かつて猫の殺処分数で全国ワーストを続けていた長崎市で、状況が大きく変わっている。
長崎市の資料によると、2003年度(平成15年度)に動物愛護管理センターへ引き取られた猫は4,085頭。このうち、市の統計で「殺処分数(自然死を含む)」とされた猫は4,047頭に上った。
地元報道によると、その後も長崎市は2009年度から2017年度まで9年連続で猫の殺処分数が全国ワースト1位となり、その後もしばらく全国で多い状態が続いていた。
ところが2024年度(令和6年度)、長崎市は猫について「自然死等を除く殺処分ゼロ」を達成した。
「殺処分ゼロ」の意味に注意
長崎市がいう「殺処分ゼロ」は、センター収容後に病気やけがなどで死亡した「自然死等」を除いた殺処分がゼロという意味です。2024年度には30頭の死亡が記録されていますが、すべて自然死等に分類され、市の都合で行われた殺処分は0頭となっています。
4,047頭からゼロへ 猫の殺処分は大幅減
長崎市の猫の引き取り・殺処分数は、約20年間で大幅に減少した。
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年度 |
猫の引取り数
(傷病含む) |
殺処分数
(自然死含む) |
主な動き |
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2003年度 |
4,085頭 |
4,047頭 |
4千頭を超える水準 |
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2013年度 |
2,095頭 |
1,992頭 |
翌年度から「まちねこ不妊化推進事業」 |
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2014年度 |
1,533頭 |
1,409頭 |
まちねこ不妊化推進事業開始 |
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2018年度 |
766頭 |
656頭 |
減少傾向が続く |
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2022年度 |
270頭 |
201頭 |
条例による適正飼養・餌やり対策も進む |
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2023年度 |
106頭 |
73頭 |
初めて100頭を下回る |
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2024年度 |
94頭 |
30頭 |
30頭はすべて自然死等。自然死等以外の殺処分は0頭 |
※長崎市資料による。「殺処分数」は収容後の自然死等を含む市統計上の数値。2024年度の30頭はすべて自然死等で、自然死等以外の殺処分は0頭。
なぜ長崎市では猫が多かったのか
長崎市は斜面地や細い路地が多く、街中で猫を見かける機会も多い。一方、飼い主のいない猫への餌やりや繁殖に伴い、ふん尿や鳴き声などをめぐる生活環境上の問題も長年続いてきた。
長崎市も現在、野良猫への餌やりに起因して猫が増えたり、ふん尿被害を訴える相談が後を絶たないとしている。
猫を収容して処分するだけでは、次々に子猫が生まれれば問題は解決しない。そこで長崎市が進めてきたのが、猫が増える「入口」を抑える対策と、収容された猫を新しい飼い主へつなぐ「出口」の対策だった。
転機となった「まちねこ不妊化推進事業」
長崎市は2014年度から「まちねこ不妊化推進事業」を開始した。
飼い主のいない猫に不妊・去勢手術を行い、元の生息場所へ戻し、地域で餌やりやトイレ、清掃などを管理しながら、一代限りの命を見守る取り組みだ。
市の最新資料では、同事業による不妊・去勢手術への助成は2024年度に673頭、2025年度は2026年1月末時点の見込みで813頭まで拡大している。
2026年度も事業は継続され、助成上限はメス1頭1万8,000円、オス1頭8,000円。申請者の自己負担は1頭2,000円となっている。
2003年度に4千頭を超えていた猫の殺処分数が長期的に減少していることからも、繁殖そのものを抑える対策が重要な柱となっていることが分かる。
無責任な餌やりにもルール
長崎市は2022年7月、「長崎市動物の愛護及び管理に関する条例」を施行した。
条例では、飼い主のいない動物への餌やりによって周辺の生活環境に支障を生じさせてはならないと規定。野良猫への餌やりそのものを禁止するものではないが、決められた餌やり方法や清掃などのルールを守ることを求めている。
また、ルールを守って猫の世話をしている個人や団体には「届出済証」を貸与する制度も設けている。
単に「餌を与える人」と「迷惑を受ける住民」を対立させるのではなく、不妊化と適切な管理を組み合わせて地域で猫を減らしていく考え方だ。
最後の壁だった離乳前の子猫
対策が進む中でも、特に命を救うことが難しかったのが、自力で餌を食べることのできない離乳前の子猫だった。
こうした子猫は頻繁な授乳や排せつの介助が必要となるため、行政施設だけですべてを育てることには限界がある。
そこで長崎市は2024年度から「ミルクボランティア」の取り組みを開始した。
センターが保護した離乳前の子猫を市民ボランティアが一時的に自宅などで預かり、自力でドライフードを食べられるようになるまで授乳や排せつの介助などを行う。
市はミルクや離乳食、哺乳瓶、トイレシートなどを支給・貸与するほか、一定の条件で動物病院での検査費や治療費も負担している。
ミルクボランティア開始後、殺処分ゼロに
長崎市は2026年6月に更新した案内で、「ミルクボランティアを開始した令和6年度以降は猫の殺処分はゼロ」と説明している。
収容した猫は「処分」から「譲渡」へ
長崎市動物愛護管理センターでは、保護した犬や猫について新しい飼い主への譲渡も進めている。
市長は2025年3月の記者会見で、猫の殺処分ゼロを実現できた要因として、地域猫活動、センターに収容した動物の譲渡、ミルクボランティア、動物愛護ボランティアや地域住民の協力などを挙げた。
つまり長崎市の変化は、一つの制度だけでもたらされたものではない。
長崎市が進めてきた対策
野良猫の繁殖を不妊・去勢手術で抑える
↓
餌やりやトイレを地域で適切に管理する
↓
センターへの収容を減らす
↓
収容された猫はできる限り譲渡する
↓
離乳前の子猫はミルクボランティアが育てる
↓
自然死等を除く殺処分ゼロへ
殺処分ゼロでも猫の問題は終わっていない
もっとも、殺処分がゼロになったからといって、長崎市の猫をめぐる問題がなくなったわけではない。
市内では現在も野良猫によるふん尿や鳴き声などをめぐる相談があり、捨て猫や負傷した猫がセンターへ収容されるケースもある。
2024年度にセンターで死亡した猫30頭も、すべて自然死等だった。殺処分を行わなくても、重い病気やけが、衰弱した状態で収容され、救うことのできない命は残っている。
4千頭を超える猫が殺処分されていた時代から約20年。長崎市は「収容して処分する」対策から、繁殖を抑え、地域で管理し、保護した猫を譲渡へつなげる仕組みへと大きく方向転換してきた。
全国ワーストだった街が殺処分ゼロにまで数字を減らした一方、今後はこの状態を継続しながら、そもそも保護を必要とする猫そのものをどこまで減らせるかが課題となる。
9月20日に「ながさき動物愛護フェスタ」 保護猫の譲渡会も
こうした中、長崎市では動物愛護週間に合わせ、2026年9月20日に「第49回ながさき動物愛護フェスタ」が開催される。
第49回ながさき動物愛護フェスタ
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開催日 |
2026年9月20日(日) |
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時間 |
午前11時~午後2時 |
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会場 |
長崎県庁エントランスホール(長崎市尾上町3-1) |
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主催 |
長崎県、長崎市、長崎県獣医師会長崎支部 |
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予定 |
保護犬とのふれあい、保護猫の譲渡会など |
参加団体には、長崎ライフ・オブ・アニマル、長崎ねこの会、長崎さくら猫の会、長崎市社会福祉協議会、nfs catsなどが予定されている。
かつて猫の殺処分数全国ワーストだった長崎市。数字をゼロにした先で、人と動物が地域の中でどう共生していくのか。20年間続いてきた取り組みは、次の段階に入っている。