アイコン 中国のシリコンバレー「中関村」  世界から集中するITクラスター 売上高45兆円

0919_02.jpg1999年に10年間の国家プロジェクトとして開発さ れた中国のシリコンバレーと呼ばれる「中関村」の入居企業は約18,000社。従業員総数は130万人、毎年10万人が純増。年間総売上高は約4200億 ドル(約45兆円)、海外からUターンした創業者だけで約2万人、創業初期企業3,000社、アクティブ・ベンチャーキャピタル企業100社、投資規模約 200億ドル(約2兆1000億円)。
「中関村」には、ハイテク企業しか入居できず、企業や海外帰国子女に対しては、特別優遇税制度が設けられている。総面積は320万㎡。

こ の地の代表格が、ゼロから創業して10年で中国最大の富豪に浮上した「百度」の李彦宏会長、彼のようなサクセスストーリーが相次ぎ、中国でのベンチャー投 資金の3分の1が「中関村」に集まり、産学共同で「創業→投資→上場・大企業へ跳躍→再投資」へとつながる創業生態系を好循環させている。

「中関村に本社や事務所を構える企業等」
IT企業の著名なところでは、百度のほかレノボ、小米など、
大学や研究所では、精華大、北京大、中国科学院電子学研究所、中国科学院計算技術研究所、中国科学院半導体研究所、中国科学院軟件研究所など、39大学が所在し、人材を輩出している。
海外からは1800社が進出してきている。
著名なところでは、IBM、マイクロソフト、インテル、モトローラ、ノキア、ヒューレット・パッカード、シマンテックなど
日本からも松下電器R&D(中国)有限公司、富士通R&D有限公司、NTTデータ北京有限公司など

「中関村」は、北京北西部の海淀区に位置し、1980年代初めに電子商店街から始まった。その後関連IT企業が集まり年を追うごとに領域が拡張され、1999年からは国家プロジェクトとして開発が進められてきた。
北側のソフトウェアパークと世界1位のPCメーカーのレノボ、“中国版グーグル”の百度がある上地通りから始まり、南に下りてくると“中国版アップル”と言われる小米、清華大学、清華サイエンスパーク、北京大学、創業通り、レジェンドキャピタル(レノボのベンチャー向け投資会社)、中国最大の創業インキュベーターのInnovation Works(創新工場)などが並んで入居している。小米だけでなく、レノボや百度もすべて「中関村」の片隅で創業し成功した企業。

「中関村」は、創業の熱気と人材供給、創業投資、成功ストーリーが、すべてに交わり好循環生態系を作り上げている。
「中関村管理委員会」は、米国のシリコンバレーなどから帰ってきた帰国創業者だけで2万人に達するという。その上、「中関村」地域内では、人材のバックヤードとして、北京大学、清華大学を筆頭に39の大学が豊富な人材を輩出、国の関連研究機関も集積し、産学協同の「中関村」となっている。

<中関村の精華大学>
「中関村」中心部に位置した清華サイエンスパークの地下にある「清華Xラボ」は、清華大学の学生だけでなく、清華大学出身者であればだれでも無料で利用できる創業インキュベーター施設となっている。清華大学の教授や投資専門家らが学生を対象に1対1で創業教育や相談までしている。
失敗したIT事業者に対し、エンジェルやベンチャーキャピタルの中には失敗経験がある創業企業を高く買う投資会社も多いといい、「中関村」はIT創業に至れり尽くせりの環境のようだ。

<中関村 百度>
中関村に本社を構える百度は、すでにグーグルのトップ画面をそのままコピーした“偽グーグル”ではない。
創業者の李彦宏(45歳、ロビン・リー)は、北京大学卒後、ニューヨーク州立大学へ留学。Dow Jones & Company,Inc.やInfoseekなどを経て、中国帰国後の2000年1月にBaidu, Inc.を中関村のみすぼらしいホテルの部屋で創業。インターネット検索技術提供業者としてスタートしたが、それから10数年で、昨年の売上高は約313億元(約5,500億円)、営業利益は約110億元(約1900億円)のIT大企業に急成長させている。
中国ポータル市場でのシェアは70%と圧倒。今では地図、動画、クラウド、通訳・翻訳、人工知能基盤の音声認識など、グーグルが行うウェブサービスはほとんど持っている。モバイルアプリサービスも中国内で絶対強者となっている。
百度のアプリストアは、中国のスマートフォン利用者の必須アイテムとなっている。ナビゲーションをはじめ1億人以上の利用者を持つアプリだけで14種類に達するという。
最近ではグーグルグラスと類似したスマートグラスと無人自動車まで開発している。グーグルの偽物を超えグーグルと競争を行っている。

<創業者たちの溜り場カフェの存在>「innoway」、インキュベーションの役割
清華大学と北京大学を過ぎ南に下りてくるとアスファルトの地面に「innoway」と書かれた名前の通りが現れる。「創業カフェ通り」などと翻訳されるこの通りには2011年4月に「車庫」という名前の創業者向けのカフェがオープンしてから、通りのあちこちに類似のカフェが次から次へ開業した。創業者がカフェを業務スペースとして使い、投資家と会って情報も交換する場となっている。

創業カフェ通りの路地のビル2階の車庫カフェは、800平方メートル規模。広い空間はテーブルごとにノートパソコンやデスクトップパソコンを付き、仕事に没頭する青年たちの熱気であふれている。テーブルごとに天井からぶら下がっている電源ケーブル。ドアの前には「1ギガ級インターネットサービスを提供」と提示している。
毎週金曜日の夕方には、投資家らとともに「アイデアコンテスト」を開き、製品化されたものを試演するロードショップイベントも月1回開催している。
当カフェ関係者によると、「ここの客はみんな創業に乗り出した人たち。過去3年間に投資家と出会ってカフェを出て行ったチームは130社あまり、年間売り上げ1億元(約17億円)以上の企業も4社に達する」という。

中関村には投資もあふれる。年間60億ドルを超える投資資金が中国内外から押し寄せる。中関村で成功した企業は再び中関村の後輩ベンチャーに投資する。レノボグループ系列のベンチャーキャピタルのレジェンドキャピタルが代表的な例となっている。
この会社は現在30億ドル規模のファンドを運用し200社以上の企業に投資している。中国では人材と技術さえ良ければ投資はいくらでも受けられる。投資よりも融資中心、創業者に無限責任を問い、信用不良者を作る創業者連帯保証のような制度は中国にはないという。
以上。

中国人は銭に熱いが仕事にも熱い。口から生まれたように自論を展開するが、アドバイスも納得すれば、素直に受け入れる。ただ、納得しない限り、自論を強烈に展開し、一方的に突き進む。やはりベンチャー魂と柔軟性も併せ持つ人たちが成功しているようだ。
ヒト・モノ・カネがあって始めて企業も社会も循環する。ITの世界では特にヒトや同業者・研究機関が重要だ。

日本のシリコンバレーは、ICアイランドとか呼ばれた九州があった。しかし、単に集積回路を製造していただけであり、今では、海外勢に淘汰され、多くの工場が閉鎖されているのが現実だ。言葉遊びに過ぎず、決してシリコンバレーではなかった。
以前、福岡を日本のゲームソフトの開発拠点にしようと大変熱心なゲーム開発会社の社長がいた。同業者ばかりか大学へも働きかけ、インキュベーション施設などインフラの充実も呼びかけ、福岡市も動かしていたが、どうなったのだろうか。
確かに、福岡市にはゲームソフト会社が多いが、何か癖のある経営者が多いようで、なかなか旨くいっていないようだ。レイトン教授に、こうした動きをしてもらえば、実現可能かもしれないが・・・。残念。


<中関村サイエンスパークの概要>
  「中関村」とは、北京市北西部・海淀区内に位置する地域・地名で、以前から北京大学や清華大学、中国科学院といった中国を代表する高等教育・研究機関が集まっていることで有名な場所。
  改革開放後の80年代、この場所で大学発ベンチャーブームが巻き起こり(国が貧乏で大学へ提供できる資金がなく、「自ら飯を食え」との大号令で大学が自ら稼ぐ大学ベンチャーを数多く創業させたことに始まる)、以後、研究開発は北京市郊外にも拡大した。現在、北京市内に点在する全10のパークが「中関村サイエンスパーク」に指定されている。
「中関村」という言葉は、今や一地名としてのみならず「中関村サイエンスパーク」、ひいては北京市全体のハイテク・先進産業を指す代名詞としても使われている。
中関村サイエンスパークには18,000社以上の企業が進出しているが、国内企業がその90%以上を占め、外資系企業数は1,600社(うち日系企業は130社)に留まる。
また、ハイテク企業以外の入園は認められていないのが大きな特徴で、これらの点は、外資企業・製造業を中心とする経済技術開発区との大きな違いともいえる。
また中関村サイエンスパークには、39の大学・213の研究所が集積しており、学生や研究者など優秀な人材が多数在籍している。大学生の中には将来パーク内の企業に就職する者も多いとのことで、国内の優秀な人材の受け皿としても大きく貢献している。
 このほか、首都という性格上、中国政府の方針や海外の情報を入手しやすいこと、さらに大消費地としての性格を持ち合わせていることが、北京に位置する中関村サイエンスパークならではの特徴といえる。

 

[ 2014年9月25日 ]
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