うるま沖の奇跡その2 正確無比な着水角度
事故直後の沖縄県副知事・安慶田光男氏の対応やコメントには同じ日本人として恥ずかしいかぎりでした。安慶田氏の対応には今回の事故を政治的に悪用しようという魂胆がミエミエで、分かり易いくらい正直に顔に現れていました。この人、根は正直者なのかもしれません。(笑)
それにしてもマスコミの墜落、墜落という報道には辟易させられます。
あれがほんとうに墜落なら5人全員の搭乗員の命は助かってないでしょうに。
きょうも、(農と島のありんくりん)さんの論者としての見識に感心するばかりです。
農と島のありんくりん
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/
移り変わる自然、移り変わる世情の中で、真実らしきものを探求する
墜落か不時着(水)かという不毛な論争はもう止めて、先にいきたいものです。
沖タイは、かつて米国で開発段階に関わったというリボロ氏まで登場させて、「墜落」説をしゃべらせています。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/76002
「また不時着と墜落の違いについて「機体の損傷度」と述べ、『傷が入っても機体が飛行可能な状態ならば不時着といえるが、破損した場合は墜落となる』と指摘。今回の事故について『空中給油機のホースが接触後も飛行可能な状態だったならば、基地に帰還する、あるいは機体に損傷を与えることなく水面に着陸していたはずだ』と述べ、「これは不時着でも緊急着陸でもない。墜落だ」と断定した。」
はい、「墜落と断定」だそうです。「断定」とは、こりゃまたオーバーシュート(行き過ぎ)なこと。
失礼ですが、リボロさん、あなは事故報告書を読みましたか?当該機の通信記録に目を通しましたか?当該パイロットと面談しましたか?詳細な事故機の写真は入手しましたか?
なにもしていませんね。できるはずがない。
なぜなら、事故調査が始まったばかりなので、報告書なんか地上に存在しませんから。
それなのに事故後数日で「墜落と断定」してしまう「航空専門家」がいる、ということ自体私には理解できません。
誰にも「断定」なんかできないのです。私も推測で言っているし、今はすべて蓋然性の範疇なのですよ。
推測だということを私は明言していますが、リボロ氏は「墜落と断定する」ときたもんだ。呆れてものがいえません。こういう人を専門家とよんではいけなません。
現時点で、利用できる1次証言はニコルソン中将のステートメントだけで、それを唯一の手がかりとするしかないのです。
え、なになに、そんな米軍ヤローの言うことなんか嘘に決まっているって。
おいおい。このようなリスク管理の初動において、危機管理のエキスパートである軍人が初回の記者会見で虚偽を言うと思いますか?
さる女性党首と違って、初回の記者会見の重みを知らなかったら、ニコルソン氏は即座に解任に値します。
虚偽を言って、後からバレるほど信頼関係を破壊する行為はないからです。
その場合日米関係の外交問題にまて発展します。
おそらくニコルソン氏は当該機と給油機の機長、管制官などの証言記録に目を通し、さらには軍病院に入院している当該機長や整備エンジニアなどとも面談してから、この記者会見に臨んでいます。
ですから現時点で、もっとも信憑性の高い証言はニコルソン中将のステートメントなのです。
おっといけない。もう一つ出てきました。航空評論家・石川潤一氏は、NSC(海軍安全センター)の発表を伝えています。
これが米海軍の公式な認識です。
Czzwoxxucaaobpf
”class A mishap MV-22 ditched off Okinawa during NVD training mission”
「クラスA事故 MV-22 は夜間給油訓練中のディッチ(不時着水)による。」
後に事故報告書が出るまで、あえて暫定的にとお断りしておきますが、「墜落」ではなく「不時着水」が米軍のオフィシャルな見解です。
遠い米国から沖タイ記者の伝える情報だけでものを言っているリブロ氏と、海軍安全センターの公式発表のどちらを信じるかは、あなた次第ですが。
さて、リボロ氏が言うように「傷が入っても機体が飛行可能な状態ならば不時着といえる」そうですが、飛行可能でした。
このリボロ氏は、オスプレイの主任分析官という肩書でひんぱんに反オスプレイ・キャンペーンに登場する人物で、オスプレイ反対派のネタ元です。
彼はオスプレイがオートローテーションできないことが、FAA(米連邦航空局)の要件を充たしていない、と主張し続けた曰く付きの人物で、後にそれが覆ったためか退任した人物です。
オスプレイは、森本敏『オスプレイの真実』によれば、オートローテーションに関わる機能は有しています。
「オスプレイのマニュアルによれば、両エンジン出力喪失時の処置としては、降下時にとりうる飛行形態は、滑空、またはオートローテーションの2通りであり、その時点での飛行状態により、いずれかを選択する。」
この事故を起こしたオスプレイは、事故発生時に固定翼モードでした。
ナセル角0度ですので、この場合滑空を選択し、グライダーのように降下して着陸します。
ただし、当該事故機は右エンジンは無事でしたので、これを止めたか、そのまま貴重な推力として動かし続けていたのかは、今の時点ではわかりません。
とまれ、リボロ氏がいうように、「飛行不可能なほど破壊されていた」というのは根拠がありません。
ちなみに、ナセル角度が60度以上なら、オートローテーションを選択しますが、CH46(47)のような大型ヘリと同様、着地すれば自重が重たいために破損してしまいます。
リボロ氏をネタもとにして、「オスプレイはオートローテションができない欠陥機だ」と言っている人がいまでもいますが、それは間違いです。
先日、沖タイに登場したリムピースの人もそんなことを言っていましたが、いつまで同じことを言っているんでしょうかね。
ちなみにこのリムピースは、横須賀軍港を常時看視して、中国やロシアが随喜の涙をながすような情報をHPに掲載しているスパイ団体、もとい平和団体です。
それはさておき、正しくは、できるが他の大型ヘリと一緒で、壊れる可能性が高いのです。
第一、今回の事故時は固定翼モードでしたので、オートローテーションは無関係です。
リボロ氏は「飛行不可能だったから墜落だ」と「断定」しますが、飛行不可能ということは機体がパイロットの操縦不能な状況だったということです。
ならばどうして、海岸浅瀬の岩場に滑り込むような着地(水)し、乗員全員無事なような曲芸が可能だったのでしょうか。
不時着水は大変に高度な技術なのです。
突っ込み角度が深ければ、機首から突入することになり大破します。
逆に浅ければ、機尾から接地して胴体がバラバラになります。
また、正確な水平状態を維持しないと、傾けば翼から傾くようにして大破します。
正しい不時着(水)の模範が、「ハドソン川の奇跡」のチェスリー・B・サレンバーガー機長が操縦したUSエアウェイズ機(1549便)の例です。
映画でご覧になった方も多かったと思います。
バードストライクでエンジンが停止し、飛行場に戻ることを断念し、市街地に落とさないために、ハドソン川に不時着水しました。
ま
ったく今回のオスプレイの事例と同じです。
着水時の機体パラメータは以下の通りです。(カッコ内はメーカーの示す値)
・速度125kt(118kt)
・ピッチ角:9.5度 (11度)
・ロール角:0.4度
・経路角:マイナス3.4度(マイナス1度)
・降下率:12.5fps [750fpm](210fpm)
・迎角:13~14度
不時着水ですから、衝撃をなるべく抑えるために、通常の着陸角度よりも浅い角度で着水したのではなく、機首上げ操作で降下率を抑えながら操縦していたようです。
しかし、推力がないために降下率が大きく、まぁよくこれできれいに水上に滑りこんたものだと関心させられます。
参考資料http://flyfromrjgg.hatenablog.com/entry/miracle_on_the_hudson
このピッチ角11度というのが重要で、この角度が浅くても深くても機体は大破して、多くの死傷者を出すことになります。
今回の事故において、機体は機首から破断し主翼ももげてていますが、機体全体はきれいなままです。
この大破の原因は、一説ではクラシャブル構造であるとか、海岸の岩場に事故後にぶち当たっって流されたためだという説もありますが、はっきりしたことは不明です。
※[追記]コメントでご教示いただきましたので追加します。ありがとうございました。
「サンボーン少将: はい、閣下。波の活動だけで機体が分解されていきました。」http://tkatsumi06j.tumblr.com
大事なことは胴体が完全に保全されているということです。
これはとりもなおさず、正しい進入角度、おそらくはピッッチ角11度にちかい「黄金の侵入角度」で浅瀬に突入したことを現しています。
官姓名はわかりませんが、脱帽します。この人物はすばらしい腕と胆力の持ち主です。
このような針の穴を通すような不時着水が、リブロ氏が言うような「飛行不能」な機体でできるはずもないではないですか。
オスプレイはパイロットの冷静沈着な操縦技術によって「着陸」(ニコルソン氏の表現)させたのです。
それゆえ、私はこの事故を、「ハドソン側の奇跡」の故事にならって、あえて「うるま沖の奇跡」と呼びます。
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