アイコン シャープ 業績悪化に歯止めがかからず/銀行・鴻海 部門別業績推移付

ロイターは6日次の通り報道している。業績悪化に歯止めのかからないシャープは、自立再建の道が狭まりつつある。1兆2千5百億円を超える有利子負債を抱えて金融機関からの圧力が強まる一方、提携相手の鴻海精密工業は現行予定の約10%から大幅に出資比率の引き上げを狙っている。
銀行の管理下か、台湾メーカーの傘下か、このまま再生の道筋を示せなければ、シャープは窮地の選択を迫られる可能性がある。

 
<CB償還で救済シナリオ始動>
2012年4―6月期の決算発表が目前に迫った7月下旬、大阪本社のシャープの奥田隆司社長は東京に出張し、主要取引銀行を訪れた。「バックアップ」の要請。主要の液晶パネル事業の赤字が拡大し、テレビ事業の低迷は想定を超え、財務内容は一段と悪化しつつあった。
4─6月期に1384億円の最終赤字を計上したシャープの有利子負債は1兆2500億円を超えた。2013年9月に償還期限を迎える約2000億円の転換社債(CB)に加え、3600億円超に上るコマーシャル・ペーパー(CP)の返済の合計5600億円に達する。
 
これに対し6月末の現預金は約2200億円に過ぎず、液晶パネル在庫を中心とする棚卸資産は約5100億円を超える。6月末の純資産は4788億円で、3月末から既に25%減少した。最終赤字が2500億円まで拡大する見通しの来年3月末には純資産がさらに減る予想である。
こうした事態では銀行の支援は不可欠だ。
決算会見で奥田社長は「主要取引金融機関にバックアップ体制を検討してもらっている」と話したが、その詳細は言及していない。だが、ある金融機関の関係者は「CB償還を前にリファイナンスを検討している」と、シャープ救済シナリオが動き出したことを明かす。
 
<5000人削減は金融機関の圧力>
「バックアップ」という名の救済と引き換えに金融機関が奥田社長に突きつけたのは大規模な人員削減だった。8月2日の決算と同時にこれまで人員削減をしないことで知られたシャープが5000人という人員削減規模を盛り込んだ。
ただ、構造改革は、工場閉鎖は伴わず、液晶テレビ組立工場の栃木工場(栃木県矢板市)と太陽電池を生産する葛城工場(奈良県葛城市)の生産体制を縮小するという組織再編にとどめた。
しかし、売れなくなったテレビを生産している工場は、国内だけではなく、ポーランド、メキシコ、マレーシア、中国の外地にも点在している。
 
<価格見直しで鴻海の揺さぶり続く>
鴻海は、今年3月27日、シャープ株9.9%を1株550円で取得し、669億円を出資することで合意した。
だがシャープの株価が下落し続けるのを横目に、いまだに払い込みを実行していない。
4―6月期決算発表翌日の8月3日、シャープ株が192円で取引を終え、1976年以来の水準に落ち込むと、鴻海側はシャープへの出資契約について「両社が見直すことで合意した」と突如発表した。シャープ株の取得価格変更が狙いだが、直後にシャープは「そうした事実はない」と全否定。パートナーであるはずの両社の関係が円満ではないことを露呈した。
 
鴻海にしてみれば、条件通りに出資すれば含み損が出る。しかしシャープにとっては、鴻海の引受価格を下げれば調達資金が減り、財務改善計画に狂いが生じる。
ただし、669億円の出資額を維持して価格だけ見直されることになれば出資比率が跳ね上がり、鴻海の支配力が増すことになる。
 
鴻海を率いる郭台銘董事長は6月18日の株主総会でも出資比率の引き上げに向けて両社が協議していると株主に話すなど、再三にわたりシャープに揺さぶりをかけてきた。このときもシャープは6月26日の株主総会で否定して対応に追われた。
 
<株価下落で追い込まれる>
鴻海は役員の派遣も依然として模索している。シャープ決算の翌日、鴻海関係者はロイターに対し「筆頭株主になるのでシャープの経営に影響力を行使するため様々な方法を考えている」と語っている。
シャープは6月26日の株主総会でも役員派遣の観測を否定しており「6月の定時株主総会で否定したのに、すぐに臨時株主総会を開いて鴻海の役員派遣の承認を求めることなどできるわけがない」(関係者)と改めて拒否する構えだ。
しかし、業績の立て直しがままならず、株価が下げ止まらない状況はシャープの立場を一層不利なものにしている。
 
「テレビ事業そのものをやめたり、なくなったりすることはない」と強調する奥田社長。だが「部品専業メーカー」としての生き残りを余儀なくされれば、弱った事業の撤退を含む大規模な再建シナリオも視野となる。
あくまで、自らの判断で再建を目指すシャープの意向をよそに、徐々に外堀が埋まろうとしている。
以上、ロイター記事を参照要約
 
シャープの生き残り策は、今に見合った大きさにシフトできるかどうかである。TV事業を同社から取ったら、何も残らないだろう。当然不採算部分はカットや縮小均衡にするしかない。膿を出し切り、経営を損益分岐に浮上させ、強い部分を更に強化すべきである。
 
そのためには、それにより発生する負を三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行などの金融機関が面倒見るしかない。鴻海から669億円ぐらいが入る入らないの問題ではない。そんなはした金ではない。
 
工場も閉鎖統合すべきところは早急に行い、人員も2割~3割減する必要がある。鴻海には、10%分の株を持たせ、資本業務提携でのこれまでの方向性を持続すればよい、液晶部分だけ共同運営すれば済むことだ。当然、割当増資の調達資金は予定の1/3になろうが、金融機関が面倒見れば済むことだ。
 
銀行ほか金融機関が、これまでお世話になったシャープを見捨てるならば、早期に見捨てることだ。シャープは会社更生法でもかけて再建を目指し、採算ラインに乗るまで減量経営すれば、早期に立ち直れ、日航のように再上場も2~3年で可能であろう。
 
シャープが、社員を大事にするのは理解できるが、会社なくして社員はない。犠牲者をより少なくするためにも、減量採算経営のシナリオを描くことからスタートである。
 
金融機関が助けてくれるならば、その指示に従い、採算経営ラインまで、人員・工場閉鎖などのリストラを敢行すること、まずは、経営を採算ラインに乗せることである。
結果的に、金融機関の助けを求めても、会社更生法の適用申請をするにしても、減量経営せざるをえないことについては同じなのだ。最悪はシャープの経営者たちが、問題を小出しにすることだ。それでは抜本的な改善には至らず、今の状態をより悪化させるのみだ。銀行は相手にしないようになろう。
 
ロイターは、ある銀行関係者の話として「鴻海との提携はシャープがその部品会社になるということだ。あとはプラズマクラスター(空気清浄機)など環境製品を売っていく。それで銀行団も応援する」と語り、シャープの事業の選別を始めている。
としているが、下記表に見られるように、電子部品事業こそ切り離すべきであるが機器と連関しており、電子部品の部分を鴻海と連携すれば、当危機は乗り越えられる。また、機器部門こそ市場に見合った規模に縮小するにしても営業強化すべき部門である(外注比率を増加させることも考慮すべきである)。
ということで、上述の「ある銀行関係者の話」はいい加減な、シャープを馬鹿にしたような話である。
シャープのエレクトロニクス機器業績
液晶TV、携帯電話、冷蔵庫、エアコン、ブルーレイ、プラズマクラスター、LED
期/百万円
売上高
営業利益
備考
2008年3月期
2,291,706
79,218
何れも好調
2009年3月期
1,906,589
-33,769
リーマンショック、携帯低迷、液晶TV価格下落
2010年3月期
1,858,208
33,983
携帯低迷、液晶TV価格下落
2011年3月期
1,970,570
79,257
エコP効果
2012年3月期
1,630,999
51,008
欧州不振
2008年期と2012年期との売上高比較では28.9%減少している。
 
シャープの電子部品業績
TV用大型液晶パネル、携帯用中小液晶、携帯用CCD・CMOSイメージャ、太陽電池
期/百万円
売上高
営業利益
備考
2008年3月期
1,762,885
104,363
何れも好調
2009年3月期
1,520,162
-23,975
リーマンショック、携帯向け液晶、CCD等不振
2010年3月期
1,385,535
20,134
携帯向け液晶、CCD等不振
2011年3月期
1,554,017
30,728
エコP効果
2012年3月期
1,183,008
-54,699
欧州不振、大型液晶、太陽電池不振
2008年期と2012年期との売上高比較では32.9%減少している。
[ 2012年8月 7日 ]
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