
切土量約2,000万㎥、盛土量約2,700万㎥
工事期間地図:
アルジェリア
以上、2006年9月20日鹿島リリース

ブーテフリカ大統領 
ブーテフリカ大統領  
民族解放戦線FLNの候補として大統領に石油資源は政治家・軍・官僚などで独占、貧富の差が顕著で国民の不満は大きい。

 

アルジェリア

[ 2011年2月15日 ]
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