アイコン 1人勝ちのトステムとサッシ業界

サッシ業界は、トステムの一人勝ち状態が常態化している。その戦略を探ってみる。

<田舎で収益基盤>
同社の特徴は、田舎から都心部へと駒を進めきた戦略にある。トステムはバブル期以前に・・・トーヨーという名の代理店を全国津々浦々に設けてきた。バブルが始まり大手サッシメーカーが、都心部のビルサッシに傾注するなか、トステムはリテール事業である戸建住宅にターゲットを絞り、田舎市場を制覇していった。
YKK-ap・三協・不二・新日軽など大手サッシメーカーは、田舎の建材店に看板は上がっているものの取扱店の類。これらメーカーはバブル期に入り、いくらでも建つビルのサッシに傾注、田舎の仕事を軽んじてしまった。そのスキに田舎の市場を制覇していったのがトステムであった。

リテール事業である田舎の戸建サッシは、今も昔もゼネコン相手ではなく地域の工務店が主役、手間隙かかるものの、ビルサッシとは利益幅が全く異なり儲かる。トステムは、田舎で強固な販売組織を作り上げ、強固な利益体質まで築き上げた。
戸建住宅では、個々の建物の煩雑な作業をすべて代理店が行うことにより、代理店も儲け、メーカーであるトステムも儲かるというビジネスモデルを構築した。

<ビルサッシへの展開>
田舎で高い収益基盤を作り上げたトステムは、バブル初期には、すでに都心を包囲していた。バブル中期から後期にかけ、トステムは都心へ雪崩のように参入していった。当然、他社とは比べようもない収益力により、価格競争力でも圧倒、都心部をも制覇していったのであった。
サッシ業界大手は、数社に限られている。構造不況のような業界であるが、リテール事業を確固たる収益基盤としてきたトステムだけが、この間も儲けてきた。そのため、業界による価格カルテルの話はなされるものの、販売部門で直ぐ崩れ、話し合いは何度も反故にされてきた。そのため新日軽(トステム傘下)も不二サッシ(文化シヤッター傘下)も単独では生き残れず傘下入り、三協にしても立山と合体したもののまだ安定していない。YKK-apは、親会社が世界企業のYKKであるが、足元の業績は非常に厳しい状態となっている。
今でも、ビルサッシに関しては、実質この3社で熾烈な受注競争を繰り広げている。ゼネコンからの単価安要請は限度を知らず、常に発注は叩き合いさせられてしまう。そうした無謀とも思われる発注にしても、結果対応してきたのがサッシ業界、これまでどおりである。
業界が疲弊、整理淘汰する中で頂点に立ったのがトステム。そこまでの超長期戦略に基づき経営を主導した前トステム会長のすごさでもある。 

<高まる総合受注力>
ビルサッシで一定のシェアーを確保したトステムは、次の戦略としてイナックスと統合、住生活に変身している。今度は総合受注力で他社を圧倒する戦略に出た。トステムのサッシ、イナックス製品、システムキッチン、ユニットバス、下足箱、フロアー材など何でもゴジャレとばかり、一括見積もりをして他社サッシメーカーを圧倒。他のメーカーは、サッシや硝子工事だけの見積もりであり、一括見積もりなどできもしなかった。そのため他社は、より価格を引き下げるか、敗退が続き、不二や新日軽が傘下入りを余儀なくされた。

<スキは>
ただ、分譲マンションにあっては、システムキッチンのタカラスタンダードだけが住生活から逃れた。それは、分譲マンション毎のデザイン力を有していたからである。そのためシステムキッチンを核に洗面・ユニットバスに受注展開することもできた。同業のサンウェーブが、住生活の傘下に組したのは、タカラスタンダードに屈した結果でもある。ところがタカラスタンダードさえもリーマンショック後の分譲マンション不況に苛まれているのが実情である。
(サンウェーブを傘下にした住生活がシステムキッチン業界でも首位となっている。)
こうして、建物に対して総合受注力を擁した住生活トステムは、今や敵なしの様相となっている。
その勢いは、中国進出のみならず、レオパレス21と資本業務提携するに至っている。

来年4月、住生活は各事業部門を統合して「LIXIL」(リクシル)にするが、大きくなればなるほどスキはできる。そうしたスキを拡げる企業がまた現れてくるのも世である。

住生活
 
 
 
 
決算期
2008年3月期
2009年3月期
2010年3月期
2011年3月期予
売上高
1,103,839
1,046,854
982,606
1,200,000
営業利益
35,737
25,603
25,983
50,000
  営業利益率
3.24%
2.45%
2.64%
4.17%
経常利益
37,716
22,179
27,857
50,000
当期利益
17,708
474
-5,331
26,000
 
 
 
 
 
YKK-ap
 
 
 
 
決算期
2008年3月期
2009年3月期
2010年3月期
2011年3月期予
売上高
343,258
310,400
262,104
261,600
営業利益
1,545
-4,314
-7,132
 
  営業利益率
0.45%
 
 
 
経常利益
198
-4,138
-6,425
1,000
当期利益
95
-38,200
-6,513
400
 
 
 
 
 
三協
 
 
 
 
決算期
2008年5月期
2009年5月期
2010年5月期
2011年5月期予
売上高
335,439
277,767
257,402
257,000
営業利益
1,938
-7,642
4,784
6,600
  営業利益率
0.58%
 
1.86%
2.57%
経常利益
404
-9,332
3,391
4,300
当期利益
-2,623
-19,246
2,047
3,000
 
 
 
 
 
不二
 
 
 
 
決算期
2008年3月期
2009年3月期
2010年3月期
2011年3月期予
売上高
126,373
109,191
91,168
86,400
営業利益
1,652
-1,989
-321
1,050
  営業利益率
1.31%
 
 
1.22%
経常利益
900
-2,561
-1,022
650
当期利益
2,073
-4,469
-1,679
700

[ 2010年12月 9日 ]
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