アイコン 十八銀行/お人よしの田舎銀行 宮脇体制の危い兆候は

十八銀行は、長崎県金融の3割以上のシェアーを有する銀行である。ヤンチャの親和銀行が前知事らの金子一族の権勢に乗っ掛かり伸長させてきたことから萎縮。しかし、金子漁業グループ等の不良債権処理の進捗とともに親和銀行は実質破綻。九州の雄、福岡銀行が親和銀行に乗り出してきたことから、不良債権処理が一機に進められ、十八銀行はサブの融資銀行として翻弄され続けてきた。矢継ぎ早に展開する福岡銀行グループ(親和銀行)に経営政策面でも後手後手となっている。 

生え抜きの宮脇雅俊氏が現在の頭取であるが、大蔵官僚出身の藤原(前)頭取が07年6月退任してからは、同世代の取締役を殆ど振るい落とし、若返りを図ったとして我が世の春を満喫しているようだ。当分宮脇頭取体制は続くと思われるが、なかなか権謀術数には優れているお方のようである。しかし、経営面は、資産の運用効率である総資産に対する経常収益率では、(07年6月頭取就任)ここ3年で0.72ポイント下落させている(1ポイントは234億円相当)。

決算期
2008年3月期
2009年3月期
2010年3月期
経常収益
73,919
60,406
56,620
経常利益
3,428
-14,680
8,151
当期利益
1,632
-14,342
5,858
総資産
2,354,561
2,342,992
2,343,958
 経常収益率
3.13%
2.57%
2.41%
自己資本
116,524
89,964
113,490
資本金
24,404
24,404
24,404
自己資本率
4.90%
3.80%
4.80%
国内基準
12.11%
10.70%
11.10%

<金融円滑法の申込と実行状況>
金融円滑化法による返済猶予申込みは来年3月までであるが、それまでに返済猶予措置が認められれば、かなりの期間(最長5年間)元本弁済しなくて済み、企業にとって資金繰りは大幅に楽になる。セーフティネット資金で借り入れた資金も対象であり、一般個人の住宅ローンも対象である。
同行への申込みの平均額は、全国平均より約1000万円少なく、中小企業向けの融資が如何に多いかを如実に表している。

/百万円
09/12~10/6月(累計)
 
申込数
申込額
申込平均 
十八銀行
3,133
73,744
2,353万円
全国146行計
474,815
15,712,600
3,309万円
返済猶予実行率は、全国平均97.10%であり、殆ど申込者には返済が猶予されている。

<業種別融資状況>
十八銀行は、福岡銀行傘下の親和銀行のようにエゲツない地方公共団体(県市町村)への融
資拡大は、それほど増加させていない。しかし、親和銀行の動き次第では公金の取り扱いで不利になるケースも出でくることも考慮される(地方公共団体は借金を増加させることでますます自助能力を欠乏させるのみである)。
 小売・卸売業の貸付が大幅に減少しているが、それほど同業種が不況に苛まれていることになる。大型ショッピングセンターの進出や小泉政権による可処分所得の減少から生じた消費不況の影響も大きいといえる。
 建設業界は、土木主体の官庁工事が現象を続ける中、08年9月に生じたリーマンショックにより民間工事も激減しており、その資金ニーズが細くなっているものと思われる。また建設業者向けでも西海建設のように不動産投資事業を拡大していた融資先は、債務免除を受け、融資は限られたものとなっている。
 不動産事業者向けも、宅造開発がことごとく失敗しており、破綻したか、債務免除を受けているところが殆どで、一般の金持不動産会社へのオフィスビル建設投資などへの融資残が殆どになっていると思われる。
 製造業は、長崎市は造船の町であり、多くの下請先などへの密着融資が多いものと思われる。同社は三菱重工の元取締役常務を社外取締役に招聘するほどの間柄。

/百万円
08/3
09/3
2010/3
10/3-09/3
10/3-08/3
貸出残高
1,358,999
1,306,660
1,285,298
-21,362
-73,701
製造業
114,758
114,612
116,702
2,090
1,944
農業・林業
7,208
8,005
8,218
213
1,010
漁業
8,308
7,694
7,200
-494
-1,108
鉱業
1,232
789
 
 
 
鉱業、砂利砕石業
 
 
1,492
 
 
建設業
48,823
41,503
35,412
-6,091
-13,411
電気・ガス・熱供給・水道業
11,412
11,060
10,165
-895
-1,247
情報通信業
8,369
7,808
7,460
-348
-909
運輸業、郵便業
37,399
34,649
38,822
4,173
1,423
卸売・小売業
208,468
193,567
176,221
-17,346
-32,247
金融・保険業
17,423
15,793
18,482
2,689
1,059
不動産業
128,433
119,305
 ①93,146
 
 
不動産業、物品賃貸業
 
 
142,007
 
 
各種サービス業
233,312
221,797
 
 
 
宿泊、飲食業
 
 
21,015
 
 
生活関連サービス業、娯楽
 
 
65,416
 
 
医療、福祉
 
 
86,505
 
 
地方公共団体
178,092
195,642
190,798
-4,844
12,706
その他
355,752
334,216
360,834
26,618
5,082

① 物品賃貸業はそれまで各種サービス業に入っており、その金額は大きな動きはないとして488億61百万円が想定され、2010年3月期の不動産・物品賃貸業の合算1420億07百万円から、その分を差し引いた場合、931億46百万円となり、不動産業者向け融資残は1000億円を割り込んでいることになる。その結果3ヶ年で350億円減少させている。

同社の決算書には監査役の印鑑がない。監査役を設置していないようであるが、人様のお金を預かる金融機関としては異常である(新商法で設置任意になっているが)。平戸での不祥事もあり、内部牽制制度が機能しているのか内部にあって日常チェックする第三者機関的要素を持つ監査役及び監査役会を設置しないのはいかがなものかと思われる。確かに監査委員会と称するものが同行には設置されている。しかし、委員長には社外取締役で同行に常駐していない南條氏が就任している(また、監査委員に斎藤元長崎大学長(医学部)も社外取締役としているが何もわからない)。宮脇体制もここまでやれば、無難に運営しようと体裁を繕い事なかれ主義でいようとも、福岡銀行谷・鬼木連合無敵艦隊に押し捲られ、何れ危ういものとなろう。
 

[ 2010年9月29日 ]
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