なぜ任天堂はネットで叩かれるのか 後編
スマホ・SNSゲームは任天堂になれるか
しかし、マイクロソフトやソニーなどのコンシューマー機メーカーだけと競いあってる時代と違って、ゲーム市場の拡大を狙うSNSやスマホなどの企業らとも様々な競争を強いられているのは確かであろう。
任天堂を取り扱う記事の特徴として、
1、 スマホすごい
2、 SNSすごい
3、 円高無視
4、 2006年-2008年が基準
という「ヒットメーカとしての任天堂」が置き去りにされつつ「ハードホルダー」として批判され、
なぜか「ヒットメーカー」として勢いのあるスマホ・SNSに参入しろという矛盾したものが多い印象。
任天堂の岩田氏も辟易したのか、決算説明会のたびにSNSゲームとスマートフォンと、同社の商品との関連性を説明しており、スマートフォンは(海外で)意識しているが、日本のSNSゲームとは競合していない、などの資料を交えての発言を繰り返している。
※2011年10月28日(金)第2四半期決算説明会
ソーシャルゲームの影響に関しては、任天堂の業績が下り坂になったタイミングと、ソーシャルゲームが急速に普及したタイミングが重なりましたので、これは 因果だととらえておられる方が非常に多いと思います。ですが、私たちの業績が下り坂になっていることに対して大きな要因だとは私たちは考えていません。これは以前から繰り返しお話ししていますので、あえて同じ説明を繰り返すつもりはありませんが、その後も繰り返し調査をし続けていますが、ソーシャルゲームを遊んでいるかいないかで任天堂の携帯 型ゲーム機に対する遊び方の態度や頻度が変わるかというと、そういう有意な差がある統計データが出てきませんので、因果はないと思います。
確かに、任天堂には世界的に有名なキラーコンテンツ・キャラクター資産があるので、SNS・スマホにそれに近いか超えるキラーコンテンツが無い限り、任天堂が脅威に感じる必要性はない。
しかも、ゲームが好きな人ならわかるだろうが、スマートフォンに提供される従来型の格安なゲームは携帯型ゲーム機のシェアをいくらか削ってはいるが、SNSゲームが任天堂はもとよりCS(コンシューマー)ゲームの替わりになることはまずない。
それはゲーム好きほど、現状のSNSゲーやスマホゲーは物足りないからだ。
したがって、互いが取り合ってるのは、ライトユーザーやあまり既存のゲームをしない層※だといっていい。
※資料によればSNSゲームとパチンコは層がかなり重複している。
さらに、任天堂には誰にも奪うことのできない、ポケモン・マリオ率いる「キッズ層」があり、この層はプレイステーション全盛期をもってしても落とせなかった。
その鉄壁の層が、金を湯水のように使わせる前提の「SNSゲー」や、ネット契約必須の「スマートフォン」にとって、「打倒任天堂」というには、かなり高い障壁となっている。
もちろん、任天堂が得意とする多人数が顔をつき合わせ身体を動かしてプレイするパーティゲームは逆立ちしても参入できない。
結果、スマホがいくら普及してもネットが無料か格安にならない限り、SNS企業がいくら儲けても極悪課金を止めない限り、任天堂即終了~、とはならないのだ。
任天堂が終了するのは、同社がイノベーションを止めたときだけである。
任天堂の「復活」はあるのか
「世界的にも有名な企業が低迷している」というキーワードは、読者を掴むにはGoodFishingワードなので、しばらくはあちこちで「任天堂は終わった」という声が聞かれることは間違いない。
そして、彼らがいう「復活」が2006~2008年規模を指すのなら、Wiiが勝てるはずの無かったライバルハードがスタートに失敗したラッキーと、DSで脳トレブームを、Wiiでフィットネスゲームブームを生み出した稀に見ない偶然、その奇跡のような幸運を、また再現しないと、その「復活」はない。
だが、赤字の元凶であった採算割れしていた3DS(国内700万台セルスルー)が量産効果で逆ざやを解消しており、最終黒字がみこめる算段がついたとみられている。外に向けては韓国に続いて今秋にも台湾と香港で「3DS」を発売する予定。
さらに、年末には劣勢の海外市場で反転攻勢すべく据置き型次世代機「WiiU」が発売される。
戦略的にはいまだ不透明な部分が多いが、3DSに見られた「弱点※」には十分に対応すると思われる。
※ソフト不足、価格、ゲーマーへのマーケティング不足など
岩田氏の目が見据えているものは、マスコミ向けの「復活」ではなく、氏が倒産から立て直したHAL研究所で従事していたプログラミングのように複雑にはみえるがまっすぐな、任天堂が任天堂であり続けるための道ではないだろうか。
日本が誇る世界的ゲームメーカーとして、これからも頑張って欲しいものである。
(流石裕太)
任天堂は失敗から学んでいる=岩田社長、3DSの販売回復について語る-WSJ
2009年~2013年3月期
第1四半期決算ハイライト
http://www.nintendo.co.jp/ir/finance/2012_01.html
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2009年3月期
(2008年4∼6月) |
2010年3月期
(2009年4∼6月) |
2011年3月期
(2010年4∼6月) |
2012年3月期
(2011年4∼6月) |
2013年3月期
(2012年4∼6月) |
売上高
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423,380
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253,498
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188,646
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93,928
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84,813
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営業利益
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119,192
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40,401
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23,342
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△37,712
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△10,331
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経常利益
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176,892
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64,824
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△46,055
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△42,551
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△29,781
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四半期純利益
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107,267
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42,316
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△25,216
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△25,516
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△17,231
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1株当たり四半期純利益(円)※
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838.75
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330.90
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△197.19
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△199.54
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△134.75
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総資産
|
1,772,265
|
1,635,801
|
1,491,593
|
1,449,683
|
1,295,923
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純資産
|
1,211,481
|
1,198,700
|
1,199,045
|
1,210,998
|
1,141,015
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自己資本比率
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68.3%
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73.3%
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80.4%
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83.5%
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88.0%
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モバイル向けURL http://n-seikei.jp/mobile/
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