
大村市新庁舎(庁舎棟)建設工事を、大林組・西海建設・高瀬建設JVが予想通り落札した。
入札前から業界内で同JVの名前が取り沙汰され、しかも落札決定日は、大林組が広島市から指名停止措置を受けていた令和8年8月7日だった。
本紙は、これらの事情だけで不正入札だったと断定しているのではない。
むしろ、疑問があるからこそ、行政と議会に対して、その審査過程と判断根拠を明らかにするよう求めているのである。
ところが、大村市が「適正に執行した」と説明し、市議会がその説明を聞いただけで契約議案を可決するのであれば、議会審議は単なる通過儀礼に成り下がる。
市議会は、執行部の説明をありがたく拝聴するために存在するのではない。
市民に代わって資料を求め、事実を確認し、行政の判断を検証するために存在するはずだ。

執行部は、おそらくこう答えるだろう。
「大村市の入札参加資格に抵触するものではない」
「広島市の指名停止は、大村市の入札に直接影響しない」
「所定の手続に従い、適正に審査した」
しかし、それだけでは何の説明にもなっていない。
重要なのは結論ではなく、その結論に至った過程である。
大村市は、広島市による指名停止措置をいつ、どの部署が把握したのか。
大林組及び社員に対する労働安全衛生法違反の刑事処分について、どのような資料を確認したのか。
その事実を入札参加資格の審査において、どのように評価したのか。
契約担当、新庁舎建設担当、安全管理担当及び法務担当の間で、どのような協議が行われたのか。
最終的に入札参加を認めた責任者は誰なのか。
これらの経緯が記録された文書があるなら、議会に提出すればよい。
本当に適正な審査が行われたのであれば、隠す理由などないはずだ。
市議会が採決前に求めるべき資料
市議会は、少なくとも次の資料を執行部に提出させるべきである。
一、入札参加資格確認申請書及び審査記録
二、大林組に対する他自治体の指名停止措置に関する調査資料
三、広島市の指名停止措置を把握した日時及び庁内報告記録
四、刑事処分の内容に関する内部報告書
五、大林組JVの入札参加を認めた法的・制度的根拠
六、契約、建築、安全管理及び法務各部門の協議記録
七、入札参加資格を認めた際の決裁文書
八、JV各社の出資比率、役割分担及び責任体制に関する書類
九、施工管理、安全管理及び法令順守体制に関する審査資料
十、設計変更、追加工事及び資材価格上昇に伴う増額リスクの検討資料
こうした資料を一切確認せず、議案書と執行部の答弁だけで賛成するのであれば、それは「審査」ではない。
見ない、聞かない、調べない。
そのうえで手だけを挙げる。
それでは市議会ではなく、執行部の追認機関である。
市議には資料要求権も質問する機会もある
市議会議員は、一般市民よりも情報を得やすい立場にある。
委員会で質問することもできる。
執行部に資料を求めることもできる。
疑問が解消されなければ、継続審査を主張することも、採決に反対することもできる。
それほどの権限を与えられながら、「知らなかった」「説明を信じた」「会派で決めた」では済まされない。
市議会議員に求められているのは、執行部の説明を市民へ横流しすることではない。
その説明に矛盾や不足がないかを、自らの責任で検証することである。
権限を使わず、調査もしないのであれば、議員報酬は何のために支払われているのか。
市民は、そこまで厳しく問うべきである。
採決を急ぐ理由はどこにあるのか
疑問が解消されていないのであれば、採決を急ぐ必要はない。
資料を提出させ、内容を確認し、必要であれば関係職員に説明を求める。
それでも不明な点が残るなら、継続審査にすればよい。
巨額の税金を投入する新庁舎建設である。
数日、あるいは数週間をかけて慎重に調査することより、疑問を残したまま契約を可決することの方が、はるかに大きな危険を伴う。
にもかかわらず、もし執行部や一部会派が採決を急がせようとするのであれば、市民は問わなければならない。
なぜ、それほど急ぐのか。
何を確認されたくないのか。
契約締結後に既成事実を積み上げ、市民が後戻りできない状態にするつもりではないのか。
疑念を晴らす最も簡単な方法は、採決を急ぐことではない。
資料を公開し、正面から説明することである。
記名採決で議員一人一人の責任を明らかにせよ
今回の契約議案については、誰が賛成し、誰が反対したのか、市民が明確に確認できる方法で採決すべきである。
無記名や曖昧な形で、議員個人の責任を隠してはならない。
さらに、賛成する議員は、自ら確認した資料と賛成理由を市民の前に示すべきだ。
「執行部が適正だと言ったから」
「会派で賛成と決めたから」
「委員会で可決されたから」
そんな回答は、判断根拠ではない。
自分は何を調べたのか。
どの資料を読んだのか。
どの問題を質問したのか。
なぜ安全性、公平性及び適法性に問題がないと判断したのか。
それを説明できない賛成票は、責任ある議決ではない。
ただの白紙委任である。
入札前から落札JVの名前が取り沙汰されていたこと、指名停止期間中に落札者が決定されたこと、そして審査過程が市民から見えないことが、疑念を招いているのである。
JC-net・日刊セイケイ編集長 中山洋次