犬や猫が突然いなくなったとき、飼い主のもとへ戻れるかどうかを左右するのが、行政への届出と個体を識別するための情報だ。
長崎県の2024年度(令和6年度)の集計では、県内で犬225頭が捕獲され、79頭が飼い主へ返還された。内訳を見ると、長崎市では29頭を捕獲して24頭を返還、佐世保市では30頭を捕獲して28頭を返還している。
一方、迷子対策として普及が進むマイクロチップには注意点もある。長崎県内では、マイクロチップの登録だけで狂犬病予防法上の犬の登録まで完了する仕組みは現在適用されておらず、犬の飼い主には自治体への登録や鑑札の装着が引き続き必要となる。
さらに対馬市では、国の制度とは別に、飼い猫へのマイクロチップ装着と市への飼養登録を条例で義務付けている。長崎の迷子対策は、県、市、離島それぞれで仕組みが異なる。
数字で見る 長崎の迷子犬対策
※2024年度。県立保健所、長崎市、佐世保市を合わせた長崎県の公表値。捕獲された犬がすべて飼い犬だったことを示す数字ではありません。
2024年度、犬225頭を捕獲 79頭が飼い主へ
長崎県がまとめた2024年度の犬猫の取扱状況によると、県内で捕獲された犬は225頭だった。
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管轄 |
犬の捕獲 |
返還 |
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県立保健所管内 |
166頭 |
27頭 |
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長崎市 |
29頭 |
24頭 |
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佐世保市 |
30頭 |
28頭 |
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県全体 |
225頭 |
79頭 |
ただし、「捕獲数」は迷子になった飼い犬だけを数えたものではなく、所有者が分からない犬なども含むため、225頭をそのまま「迷子犬の数」とすることはできない。
また、県の同じ統計では猫の返還数が犬と同じ区分で示されていない。このため、犬と猫の返還率を単純に比較することもできない。
県は「ながさき犬猫ネット」で迷子情報を共有
長崎県は、県立保健所などに収容された犬猫や、飼い主が探している迷子、一般の人が保護している犬猫などの情報を「ながさき犬猫ネット」で公開している。
サイトには「行方不明の動物」「保護している動物」「保健所収容」の区分があり、返還や迷子解決、譲渡が決まった動物についても結果が掲載される。
長崎市と佐世保市はそれぞれ独自に動物愛護管理センターを運営しているため、収容情報は各市のサイトでも確認する必要がある。
県立保健所管内で犬や猫が行方不明になった場合は、ホームページに掲載されていなくても、最寄りの保健所へ迷子になったことを連絡しておけば、該当する情報が入った際に連絡を受けることができる。
長崎市ではセンターと警察へ連絡
長崎市は、飼い犬がいなくなった場合、直ちに動物愛護管理センターと最寄りの交番・警察署へ連絡するよう案内している。
センターが迷い犬を保護した場合は、市のホームページや公式Xなどで収容情報を公開。告示後も元の飼い主が確認できない犬については、新しい飼い主への譲渡に向けた対応へ移る。
2026年度現在、長崎市で保護犬の返還を受ける場合は、1頭4,900円の返還手数料に加え、保護期間に応じて1日540円の飼養管理費が必要となる。犬が未登録の場合は犬の登録手続きも必要になる。
市は迷子を防ぐため、鑑札や狂犬病予防注射済票のほか、迷子札やマイクロチップによる所有者表示を呼びかけている。
佐世保市も迷い犬をネット公開
佐世保市動物愛護センターも、市が保護した犬だけでなく、市民が保護している犬の情報をホームページで公開している。
2026年度の返還費用は1頭4,070円で、これに1泊につき370円の飼育管理費が加わる。
実際の迷い犬情報では、犬種や性別、発見場所、首輪の有無などとともに、「マイクロチップ反応なし」といった確認結果も掲載されている。マイクロチップが装着され、登録情報が最新の状態になっていれば、個体の識別から飼い主確認につながる可能性がある。
マイクロチップは「入れるだけ」では終わらない
2022年6月の改正動物愛護管理法施行により、ブリーダーやペットショップなどの犬猫販売業者には、販売する犬や猫へのマイクロチップ装着と情報登録が義務付けられた。
マイクロチップが装着された犬や猫を購入・譲受した新しい飼い主は、登録されている所有者情報を自分の情報へ変更する必要がある。
一方、すでに家庭で飼われているマイクロチップ未装着の犬猫について、一般の飼い主による装着は努力義務となっている。
マイクロチップには15桁の識別番号が記録されており、専用リーダーで読み取った番号をデータベースと照合することで飼い主を確認する仕組みだ。そのため、引っ越しや飼い主変更後に登録情報が更新されていなければ、装着されていても連絡先確認に支障が出る可能性がある。
長崎県では犬の登録が別に必要
犬の場合、もう一つ注意が必要だ。
国には、マイクロチップ情報を登録すると、その情報が自治体へ通知され、狂犬病予防法に基づく犬の登録も行ったものとみなす「狂犬病予防法の特例制度」がある。
しかし、諫早市は現在の案内で「長崎県内でこの制度が適用される市町はありません」と明記している。長崎市と大村市もそれぞれ特例制度に参加していないことを公表している。
このため長崎県内では、犬にマイクロチップを装着し国のデータベースへ登録していても、それだけで自治体への犬の登録が終わるわけではない。従来どおり市町への犬の登録と鑑札の装着が必要となる。
長崎市では犬の登録時に、マイクロチップを装着している犬について15桁の番号も市へ登録するよう求めている。
対馬は飼い猫にもマイクロチップ登録を義務化
県内で独自色が強いのが対馬市だ。
対馬市は「ネコ適正飼養条例」により、飼い猫を取得した日、または市内へ転入した日などから原則30日以内にマイクロチップを装着し、市へ飼養登録を申請することを義務付けている。
登録には獣医師が発行するマイクロチップの識別番号などを確認する証明書が必要で、飼い猫1匹につき1,000円の登録料を定めている。
住所などの登録内容が変わった場合や、猫を譲渡した、死亡した、市外へ転出した場合にも届出が必要となる。
これは全国的な犬猫のマイクロチップ制度とは別に、ツシマヤマネコを含む希少野生生物の保全や生活環境対策を目的として設けられた対馬市独自の仕組みだ。
課題は「装着率」だけでなく情報更新
迷子対策では、マイクロチップを装着するだけで問題が解決するわけではない。
首輪や迷子札、犬であれば鑑札など外から確認できる所有者表示に加え、マイクロチップの登録情報を最新に保つこと、犬や猫がいなくなった段階で速やかに保健所や動物愛護センター、警察などへ連絡することが返還につながる。
一方、現在公表されている長崎県の統計からは、返還された犬猫のうち何頭がマイクロチップによって飼い主を特定できたのかは確認できない。マイクロチップ普及が返還実績にどの程度寄与しているかを県全体の数字で評価することはできない。
迷子を出さないことを第一にしながら、万一離れ離れになった際に「誰の犬・猫なのか」をすぐ確認できる状態を作っておくことが、行政による収容から飼い主への返還までをつなぐ基本的な対策となる。