長崎県の犬猫引取り591頭 県南・壱岐・県央に約9割集中、壱岐では子犬151頭
長崎県内で行政に引き取られる犬や猫は、地域によって大きな差がある。
長崎市と佐世保市を除く県立8保健所の令和6年度(2024年度)の事業実績をJC-NETが集計したところ、犬猫の引取りは計591頭だった。内訳は犬408頭、猫183頭。このうち県南、壱岐、県央の3保健所だけで527頭と、全体の約89%を占めた。
ただし、この591頭をそのまま「飼育放棄された犬猫」とみなすことはできない。行政の引取りには所有者が分からない犬猫なども含まれるためだ。現在公表されている資料から、591頭のうち何頭が飼い主による飼育放棄だったのかを一律に算出することはできない。
県南・壱岐・県央の3保健所に約9割
県立8保健所の令和6年度事業実績を比較すると、引取り頭数が最も多かったのは県南保健所の224頭。次いで壱岐保健所161頭、県央保健所142頭だった。
| 保健所 | 犬 | 猫 | 計 |
|---|---|---|---|
| 県南 | 210 | 14 | 224 |
| 壱岐 | 151 | 10 | 161 |
| 県央 | 40 | 102 | 142 |
| 対馬 | 3 | 32 | 35 |
| 五島 | 1 | 14 | 15 |
| 県北 | 2 | 8 | 10 |
| 西彼 | 1 | 2 | 3 |
| 上五島 | 0 | 1 | 1 |
| 合計 | 408 | 183 | 591 |
上位3保健所だけで527頭となり、県立8保健所全体の約89%を占める。ただし、内容は地域によって異なる。県南では224頭のうち犬が210頭を占める一方、県央では142頭のうち猫が102頭だった。
県南で犬の引取りが突出している理由については、今回確認した公表資料だけでは特定できなかった。数字の大きさだけから飼育放棄や野犬など特定の原因に結び付けることはできない。
壱岐では引き取った犬151頭すべてが子犬
地域性が特に表れているのが壱岐だ。
壱岐保健所が令和6年度に引き取った犬151頭は、事業実績上すべて子犬となっている。
壱岐保健所は地域の課題として、犬や猫の放し飼いや繁殖制限措置が十分に行われていないことなどから、望まれずに生まれた子犬・子猫の引取り要請が続いていることを挙げている。
ただし、151頭それぞれについて所有者の有無や引取りに至った事情が公表されているわけではない。このため「151頭すべてが飼い主による飼育放棄」と解釈することはできない。
県央では猫102頭、野良猫や不適切飼養も課題
県央保健所では犬40頭に対して猫102頭を引き取った。
県央保健所は、飼い主の都合による犬猫の引取り、不適切な飼養による近隣トラブル、野良猫の引取り依頼が依然として多いことなどを地域課題として挙げている。
その対策として、犬猫の適正飼養や終生飼養の啓発、不妊去勢の推進、野良猫を地域で管理する地域猫活動などに取り組んでいる。
長崎市・佐世保市は県立保健所とは別に対応
長崎市と佐世保市は、それぞれ市が動物行政を担っているため、前述の県立8保健所591頭には含まれていない。
長崎市では、飼い犬や飼い猫について、飼い主が新たな譲渡先を探すことを原則とし、市による引取りは「相当の事由」がある場合に限定している。事前相談なしに動物愛護管理センターへ持ち込んでも、引取りには応じないとしている。
また、離乳前の子猫を家庭で一時的に育てるミルクボランティアなど、譲渡につなげる取り組みも行っている。
佐世保市も、飼い主からの引取りと所有者不明の犬猫を区分した統計を公表している。ただし、県立保健所と長崎市、佐世保市では公表項目や統計の区分が必ずしも一致しないため、本記事では単純に合算して「長崎県全体の引取り頭数」としていない。
行政への引取りを「最後の手段」に
長崎県は、犬や猫を飼えなくなった場合でも、まず飼い主自身で新しい飼い主を探すよう求めている。
県の犬猫譲渡情報サイト「ながさき犬猫ネット」を利用することもできるほか、動物愛護管理法に基づき、繰り返し引取りを求める場合や、老齢・疾病だけを理由とする場合、新しい飼い主を探す努力をしていない場合などには、行政が引取りを拒否できる場合がある。
また、2023年4月に施行された「長崎県動物の愛護及び管理に関する条例」では、犬と猫を合わせて10頭以上飼育する場合に届出を求める制度を導入した。長崎市は県条例の対象外で、市独自の条例による多頭飼養届出制度を設けている。
飼育頭数が増え、飼い主だけでは適正な管理が難しくなる前に行政が状況を把握する仕組みの一つとなっている。
新しい動物愛護管理センターを2027年度供用へ
県は、老朽化した動物管理施設「アニマルポートながさき」に代わる新たな動物愛護管理センターの整備も進めている。
新センターは、犬猫の収容・管理だけでなく、譲渡や動物愛護の普及啓発、県獣医師会、動物愛護団体、ボランティアなどとの連携拠点としての役割も担う計画で、県は2027年度中の供用開始を目指している。
施設整備だけで引取り問題が解決するわけではない。壱岐の子犬、県央の猫、県南の犬というように、今回の集計からも地域によって状況が大きく異なることが分かる。
数字だけでは見えない「なぜ引き取られたのか」
今回、県立8保健所については令和6年度の引取り頭数を同じ年度で比較できた。一方、公表資料からは、すべての保健所について「飼い主からの引取り」「所有者不明」「その他の理由」を同じ基準で分けることはできなかった。
そのため、591頭という数字は長崎県内で発生した「飼育放棄591件」を意味しない。
一方で、壱岐保健所が繁殖制限や放し飼いを課題として挙げ、県央保健所が飼い主都合の引取りや野良猫、不適切飼養を課題としているように、行政が直面している問題には地域差がある。
犬猫が行政に持ち込まれたり保護されたりする前の段階で何が起きているのか。地域ごとの引取り理由まで比較するには、現在公表されている資料だけでは限界がある。
※本記事の県立保健所の数値は、長崎県の各保健所が公表する令和6年度事業実績をもとにJC-NETが集計した。長崎市、佐世保市は県立保健所とは別の動物行政を行っているため591頭には含めていない。統計上の「引取り」は飼い主による飼育放棄だけを意味するものではない。





