世界的に途轍もない人的・経済的被害をもたらしている新型コロナウイルス=VOVID-19。
その後の調査で、世界で初めての感染が判明したのは12月6日に武漢市の病院に入院した患者だったことが判明している。それから1年経過、新コロナウイルスは全世界に感染者をもたらし、12月14日現在72百万人が感染、死亡者は162万人に達し、現在感染者でも20百万人、重症感染者数も10万人がカウントされている。
そのウイルスに対する特性も一つ二つと明らかになってきており、対策薬の開発が遅れる中、治療方法も改善され、致死率は減少傾向にある。
そして、現在のところワクチン開発にも、核酸のmRNAによりワクチン開発を目指した米ファイザー社&独ビオンテックおよび米モデルナ社&米国立アレルギー感染症研究所の2種類のワクチンが開発に成功している。
ほかではmRNA型やほかの多くの方法でのワクチン開発も行われているが、まだ承認を受けたワクチンはない。
だが、新型コロナウイルスの「生存能力」に対する秘密はまだ完全に明らかになっていない。
当ウイルスは、プラスチック上では1週間までも生きることが明らかになったが、紙の上では数時間過ぎれば不活性化して感染力をなくすと報告されている。
紙や布のような多孔性表面より、なめらかな非多孔性表面でさらに長く生存するという。
このような違いはさまざまな実験を通じ繰り返し確認されたが、理由はまだ解明されていない。最近ウイルスの生存時間を説明するいくつかの仮説が提示され注目されている。
<表面が水分吸収すれば長く生きられない>
仏トゥールーズ大学獣医学科のドニオ・コルフェ名誉教授は12月4日、医学的仮説ジャーナルに寄稿した論文で、「多孔性表面では、ウイルスがすぐに乾燥し長く生きられないとみられる」という仮説を提示した。
これと違いポリプロピレンやプラスチック、ガラスなどのように水分が吸収されない防水表面では水滴が残っておりウイルスを乾燥から守るという。
コルフェ教授は「ウイルスの中に水分はないと考えるが、インフルエンザウイルスの場合、乾燥重量の150~230%の水が入っている。コロナウイルスやインフルエンザウイルスの場合、外膜で包まれているが、細胞にあった水が含まれているとみられる」と指摘した。
細胞からウイルスが離れて行く時に、細胞膜とともに細胞質の水分も共に持っていくという。
コルフェ教授は「ウイルスが構造的に安定するには外膜の両側に水分がなければならない。多孔性表面より非多孔性表面はウイルスの水分が奪われないため、ウイルスの生存に有利だ」と説明している。
コルフェ教授は「相対湿度が20%以下か、相対湿度が80%以上の条件では新型コロナウイルス感染はあまり起こらない。
乾燥した条件で感染が起きないのは、多孔性表面が水分を吸収するという仮説と合致する」と主張した。
しかし、彼は相対湿度80%以上の条件でウイルス感染が減少する理由に対しては言及していない。
これと関連し一部では、人が咳やクシャミ、対話の際に排出された唾液の飛沫が高い湿度では速く蒸発しないことが原因と指摘している。
空間湿度が高ければ、ウイルスの水分が維持され、重さのため遠くまで広がらずに落ち、このためウイルス感染があまり起こらないという。
多孔質ではない銅の表面でウイルスが早く死滅することと関連しコルフェ教授は「銅は熱伝導度が高くて水分蒸発が速く、銅の表面で活性酸素が生成されウイルスを不活性化するためだろう」と説明している。
コルフェ教授は「今回の仮説が具体的に確認されれば、どんな表面でウイルスがどれくらい持ちこたえられるか予測が可能になり、それにより新たな多孔性物体を設計してウイルス生存を抑制することもできるだろう」と強調している。
<薄い液体フィルムがウイルスを保護>
インドのムンバイにあるインド技術研究所の研究チームは11月24日、流体物理学誌に発表した論文で、唾液の飛沫が蒸発してもナノメートル(1ナノメートル=10億分の1メートル)水準の薄い液体フィルムが表面に吸着したウイルスを保護すると発表した。
呼吸器から排出される唾液の飛沫の水分の99.9%以上は数分で蒸発してしまうが、残った液体フィルムはとてもゆっくり蒸発するためウイルスが数時間あるいは数日間生存できるという。
研究チームは「液体フィルムでも蒸発が起きるが、表面によって違いがある。モデル分析の結果、銅で最も速くポリプロピレンで最も遅いことがわかった」と明らかにした。
ボール紙や織物のような多孔性表面の場合の分析はしていないが、多孔性表面では乾燥がさらに速くなるだろうとインド研究チームは予想している。
<接触感染リスク>
一方、11月20日に英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンとスイスのバーゼル大学などの研究チームは論文事前公開サイト「medRxiv」に発表した論文では、
「地域社会の新型コロナウイルス感染で表面汚染を通じた感染が占める割合は0.2~5%とそれほど高くない」と指摘した。
汚染された表面に触れた手を通じて感染するより、空気中に漂うウイルスを吸入して感染するリスクがはるかに大きいという。
しかし、研究チームは横断歩道の信号押しボタンや公共交通のボタン、キャッシュディスペンサー(ATM)、階段の手すりなどに頻繁に触れるほど感染リスクが高まるだけに、手洗いをしっかり行い手指の消毒剤を広く使う既存の戦略は必要だと付け加えた。
研究チームはまた、「マスクは物体表面汚染による感染を抑制するのにも役立つ」と説明した。
飛沫が生成され広がるのを防ぐため、手と物体表面の汚染を減らすことができ、手と口の接触頻度を減らすためだとしている。
以上、報道参考
目新しい発表ではないが、湿度は70%前後あれば、飛まつは遠くへ飛ばないとされるが、40%を切るとかなり遠くへ飛び、さらに空中に存在する時間も長くなる。これは日本のスーパーコンピュータ富岳でもシミュレーションされている。
換気も必要だとされる。当然、空中にあるウイルスを拡散させ、外に逃がす役割を担わせるだろうが、冬季は外気が乾燥しており、一方で室内では湿度調整も必要となる。
当論文などでは接触感染度合いはかなり低いとしている。しかし、クルーズ船のような一定空間の中ではまったく異なってくる。トング、ドアノブ、手摺、コーティングされた冊子表面などに付着したウイルスでの接触感染はかなりの頻度で発生したという報告がなされている。
一定時間、同じ空間に在する場合、いろいろなモノにコロナウイルスが付着していた場合、感染リスクはそれだけ高くなることだけは間違いないことだ。手洗い・消毒が必要。
コルフェ教授の仮説では、空間湿度が20%~80%の場合、ウイルス自らが持つ水分が蒸発しにくく不活性化せず、飛まつによる感染リスクを持つという。
以前、米国の教授は気温が上がり、湿度が上がれば、感染リスクは低くなると発表していた。ただ、中南米の年中高温多湿地帯での大感染についての説明には至っていなかった。
湿度が高ければ、空気中に水分の粒子がその分多く漂っており、くしゃみや会話での超微細飛まつが、遠くへ飛ばないことは理解できる。
アルコール消毒だが、ウイルス細胞の水分にアルコールが融和し、消毒とともに気化し、ウイルスの水分がなくなり、不活性化させることによるものと推量されている。
そうしたことからか、亡くなった人の遺体は可能な限り即日焼却されている。
これまでに30万人の感染死者を出している米国では、焼却場が間に合わず、まだ第一波感染拡大期の600遺体が冷凍車で保存されているという(11月段階)。しかし、ウイルスは冷凍では死滅せず、氷結状態から溶融すると共にウイルスは活性化するとされている。こうした冷凍遺体は冷凍管理を怠れば感染源になるおそれもある。