アイコン 関西ブロードバンド、只今活躍中!(長崎県・壱岐市)

壱岐市役所

(壱岐日々新聞)
2010年7月9日号(No.542)のトップニュース 

■ 島外資本が壱岐テレビ“乗っ取り”
   壱岐勢を利用後に全て排除
    村上社長「市の募集自体無効」
     白川市長 謎の島外勢加担


 46億円の国費を投じて整備される壱岐の光ファイバー網=ケーブルテレビネットワークの運営主体(指定管理者)「壱岐市民ケーブルテレビ(仮称)」が、どたん場になって島外資本の「関西ブロードバンド」に丸々乗っとられるという信じ難い事態になろうとしている。白川市長は壱岐出身で東京のテレビ番組制作会社「㈱キャバレット」の村上安弘社長を中心とする壱岐の関係者への期待を一貫して表明してきたが、最終段階で突然手の平を返し、壱岐勢を排除した関西ブロードバンド1社を指定管理者とすると表明。12日(月)に開催予定の臨時市議会に提案する構えだ。村上社長は「運営主体は壱岐市民CATVと繰り返し明記しているのにたった1行の欄だけで引っ繰り返すのは非常識。そもそも市の募集要綱が矛盾だらけなことが原因だから、募集自体が無効。市は白紙に戻し再募集すべき」と憤る。12日の市議会の対応が焦点となる。

 

●3本柱
 ケーブルテレビネットワークは①テレビで全国放送も島内テレビも見られる、②インターネットが速くなる、③IP電話が使える、の3本が柱。国策で各地で整備が進んでおり、②と③を担える電気通信事業者は、NTT系や電力系を含めたくさんある。しかし難しいのは①の地元テレビ放送。有名タレントが出演する訳でもなく、「地元密着型」のセンスを活かせなければ視聴者にソッポを向かれるのがオチだ。唐津CATVの好評と対馬の不評は好対照ともいえよう。

●壱岐出身社長
 そこへ登場し注目されたのが壱岐出身で東京のテレビ制作社㈱キャバレットの村上安弘社長(53歳)ら壱岐勢。東京キー局の有名番組からNHKまで「テレビの全てをやってきた」という同氏は20年あまりで数々の受賞歴に輝き、今年は文化庁の芸術祭優秀賞も受賞。「方言を大切にする」など地元密着型をアピールし、白川市長も「優秀な人材、嬉しい」と固く握手。さらに「指定管理者は公募するが、正直言って私の気持ちはやはり壱岐の方に」と述べた。

●関ブロ
 そして、数ある電気通信事業者の中から、神戸市が本社の関西ブロードバンド(略称関ブロ)が壱岐に営業に来島。
 同社が離島や過疎地を専門とすることから話し合いが進み、村上さんを社長に、資本金は壱岐関係者7対関ブロ3とすることでグループ企業を作り、市の指定管理者募集に応募する合意が固まった。村上さんは「関ブロは6月21日の説明会前日の打ち合わせでも『資本は30%で良い』と録音機を前に確認した。振り返ればずっと嘘をついてだましていたのか」と憤る。

●他社は辞退
 指定管理者募集は5月27日に発表。村上さんは最も困難で評価の分かれ目となる島内テレビ放送の計画練り上げに没頭。本土のテレビ関係者が「これは凄い!」と舌を巻くような放映計画を完成させた。
 また、指定管理の一部となる地元FMラジオ放送にも、勝本FM以来準備を重ねた齋藤智之さんが同グループに参画。地元主体の磐石な企業グループが完成した。
 結果として6月7日の募集締め切りでは、地元密着型テレビ放送の迫力の前に、動きのあった他社2社は断念。㈱キャバレット、関ブロ、壱岐市民FM(準)ほかで作る「壱岐市民CATV(仮称)」がプロポーザル審査を経る前に固まった。

●突然の地元排除
 ところが6月21日の説明会後の打ち合わせの中で、担当の山川修・企画政策課長が「指定管理はあくまで関ブロ単独1社のみ。壱岐の人は関ブロの中に入ってもらうしかない」と驚くべき発言。これに同席した関ブロの三須久社長が「50坪の関ブロ壱岐支店を作る」と応じ、関係者はキツネにつままれた思いとなり、「さては裏で示し合わせたか」との疑いの声もあった。

●不備は市の責任
 山川課長が根拠にしたのは「グループ構成員表」というページのグループ企業名欄に「関西ブロードバンド」とある1行のみ。しかし企画提案書本体では「運営主体=関西ブロードバンド+キャバレット=壱岐市民CATV(仮称)」と大書されているのが何カ所もあり=写真、「代表取締役社長 村上安弘」とも大きく明記されている。市と関ブロがこの1行だけを根拠とするのは非常識極まりないといえよう。
 そもそもどこの自治体でも、法人登記前のグループ企業が指定管理者に応募するのは可で、議会議決前までに登記を済ませればいい。ただしその場合、募集者=行政はグループ企業での応募の諸条件を詳細に募集要綱に掲載する義務がある。
 ところが今回の壱岐市の募集要綱本文には、グループ企業のグの字もない。グループ企業での新会社名が「仮称」でよいのか否かすらない。村上さんは「会社の登記も済んでなかったので、とりあえず関ブロの名を借りただけの1行」と話す。
 市は市自身の募集要綱の不備の責任が問われることになる。 

●ラジオも無理
 市の募集要綱には指定管理者がFMラジオ放送も担うと明記され、そのため齋藤智之さんが地元勢としてグループに加わった。法人登記はしていないから企業ではないが、島内では誰もが知る壱岐市民FM(準)の中心人物だ。
 ところが市が「関ブロ1社指定」を主張した後で、指定管理者業務にラジオ放送を加えていたことが国の制度上もともと不可能なことが発覚。総務省からFM局の認可を得るには、例えば3年間で終了する指定管理者では無理で、独立した法人としての認可が不可欠だった訳だ。
 結局、今回の市の指定管理者募集要綱自体が、誤りや矛盾、あいまいさなどを満載して破綻していたことになる。

●いったん白紙に
 村上さんは8日、壱岐市長宛に「指定管理者募集・選定の無効確認と再募集を求めます」と題した文書を送った。「今回の混乱の根源は市の募集要綱の不備にあることは明白なので、いったん白紙に戻すことが法的にも求められています」として、改めての再募集を要求する文書だ。

●市長の謎
 白川市長は前述のように「地元の人が帰ってきてテレビをやってもらえるのは有難い」との立場を繰り返してきた。
 6月21日に市の課長が「関ブロ1社指定」を発言して大混乱となった後の6月26日にも、記者の「指定管理を巡る騒動は聞いているか」という質問に「全く知らない。私はあくまで村上さんとそのグループに指定管理をしたと考えている」と明言。さらに「課長を呼んではっきりさせる」と話した。
 ところが、5日後の7月1日に面談した村上さんに市長は「指定は関ブロ。あとは関ブロとあなたの話し合い」と手の平を返して突っぱねた。
 「一体何があったのだろうか?」と、関係者の疑問はふくらむばかりとなっている。

●事業自体の心配
 壱岐の地元勢を排除した関ブロは、福岡のテレビ番組制作社に金を払って番組づくりの下請けをさせる方向のようだ。
 しかし地元と敵対してテレビの加入者が増える訳がないという見方もある。以前、関ブロの三須社長は「今まで17~18億円集めたが金は残っていない」と村上さんに明言しており、同社の専務は「社長と私で個人の金を会社に8千万円注ぎこんでいる」と録音機の前で話している。加入者が増えなければ同社の経営が悪化する可能性もあり、46億円の大事業の今後が心配になる。
 12日(月)午前10時からの臨時市議会がどういう判断を下すのか、全島の注目が集まる。

[ 2010年8月11日 ]
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