
それでも大村市に突きつけられた重い警告
では、八代市の問題は大村市と無関係なのか。
そうではない。

両者を結びつけるのは施工会社ではなく、「大地震後も行政機能を維持する防災拠点を誰に、どのような審査で造らせるのか」という発注者責任である。
大村市の現庁舎は老朽化し、震度6強以上の地震で倒壊するおそれがあるとして建て替えが進められている。
https://www.city.hiroshima.lg.jp/business/nyusatsu/1006079/1049852/1051636.html
つまり新庁舎は、見栄えのよい市役所を造る事業ではない。
大地震や豪雨災害が発生した際に、市長や職員が集まり、救援、避難、給水、道路復旧、被害情報の集約を指揮する「市民の命の司令塔」である。
その施工者を選ぶ審査で、
「入札参加資格を満たしているから問題ない」
「指名停止期間が終わっているから問題ない」
「大手ゼネコンだから安心だ」
という形式論だけで済ませてよいはずがない。
指名停止明けなら『帳消し』なのか。
指名停止は、一定期間を過ぎれば形式上終了する。
しかし、処分期間が終わったからといって、そこで露呈した企業体質や安全管理上の問題まで自動的に消えるわけではない。
特に今回の大林組の問題は、現場事故そのものではなく、労働基準監督署への説明の信頼性に関わる。
ならば大村市は、少なくとも次の点を確認すべきである。
1. 大林組が受けた指名停止措置の全件と、その理由
2. 労災に関して事実と異なる説明が行われた経緯
3. 本社、支店、現場間の報告体制をどう改善したのか
4. 大村市新庁舎に配置予定の現場責任者と安全管理責任者
5. 免震装置の製造者、型式、認定、採用実績
6. 長周期地震動、直下型地震、繰り返し地震への検証内容
7. 大地震後の即時点検、継続使用、交換・復旧計画
8. 重大事故や施工不良が判明した場合の市民への情報公開方法
9. JV構成員が大林組の施工・安全管理をどこまで相互監視できるのか
10. 指名停止歴や重大な法令違反を落札者決定でどう評価したのか
これらを確認せず、「価格と実績」だけで落札者を決めるなら、八代市の事例から何も学んでいないことになる。
JC-net・日刊セイケイ編集長・中山洋次