アイコン 長崎駅区画整理事業(11)/長崎市の修正案は、再度一方通行地

長崎駅区画整理事業の問題は、新聞でも長崎市議会でも取り上げられた。
長崎市議会での市側の答弁は「長崎駅周辺区画整理事業地内に所有する不動産所有者が、市が当初示した仮換地案に納得せず、(市が)代替地案を提示して、現在交渉を進めている」としている。
元々当問題は、市役所側が、当区画整理事業における「照応の大原則」を理不尽に踏みにじり、好き勝手な仮換地案を審議会で通したことに起因している。これに対して所有者が「意見書」を提出しても、審議会は保留扱いとし、長崎市の担当部局は「最後までお願いするのみ」と意見書をも突っぱねた。

事業者の長崎市は、ガソリンスタンド及びレンタカーを営む駅構内の敷地を、200メートルも北に離れた一方通行沿いに仮換地させ、「価値は全く変りません」と。素人が見ても長崎市の見識を疑うものである。
長崎市は、評価員や審議会を操り、区画整理事業法で謳っている「照応の大原則」である「従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等に可能な限り照応させる」という法律を権力で捻じ曲げては決してならない。
 
<御用審議会か>
また、当事業の審議会にも問題がある。当該地の所有者で審議員であった不動産所有者が売却して資格喪失、審議会は補助委員も置かず(長崎市は、限られた当該地にあり、何名かしかいない借地権者を知っていて、何の説明もせず、公示告知して立候補しなかったからと市民を切り捨てている。なんと不親切な長崎市役所であろうか)、1名欠員にしたまま審議を進めている。
 
当区画整理事業地の不動産所有者は8名しかおらず、当該地の不動産を購入した現所有者を、完全に蚊帳の外に置き、長崎市役所は、駅構内に位置する当該地を、200メートルも北に離れた一方通行沿いに仮換地案を示し、価値は変わらずとした。
審議会が市役所の意のままに動く御用審議会となっており、審議委員が、法で定める審議員の役割を全く果たしていないことに当問題は起因しているといえる。
 
(国交省監修版)区画整理事業法第58条第3項の解説では、「審議会の性格」について、「宅地について所有権又は借地権を有する者の利益代表である」と明記。
また「審議会が原則的には諮問機関であり、「審議会」は、施工者(長崎市)と施工地区又は工区内の宅地について「所有権」または「借地権」を有する者との間に立って、その関係を調整し、事業の適正な運営に資する機関である」としている。
 
<審議員構成メンバーと審議員の仮換地の状況>
審議会の構成委員、会長:菊森氏(学識)、副会長:杉山氏(学識)、JR関係3名(委員)、運送会社(委員)、不動産会社(委員)、ニュー長崎ビル(委員)、自治会所有地(委員)の9名で現在構成されている。
1、JR関係者:特に物申さない(JR関係者弁)3名
2、ニュー長崎ビル:少しだけ空き地を提供するのみで関係ない。大通りに面する土地が現行600%の容積率から400%に変更されるが、同社は既得権として600%が唯一認められている(建替でも600%のまま)。
3、不動産会社:駅裏に位置するが駅西口が整備され角地という好条件地に。減歩率30.7%、現行容積率200%が400%になる。
4、運送会社:駅裏になるが整備され容積率が、現行200%から400%に引き上げられる。減歩率20.0%。
5、大黒町自治会:市に全面協力
 
長崎市が作成した現行の所有者の審議員の仮換地案は、当区画整理事業で不利益になるところは全くない。当然不利益を被る所有者のことを、本来の審議員の責務である「審議員外の所有者や借地権者の利益」について考える人などまったくいない状況がこれからも窺い知れる。学識経験者2名までもが・・・。
 
<市役所が仮換地の「修正案」、それがまた一方通行>
当該地の仮換地案に対して不動産所有者は、「こうした無茶苦茶な仮換地案が、法に基づき許されるのか」と区画整理事業に詳しい弁護士や実際大規模区画整理事業を行ってきた法律家に相談している。
長崎市役所に対して質問状も弁護士名で提出、一度決定したら曲げない役所が、やっと重い腰を上げ、修正案を当該所有者に提示した。
それがなんと、また一方通行沿いである。「照応の大原則」である利用状況、環境等を完全に無視したものとなっている。
当該地の所有者は、当修正案を当然ながら突っ返している。
 
<区画整理事業の専門家の話>
全国で多くの区画整理事業を委託され実施している東京の専門家は、「所有者の不動産価値は、区画整理事業の前と後では、同じ不動産価値が保証されるものでなくてはなりません」と述べている。
長崎市が示した修正案は、不動産価値が保証されるどころか、現行600%の容積率が400%に落とされた上、車の通りも人の通りも殆ど見込めない一方通行という不便な土地の修正案を示しているのである。
<現行と仮換地>
駅構内は、現行の地図では、駅前の大通りに面し、南側からホテルニュー長崎とJR九州(アミュプラザ等)、駅舎、レンタカー・ガソリンスタンドとなっている。
換地案の図面では、南側からホテルニュー長崎は動かず、JRは北に間口が広がり、その次に大きな保留地が設定されている。完全にガソリンスタンドの土地は、北200メートルへ追いやられた。
今回、市が示した修正案では、駅構内の北端を提案してきている。しかし、その地は大きく現状から変更され、奥へ引っ込み、また一方通行沿いとなっている。
これでは、今まで駅構内と大通りに面して営業している土地の価値が、一方通行という格段に低い価値の土地に化けてしまう。これでは「照応の大原則」に大きな問題が生じ、現所有者も今回示された修正案に対して、全く話にならないとしている。
 
長崎市の担当部局は、青写真を作り直すか、今の図面のままならばJRの現行の建物の北側横しか換地の土地はないと思われる。今まで路面沿いに存在しなかった保留地(入札、公共建物)を、路面の一等地に持ってくることを前提としていることから、こうした問題が生じているのは明々白々である。
更に市電を構内に引き込むという図面を書き上げているが、今に至っても、市電側に対して何の説明もなされていないという。
 
<審議会のあり方を問う>
区画整理事業では、何でもできると錯覚している長崎市とそれを操る「長崎駅周辺まちづくり委員会」(鮫島委員長、長崎市の附属機関、所管部署:都市計画部長崎駅周辺整備室は、まずは最大限法律を遵守することから、まちづくりを考えるべきではなかろうか。
長崎駅周辺まちづくり委員会」は、「未来の長崎のまちづくり」という美名と大義名分のもとに、好き勝手な権限を振り回しているようでもある(丘側の観光地から海が臨める(←県庁計画で途中没)、稲佐山が見える、それも裾野までが・・・)。
 
ところが、この「長崎駅周辺まちづくり委員会」の副委員長に菊森氏が就任している。この菊森氏は、当区画整理事業の審議会の会長でもある。このことは市と一体となった「長崎駅周辺まちづくり委員会」の意向を代弁する者といえる、それも会長である。
 
一方的な事業者(長崎市)と土地所有者や地権者間を調整する役割の審議会の会長が、市と一体となって駅の区画整理事業の構図を描いている市の附属機関の副委員長では、いくら学識経験者といえども、大きな問題ではないだろうか。
 
こうしたことから、欠員問題も生じているにもかかわらず、参考人であるはずの役所の人間が審議会を主導、欠員のまま審議会でいろいろ決議させ、市役所職員及び審議員の誰もが、唯一審議員になっていない所有者の不利益も含めて問題意識を持ち得ていないといえる。
 
 
<追>
長崎市の当駅周辺区画整理事業においても、既に利権の噂が耐えない。当地の保留地(公共的な建物を民間が建てる)の落札業者や建設業者まで水面下で決定しているという話がまことしやかに囁かれているのである。
こうした噂が流れるのは、今では全国の主要都市を見ても長崎市だけとなっている。
長崎県の官庁工事の談合疑惑率93.6%、2位の新潟県83.3%を大きく引き離しダントツの全国第1位(2009年度において1億円以上の官庁工事115件中、107件が90%~94%で落札されている・・・全国オンブズマン調査)。
長崎市も、もうそろそろ猫や犬の亡霊から解き放たれ少しは変わる時ではないだろうか。
[ 2011年3月18日 ]
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