政府が決定した防衛装備移転三原則と運用指針の改定による輸出ルールの大幅緩和に対し、経済界からは、長らく危機的状況にあった防衛生産・技術基盤の空洞化に歯止めをかける「歴史的転換点」として歓迎する声が広がっている。
これまで、国内の防衛関連事業は自衛隊という事実上の単一市場に依存してきた。低い利益率と先細りする需要を背景に、撤退を余儀なくされる企業が相次いでいたのが実情だ。とりわけ、護衛艦や戦闘機などの製造には数千社に及ぶ裾野の広いサプライチェーンが存在する。造船や重工業が集積する地域の中小・零細企業にとって、今回の緩和は、途絶の危機にあった高度な加工技術の伝承と雇用維持に向けた「一筋の光明」となる。
今回の改定で殺傷能力を持つ完成品の輸出が原則容認され、さらに海外の防衛産業への出資やM&A(合併・買収)も解禁された。これは単なる販路拡大にとどまらない。日本の優れた素材技術や部品メーカーが、米国やオーストラリアなど「同志国」が形成する巨大なグローバル・サプライチェーンに直接組み込まれることを意味する。経済安全保障の観点からも、同盟国との供給網の連結性を高めることは、我が国の産業競争力を底上げする強力な推進力となる。
もっとも、防衛産業が直ちに「成長産業」へと変貌するわけではない。長年、厳しい輸出規制の下にあった日本企業には、国際市場で海外の巨大軍需メーカーと渡り合うだけの営業ノウハウや価格競争力が決定的に不足している。
また、M&Aの解禁は、逆に日本の機微技術を持つ優良な下請け企業が海外資本に買収される「技術流出」のリスクと隣り合わせでもある。政府には、ルールを緩和して終わるのではなく、官民一体となった輸出支援体制の構築と、技術流出を防ぐ強固な防壁の整備が急務となる。国家の安全保障と地域の経済成長をいかに両立させるか、官民のしたたかな戦略が問われる。