公正取引委員会は17日、軽油の販売価格を巡るカルテルを結んでいたとして、東日本宇佐美(東京)やENEOSウイング(名古屋)ら石油販売大手5社を独占禁止法違反(不当な取引制限)の容疑で検事総長に刑事告発した。東京地検特捜部は同日午後にも、法人としての5社を起訴する方針だ。公取委による刑事告発は、2021年の東京五輪談合事件以来、約3年ぶりの「伝家の宝刀」抜刀となる。
■ 密室で守られた「5割のシェア」
今回の事件の本質は、生活インフラを支える「燃料」という公共性の高い商品を、市場シェアの過半を握る巨大勢力が密室で私物化した点にある。
関係者によると、6社の担当者は都内の会議室などで会合を重ね、運送・建設業者向けの販売価格の「底上げ」を合意していた。日経的な視点で見れば、これは自由競争によるコスト削減努力の放棄に他ならない。本来、原油価格の高騰局面こそ、各社が調達網や物流効率で競うべき場面だ。しかし、彼らが選んだのは、競合他社と手を取り合い、一律に価格を吊り上げる「安易な利益確保」だった。
■ 物流「2024年問題」の背信行為
特筆すべきは、その悪質性だ。現在、物流業界は「2024年問題」に伴う人件費高騰と、燃料価格のダブルパンチに喘いでいる。建設業界もまた、資材高騰により収益が圧迫され、地方の零細業者は「明日をも知れぬ」経営を強いられている。
読売が追及する「社会の公器としての責任」に照らせば、こうした弱者の窮状を逆手に取り、中東情勢緊迫化という「正当な理由」を隠れ蓑にして不当な利益を貪った行為は、企業の倫理的破綻を意味する。公取委が行政処分で済ませず、刑事罰という最重の選択をした背景には、この「社会的弱者を狙い撃ちにした暴利」への強い怒りがある。
■ 「自首」が生んだ亀裂と今後の余波
一方で、太陽鉱油が課徴金減免制度(リーニエンシー)を活用し、真っ先に当局へ「自首」して刑事告発を免れた事実は、鉄の結束を誇ったカルテル集団の内部崩壊を象徴している。
今後、特捜部の捜査は価格吊り上げによる「不当利得」の規模解明へと移る。今回、担当個人の立件は見送られる公算だが、それは「組織ぐるみ」の体質が長年常態化していたことの証左でもある。
誰もが注視してきた地方経済の停滞。その一端が、こうした大手による不透明な価格操作に起因していたとすれば、これは単なる一業界の不祥事では済まされない。燃料高騰に苦しみ、倒産の淵に立つ地方の運送・建設業者に対し、起訴された5社はいかなる言葉で「償い」を語るのか。司法の審判が待たれる。