アイコン 世界のスマートグリッド市場の調査/富士経済

スマートグリッド関連市場は2020年に7兆9,191億円(11年比434.1%)
  富士経済(03-3664-5811)は、世界各国で進められているスマートグリッドの取り組み状況や今後の方向性を把握する調査を行った。

<調査結果の概要>
  世界的なブームとなったスマートグリッドも、プロジェクトの進展とともに課題が明確化され、具体的な成果が求められつつある。スマートグリッドの方向性としては、風力や太陽光などの再生可能エネルギー導入に対する系統安定化対策と一般家庭を含めたエネルギー利用の効率化に集約されてきている。

  先進国ではすでに再生可能エネルギー導入拡大への対応や、業務施設や家庭での需要の制御、太陽光発電やコージェネレーションなどで消費者が能動的にエネルギー市場に参加するためのアプリケーション導入へ重点が移っている。一方、新興国では人口増加や経済発展に伴い、送電線の敷設や配電網の近代化などのエネルギーインフラの整備が必要となっている。

しかし、その中でも先進国と同様に再生可能エネルギーなど環境負荷の低い電源の導入や国家間を超えた電力融通などが求められており、スマートメータなどがその手段の一つとして導入されつつある。

1.スマートグリッド関連市場
  2011年見込     2020年予測    20/11年比
 1兆8,243億円   7兆9,191億円    434.1%

スマートグリッド関連市場は、スマートメータ/AMI、通信ネットワーク、デマンドレスポンス、HEMS、エネルギー貯蔵システム、V2G、FACTS機器(フレキシブル交流送電システム)、HVDC(直流高圧送電線)、超電導ケーブル等を対象としている。

2011年は1兆8,243億円が見込まれ、2020には2011年比4.3倍の7兆9,191億円が予測される。
 
スマートグリッドの基盤となるスマートメータ/AMIは、先進国・新興国共に導入スケジュールが出揃った。2012年には、政策で導入が進んだ米国で需要のピークを迎え、以降、欧州各国(既に導入が進んでいるイタリア、北欧は除く)や新興国に需要が移ると予想される。

スマートメータは価格低下によって導入が一般化しつつあり、導入後はそれを活用するためのHEMSなどのアプリケーション市場の活性化が期待される。
  
再生可能エネルギーの導入による系統安定化対策として、送電網増強に伴うFACTS機器、HVDC、エネルギー貯蔵システム、デマンドレスポンスなどがスマートグリッド市場の中心を担う。

既に、エネルギー総需要の抑制と再生可能エネルギー導入拡大に重点が移っている先進国では、デマンドレスポンス、HEMS、エネルギー貯蔵システム、超電導ケーブル、さらには電動自動車関連(V2Gなど)の需要が高まると予測される。

一方、新興国では、エネルギー需要の拡大とともに効率的な送配電設備や環境負荷の低い電源の建設が進み、スマートメータ、HVDCなどの需要が高まると予測される。

【注目市場:デマンドレスポンス】
  2011年見込   2020年予測   20/11年比
   920億円    9,800億円    1,065.2%

 デマンドレスポンスは、ピーク時の電力消費量の削減を可能にする製品・サービス群である。需給バランスによって変動する電力料金への対応や、系統運用者からの委託により負荷を低減または平準化(電気使用量の削減・平準化)することで、インセンティブを得る。
 
米国では以前より業務、産業分野で市場が形成されてきたが、スマートグリッドが注目されるにつれ、スマートメータと連携した家庭用機器の制御などの新たな市場が立ち上がりつつある。欧州では実証実験段階であるが、再生可能エネルギーの出力変動への対応や、ピーク時に蓄電池や分散型電源の利用を促すスキーム構築を進めている。

 

2.地域別スマートグリッドの実態

【北米 注目市場:デマンドレスポンス/V2G】
 米国、カナダともに送電設備の老朽化が進んでおり、エネルギーセキュリティ強化や電力供給の信頼性向上のために送電網構築プロジェクトが進んでいる。シェールガスの産出拡大により、エネルギーセキュリティへの貢献期待が薄れたが、大西洋側と太平洋側で時差もあるため、負荷平準化政策としても広範囲にわたる送電網の構築が効率的であるとされている。

また、再生可能エネルギーの導入についてもメガソーラーやウィンドファームなどは電力消費地から離れた場所に建設されるケースが多く、広範囲にわたる送電網構築が課題となっている。
 米国ではスマートグリッドが注目される以前より、ピーク時の需要対策として、業務、産業施設でデマンドレスポンスの導入が進められていたが、サービスプロバイダの参入により、家庭向けでもサービスが提供されている。スマートメータの導入に伴い、短時間での電力使用量の測定が可能になるため、電力料金抑制や電力需要のピークカットを目的としたデマンドレスポンスの拡大が見込まれる。

米国では産業保護とエネルギーセキュリティの観点で、従来からある「原油→ガソリン→自動車産業」の連鎖が、「シェールガス→天然ガス発電→電動自動車」へと移行の兆しを見せている。そのバックアップとしてV2Gへの関心と期待が高まっている。

【欧州 注目市場:HVDC/HEMS】
 欧州は陸続きのため国家間の電力供給連携が活発な地域である。2020年までに北海の洋上風力発電、南欧や北アフリカの太陽熱発電などの大規模発電所構築と、その電力を欧州全体に効率的に送電する電力網構築を計画している。送電線には、主に洋上風力発電で海底送電ケーブルとして使用されるHVDCの導入計画が各国で進んでいる。
 
この他、エネルギー効率化や系統安定化のために需要家側でエネルギーを制御するプロジェクトが活発である。実証実験段階であるものの、コージェネレーションや太陽電池などの分散型電源と、蓄電池や電動自動車などの電力貯蔵装置を用いた電力シフトを目的とするデマンドレスポンスの取り組みが主流となっている。

【中国 注目市場:スマートメータ/HVDC】
 中国では「ストロング・スマートグリッド」の標語の下に、安定した系統連系、信頼性向上を目的として、超高圧送電線の敷設とスマートメータの設置が急速に進んでいる。水力発電などの再生可能エネルギーによる電源開発が西部で進められており、東西の送電網整備が急がれている。
まだ、建設済みの太陽光発電や風力発電も系統連系が済んでいないものも多く、2015年までに連系を進めグリッド上で太陽光発電8GWと風力発電90GWに引き上げることを目標としている。
  
中国ではこれまで電力需給の逼迫に対して強制的な電力供給の一時停止で対処してきたが、米国などの支援によって商業ビルを中心にデマンドサイドマネジメントやデマンドレスポンス実現への動きが出始めている。また、家庭用電力料金システムは上海市を除きほぼ全国各地とも一律の従量料金制がとられており、デマンドレスポンスが取り上げられることはなかったが、スマートメータの導入により、今後家庭用についても電力料金体系が多様化に向かうと予測される。

【日 本】
 日本では、電力供給が安定していたためスマートグリッド構築への関心は低く、海外へ売り込むことを前提に民間企業が中心となり自社システムの製品化やスマートグリッド向けにパッケージ化を進めていた。しかし、東日本大震災を契機に日本国内でもエネルギーセキュリティ確保が急がれ、再生可能エネルギーや分散型電源の導入とそれらに関わる規制の変更や系統運営政策が議論されている。(周波数の統一も論議されている)

ピーク時の電力供給不足が懸念され、従来火力発電の発電量で調整してきた需給バランスをデマンドレスポンスなど、需要家側で調整しピーク時の電力消費量を削減する必要性が急浮上した。
しかし、デマンドレスポンスについては、情報開示や所有権の議論が、セキュリティの問題を楯に遮られており、情報を活用したサービスの提供は困難な状況にある。

【その他の地域】
  オーストラリアはスマートグリッド先進地域であり、早期からスマートメータの設置が進んでおり、既に消費者側のアプリケーション導入にプロジェクトの重点を移している。
一方、南米などの新興国では、スマートメータの設置や大規模なHVDCプロジェクトが一部で始まっており、積極的なインフラ投資が計画されている。
 
中国、日本以外のアジアにおいて、韓国、台湾などはグリッドとエネルギーセキュリティの強化、更に関連産業の育成という狙いが強い。

<調査対象>
 スマートグリッド関連市場:スマートメータ/AMI、通信ネットワーク、デマンドレスポンス、HEMS、エネルギー貯蔵システム、V2G、FACTS機器、HVDC、超電導ケーブル、他
 個別企業・政府動向   :システム・機器メーカー:30、電力事業者:28、政府(国、州):27
以上


 日本あっては、電力政策の欠陥が東電の原発水素爆発により露見している。
膨大な市場であるスマートメータ市場も、国内でのこれまでの必要性から世界に遅れをとっている。
 
リチウム電池の世界市場も、韓国がトップになったと5日報じられている。韓国勢のサムスンもLGも大きな利益を上げており、開発・設備投資において日本勢が束になっても適わない状況に至っている。(2012年サムスンだけで3兆円の設備・開発投資額)

 日本のTV・家電などに対するECOポイントなどの国策が携帯も含め、こうした業界を甘えさせ、内弁慶にさせ、世界の技術革新や発展に対して、後塵に甘んじる結果となっている。
世界の市場動向を見ず、高技術化・高機能化へ先走り、国策では一番儲けたものの、国策が切れたとたん世界市場で泡を食っているのが、シャープとマネ下のパナソニックであるといえよう。
 

[ 2012年3月 6日 ]
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