アイコン 高槻市の新生病院で多剤耐性緑膿菌により昨年11名死亡

大阪府高槻市の新生病院は6日、昨年、60代から90代の患者21人が、ほとんどの抗生物質が効かない「多剤耐性緑のう菌」に感染し、このうち11人は元の病気の悪化などで死亡したことと発表した。
昨年1月から12月にかけ、心臓病やがん、それに脳梗塞などのため入院や通院をしていた60代から90代の患者21人から「多剤耐性緑のう菌」が相次いで検出された。そして、このうち62歳から92歳までの男女11人が死亡したという。

ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性緑のう菌は、免疫力が低下している患者が感染すると肺炎などを起こして死亡することがあるが、病院は、死亡した11人のうち6人は元の病気の悪化が死亡の原因で、ほかの患者も細菌の感染が直接の原因とは考えにくいとしている。

一方、6人の患者から検出された細菌を詳しく調べたところ、遺伝子の型が同じだったということで、病院は院内感染とみて保健所に報告し、感染経路などを調べている。

新生病院の後藤研三病院長は「大変申し訳なく思っています。引き続き原因の究明と再発防止に努めます」と謝罪した。

<緑膿菌>
緑膿菌Pseudomonas aeruginosaは、長さが1.5~3.0μmのグラム陰性、好気性桿菌で、1本の鞭毛を使って動き回ることができる。また、多くの株が緑色の色素を産生し、このことが「緑膿菌」という名前の由来となっている。
土壌・水中・植物・動物(ヒトを含む)などあらゆるところから分離される常在菌で、ヒト・動物はもちろん、植物にも病気を起こすことがあるが、その病原性は低く、通常は緑膿菌がいても病気になることはほとんどない。
緑膿菌による感染が成立するためには、
 1)体の抵抗力が低下すること
 2)周囲に緑膿菌が生存しやすい環境があり、接触の機会が多いこと
 などが必要となり、健康な人は、体に一時的に入ってきても体の抵抗力によって自然に排除されるが、重度の火傷・外科手術・がん治療・移植手術などによって体の抵抗力が弱まった人に侵入すると、容易に感染、主に、肺炎、尿路感染症、術創部感染症、そして菌血症等を引き起こす。

<多剤耐性緑膿菌>
「多剤耐性緑膿菌」の最大の特徴は、その強力かつ広範な抗菌薬への抵抗性にある。
緑膿菌はもともと、他の細菌と比較すると抗菌薬に強い傾向があるために有効なものが限られており、以下の3系統の薬剤が"特効薬"として用いられている。
1)フルオロキノロン系抗菌薬:シプロフロキサシン、レボフロキサシンなど
2)カルバペネム系抗菌薬:イミペネム、メロペネムなど
3)アミノグリコシド系抗菌薬:アミカシンなど
 しかし、近年は上記の薬剤全てに耐性を持つ緑膿菌が現れ、これを「多剤耐性緑膿菌」と呼ぶようになった。
感染症法でも、「薬剤耐性緑膿菌感染症」として5類の定点把握疾患に指定している。これまでの研究で、薬剤耐性緑膿菌は、薬剤を分解したり、少し変化させたりして不活化する酵素を持っていることがわかっている。
これらの酵素は、もともと他の菌種が持っていたもので、「プラスミド」と呼ばれる遺伝子の運び屋によって緑膿菌に入り込んだと考えられている。メタロ-β-ラクタマーゼ(広域セフェム系・カルバペネム系耐性)、アミノグリコシドアセチル化酵素(アミノグリコシド系耐性)がそれに当たる。

また、緑膿菌がもともと持っていたやや作用の弱い薬剤分解酵素(AmpC型β-ラクタマーゼ)を過剰に産生して耐性を獲得する場合もある。
菌が自身を変化させ、薬剤が結合しにくくしてその作用から逃れられるようになる。これがフルオロキノロン系薬剤に対する耐性の主要な機序であることが明らかとなっている。
以上。

 新生病院は、1年間の間に原因究明を行っただろうが、発表すれば、評判を落とし、経営危機に陥るリスクもあり、長い間発表を避けてきたのであろう。
 医療器具にも付着した場合、薬剤では消滅しない多剤耐性緑膿菌もあり、医師たちが過失により感染を広めた可能性も否定できない。 
判明した時点で保険所などと早期に相談に対策を講じていれば、死なずにすんだ患者の命もあったと思われる。
 

[ 2014年1月 7日 ]
モバイル
モバイル向けURL http://n-seikei.jp/mobile/
スポンサード リンク

コメント

関連記事



PICK UP

↑トップへ

サイト内検索