この埋め立ては、単に環礁を埋め立て自国領土とする目的ではなく、南シナ海全域を自国の領海だと、昔、中国で勝手に描かれた９段線内領海を主張するため、または実効支配することを目的としている。南シナ海には膨大な天然ガスや原油（推定埋蔵量110億バレル）が埋蔵されているとされ、その海域支配は自国のみの利益と主張する埋め立てでもある。

中国のこうした実行支配の埋め立ては、沿岸国や日本にとっても危険きわまる行為であるが、オバマ大統領はこれまで口先外交だけで何の手当ても行わなかった。その結果、中国側は口先など意にも介せず、何本も滑走路を作る事態に陥った。
アメリカでは、議会からもオバマ大統領は、イラク・シリア、アフガンの撤退問題を含む現状につき、その戦略が批判の目に晒されており、外交戦略では大きな窮地に陥っている。
一時、成功したかに見えたウクライナ問題にしても、ロシアの逆襲に合い、ウクライナ領土がロシア側に占領・実効支配されてしまった。ロシアへの経済制裁にしても欧州への影響が大きく、回復しかけていた欧州経済は、下降してしまった。ウクライナの停戦合意では、ドイツが主導し、アメリカはツンボさじきにされてしまった。
こうした外交での失敗が続き、南沙諸島の中国問題における今回の決定も、既に時を完全に失している。
それでも、中国の領土としての埋立地を完全否定する米艦船による航行は、止まることを知らない中国の習覇権主義者に対してそれなりの効果はある。

かつて、南シナ海は、日本が太平洋戦争に突入する原因となった海域でもある。フランスが植民地化していたベトナムの仏軍、米統治下のフィリピンにおける米軍、インドネシアを植民地化していたオランダ軍、タイ・マレーシアなどを植民地化していたイギリス軍により、南シナ海が実質封鎖され、エネルギー供給源の中東への航行が不可能になったことにあった。日本軍はその航行の確保を求め戦争に突入して行った。
現在の日本にとっても最重要海域だ。
中国は、本当にアメリカを怒らせてしまったようだ。次期政権しだいだが、最低でもオバマのような軟弱外交はない。