アイコン うつ病を科学的に治療する時代へ 理研の利根川進センター長ら

理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター 理研-MIT神経回路遺伝学研究センターの利根川進(ノーベル医学生理学賞受賞者)センター長、スティーブ・ラミレス大学院生らの研究チームは、うつ様行 動を示すマウスの脳の海馬の神経細胞の活動を操作して、過去の楽しい記憶を活性化することで、うつ様行動を改善させることに成功したと発表した。

一 日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しくない、などの症状を示すうつ病は、日本においても入院と外来合わせて約96万人もの患者がいると言われている (厚生労働省による2011年患者調査)。しかしながら、一般的に使われている治療薬の効果は個人差が大きく、うつ病の克服は容易ではない。
研究チームは2014年に、最新の光遺伝学を用いて、マウスの嫌な体験の記憶を楽しい体験の記憶に書き換えることに成功した。
「う つ病では、それまで楽しかったことが楽しくなくなるなど、過去の楽しい体験を正しく思い出せなくなる特徴がある。そこで、過去の楽しい体験の記憶に関わる 海馬の神経細胞を直接活性化することで、うつ病の症状を改善できないかと考えた」と研究チームを率いる利根川進センター長は述べる。

研究チームは、うつ状態に陥ったマウスの楽しい記憶を人工的に活性化することで、うつ状態を改善できないかと考えた。
まず、オスのマウスにメスのマウスと一緒に過ごすという楽しい体験をさせ、その時に活動した海馬の歯状回の神経細胞群を遺伝学的手法により標識した。
次に、そのオスのマウスに体を固定する慢性ストレスを与えることで、マウスは「嫌な刺激を回避する行動が減る」「本来なら好む甘い砂糖水を好まなくなる」といった、うつ様行動を示すことを確認した。
その後、このうつ状態のマウスの海馬歯状回で、楽しい体験の記憶として標識された神経細胞群を、光遺伝学の手法により人工的に活性化したところ、驚いたことにうつ状態の改善がみられた。

「今回の研究では、楽しい体験の際に活動した神経細胞群を直接活性化することで、マウスのうつ状態が改善することを初めて示した。この成果は、今後のうつ病の新しい治療法開発に役立つかもしれない。」と利根川センター長は期待している。
本研究は、英国の科学雑誌『Nature』(2015年6月17日付)に掲載された。

背景
ストレスの多い現代社会において、うつ病はよくある精神疾患の一つとなってきている。一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しくない、などの症状を示すこの病気は、日本においても入院と外来合わせて約96万人もの患者がいると言われている。しかし、一般的に使われている治療薬の効果は個人差が大きく、うつ病の克服は容易ではない。また、最近は薬だけではなく、精神療法や経頭蓋電磁刺激法といった治療法も試みられているが、未だ有効な治療法として確立されていない。
このように、うつ病の治療法の開発は現代社会における大きな課題となっている。

神経科学&行動科学が専門の利根川先生が、昨年発表していた論文は「光で記憶を書き換える」だった。
「嫌な出来事の記憶」「楽しい出来事の記憶」は海馬歯状回と扁桃体に保存される
「嫌な出来事の記憶」を「楽しい出来事の記憶」に置き換えることができる
海馬歯状回のシナプスの可塑性が記憶の書き換えに重要
以上を解明していた。

[ 2015年6月18日 ]
スポンサード リンク

 

コメントをどうぞ

関連記事

  • この記事を見た人は以下も見ています
  •  
  • 同じカテゴリーの記事です。
  •   
スポンサード リンク
 
JCNET注目記事!
安倍さんは戦後を終わらせようとしている(06/26 09:44) 2015:06:26:09:44:18
「心の病」で労災認定 過去最多の497人、(06/26 08:30) 2015:06:26:08:30:39
PR いま建設業界の求人が急増中、当サイトおすすめのワークポートが便利です。


PICK UP

↑トップへ