アイコン ジャック・ウェルチ/JPモルガン ダイモン氏について

現在、誰からも羨ましく思われない人物を一人挙げるとすれば、それは米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)だろう。

JPモルガンが最近出したトレーディング損失をめぐり、ダイモン氏はこの1週間、議会証言を求められ、同行が商品先物取引委員会(CFTC)や連邦 捜査局(FBI)、証券取引委員会(SEC)など、あらゆる連邦機関によって調査されることを知った。彼はまた、過熱するメディア取材に対しても長い時間 を割いて対応し、自らと同行幹部について「愚か」で「不注意」で、「完全に間違っていた」と謝罪した。

要するに、ジェイミー・ダイモンは、これまで乗り続け、金融危機も切り抜けてきた大きな白馬から跳ね飛ばされたということだ。

JPモルガンの20億ドルを超える損失の発生過程で、違法行為は今のところ何もなかったようだ。公的資金の悪用はなく、調査は規制に則って行われ、「他人の不幸を喜ぶ」意味合いを含んだ政治的パフォーマンスのようにも見える。少なくともこれまでは、同行の長期的な株主価値を大きく損なうような行為はなかった。ただ単に、JPモルガンは間違ったということだけだ。

このようなことは、場所がウォール街であれ、工場であれ、いつだって起こる。仕事は大変で、速いペースで進み、複雑だ。人々は過ちを犯す。数年も勤務すれば、誰だって同じだ。
ということは、JPモルガンの巨額損失は結局のところ、同行についての問題ではない。少なくとも、同行だけの問題ではない。これは経営者が経験する最も厳しい試練の一つ、「大規模で厄介な失敗」ということだ。ありがたいことに、これほど世間の注目を集める失態は非常に珍しい。しかし、われわれが達しようとしている基本的原理は同じだ。キャリアを積む過程で評価されるのは、ミスを何回犯したかではない。ミスは誰でも起こすからだ。評価の対象となるのは、どのようにしてそこから回復したかだ。

組織のどのレベルにおいても、リーダーがミスを犯した場合に起こり得ることは2つある。自分自身も「ミス」と定義されてしまうか、もしくはミスによって奮起するかだ。

選ぶべき選択肢は明らかだが、残念なことに前者のケースが圧倒的に多く、犯したミスがリーダーのアイデンティティーになってしまう。罪の意識または自信喪失、もしくはその両方にさいなまれ、リーダーはミスを招いたすべての原因について「渦巻き」のように考えをめぐらし続ける。再発防止のために会議を重ね、影響を受けた可能性のある全員と協議し、いつまでもミスの発生を嘆いている。
もちろん、これら全てが悪いわけではない。特に「事後評価」など、必要不可欠なこともある。二度と同じミスを犯したくはないだろう。でもその「渦巻き」はいつでもそばにあり、向かう方向はただ一つ。下降するのみだ。

だからこそ、ミス発生後は自省や自責から素早く持ち直し、部下の集中力を高め、活力を回復させることが非常に大事だ。「過去は終わった」と部下に繰り返し伝える必要がある。「今重要なのは将来だ」と述べ、今後の計画を具体的に示すことだ。エキサイティングかつ、詳細にわたる説明をすることが大切だ。そしてその計画は、現実味がなくてはならない。

当然人間であれば、ミスを起こしてしまった後で、部下を鼓舞するだけの心の準備はできていないかもしれない。上層部からの懐疑的な視線を不快に感じているかもしれない。プレッシャーもさらに厳しくなっているだろう。部下を率いる能力が自分にあるのかと疑問に思うかもしれない。部下の側も追い詰められていると感じ、一気に不安を感じているかもしれない。そして、「渦巻き」はすぐそこにある。しかし、そこに入って行ってはいけない。ミスの原因を分析し、そこから教訓を学び、混乱を整理することだ。そしてその上で、ミスを乗り越え、将来に向き直るべきだ。リーダーは将来に向かっているべきであり、部下たちもそうあるべきだ。

ジェイミー・ダイモン氏は、これまで長期にわたり成功を収めてきた人物だ。すぐにまた通常の業務に復帰するだろう。そして数年も経てば、JPモルガンの巨額損失を覚えている人はそれほど多くないと、わたしたちは断言できる。

しかし、ダイモン氏の下で働く世界中にいる25万人の行員たちは、彼がほこりを払って再び馬にまたがり、乗り進んでいくことを知るだろう。以前に増して強力で、はるかに賢明になって。
以上、ロイターが経営者のためになる記事を掲載した。

 パナ社にも共通するような・・・。
 

[ 2012年5月29日 ]
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