米国ではサービス産業を中心にまだ強いインフレ圧力下にあり、3月21・22日に開催されるFOMCの金利決定会合で0.5%上昇が見込まれていた。
(なお、前回記事では22年の日程を記載、ここに修正します)
しかし、今回の銀行破たんにより金融システムの脆弱性が露見、前回同様0.25%の上昇、もしくは見送りの公算も出てきている。
一連の米銀行破たんの動きに、
円は高騰、136円台から133円台(14日は133~134円)に、
原油価格は下げ7日の80ドル台から14日には74ドル台(WTI)に。
一方、仮想通貨は金利上昇が一服すると見て急騰している(BTCは11日一時2万ドル割れ、14日には2.4万ドル台まで急騰している)。
ただ、NYダウは8日332百ドルから13日も▲90ドル安の31,819ドルで引けている。
銀行破たんは金融システムの問題、今回の破綻の影響が見えず市場は疑心暗鬼になっているようだ。
米シリコンバレー銀行(SVB)は、資金需要が旺盛な年度末に顧客の引き出しが集中、払い出し金を用意できず、本来売却する予定のない資産の債権を売却して資金調達、そのため売却損が▲18億ドル(約2400億円/135円/第4四半期)発生した決算となり、そうした四半期決算を発表したところ、預金を引き上げる顧客が急増、同行はさらに資金不足に陥り、金融当局が営業を停止させた。
シリコンバレー銀行の預金量は約23兆円(135円換算/日本地銀トップの横浜銀行の預金量は約17兆円/規模は決して小さくない)。
シリコンバレー銀行はスタートアップ企業に対する投融資が大きく、またスタートアップ企業の預金も大きいという特徴ある銀行(シリコンバレーのスタートアップ企業の半数以上が取引しており、シリコンバレーの新興企業の資金源ともなっていた)。
新コロナと高金利に既存企業が投資を控えスタートアップ企業の多くが窮地に陥っているのも事実、そのため預金の引き出しが急増していた。
2行とも預金者は一時的に引き出しができなくなっていたが、当局の指示で13日から営業窓口再開して引出しは可能となっている。
米金融システムは、銀行が債券を保有し、債券が値下がりした場合、損失を出さないように仕組んでおくのだが、トランプ政権時代の2018年に銀行に対する規制緩和が図られたことにより、今回の債権の巨額売却損を発生させる原因ともなった。
そのため、今回の問題を受け、金融当局は再度金融機関の規制を強化する動きとなっている。
米金融当局(財務省とFRB)は預金者保護の立場を打ち出しているが、海外の特に英国では180あまりのスタートアップ企業が預金を引き出せず、倒産の危機に陥っているとして英財務省に対して預金保護と払い出しを求めていた。
14日英銀行大手のHSBC(元香港上海銀行)が、SVB銀行の英法人を1ポンド(161円92銭)で買収し、預金者を保護すると発表した。
英財務省とイングランド銀行の要請に基づくもので決定が早かった。なお、買収額には関係するSVB米本社分の債権債務は入っていない。
<仮想通貨と連動した銀行の破綻>
シリコンバレー銀行はスタートアップ企業をターゲットとした預金と貸し出しを主業とする銀行だが、同行に限らず、仮想通貨と銀行間との取引を主業としている2行も営業停止している。
NYのシグネチャー銀行は当局から営業停止命令を受け、シルバーゲート銀行は親会社が営業を停止させ任意整理に入った。
仮想通貨は今年に入り急上昇したものの、昨年末まで米基準金利が大幅に上昇し続け、一貫して下落、年末はほとんど動かなくなり固まっていた。
そうした中での預金の払い出しが増加し、手元流動性資金では間に合わず、資産の債権を売却し、シグネチャー銀行も▲10億ドル(約1350億円)の売却損を発生させていた。
<銀行間取引も多く連鎖防止に緊急調査に入る>
米金融当局は、今回の2行の銀行破綻により、ほかの銀行へ波及しないよう、金融機関に対して緊急調査に乗り出した。取り付け騒ぎは噂でも即広がり、調査に入ることで当局は沈静化させることができる。
<投資ファンドの問題へ波及も・・・>
ほか投資ファンドは投資家に投資先の債権を商品化して販売しているが、高金利下、さらに高い金利を保証しなければファンドには資金が集まらなくなる関係にある。
そうした債権の中にはリスクが高い債権も多く入っており、配当どころか、償還期にマイナスになる可能性も出てきている。
投資ファンドの債権先が破綻し、巨額ともなれば投資ファンドは危機に陥り、連鎖する可能性すらある。
投資ファンドが破綻した場合、投資を受けている企業も借り換えの債権発行ができなくなる恐れも出てくる。
米金利はインフレ退治にさらに上昇機運にあるが、米国の金融システムさえすでにおかしくなりかけている現実が生じてきている。
金融当局はこれまで管理下に置いていた金融機関だけではなく、仮想通貨市場も管理する必要が生じてきている。当然、仮想通貨市場の規制強化ともなる。
米国では今後とも、インフレ退治の金利高は続き、識者によるとインフレ退治には6%以上に引き上げる必要性も論じられており、今回のような金融パニックを引き起こす可能性も出てきた。
<眼下、バイデン政権のインフレ促進策>
戦争特需=米軍事企業はウクライナ特需でフル操業中、
CHIPS法による半導体企業の建設ラッシュ、
IRA法によるEV用バッテリ-工場の建設ラッシュおよび自動車販売好調
という底堅い動きが一方にある。
もともと景気の基調として新コロナ経済回復があり、プラスして1.9兆ドル(2021年)という巨額のバイデン新コロナ経済対策、それに加え露制裁という強いインフレ圧力がかかっており、金利上昇策だけではなかなかインフレ退治は難しくなってきている。
さらに今春から伏兵の中国経済の急回復が予想されており、国際商品価格=物価=インフレが上昇・急騰する可能性も指摘されている。
ゴールドマンサックスなど大手金融機関の投資家向け報告書では、今年6月にも原油が逼迫しだし価格が再度100ドル以上に上昇すると警告している。
以上、
米国のGDPでの消費割合は70%余り。
スクロール→
米国の各種インフレ率
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参考
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|
基準
|
インフレ率
|
平均賃金
|
|
金利
|
全体
|
コア
|
食料
|
サービス
|
時間給
|
21/9月
|
0.25
|
5.4
|
4.0
|
4.6
|
3.20
|
$
|
21/10月
|
0.25
|
6.2
|
4.6
|
5.3
|
3.65
|
|
21/11月
|
0.25
|
6.8
|
4.9
|
6.1
|
3.77
|
|
21/12月
|
0.25
|
7.0
|
5.5
|
6.3
|
4.01
|
26.7
|
22/1月
|
0.25
|
7.5
|
6.0
|
7.0
|
4.58
|
26.8
|
22/2月
|
0.25
|
7.9
|
6.4
|
7.9
|
4.80
|
26.9
|
22/3月
|
0.50
|
8.5
|
6.5
|
8.8
|
5.12
|
27.0
|
22/4月
|
0.50
|
8.3
|
6.2
|
9.4
|
5.37
|
27.1
|
22/5月
|
1.00
|
8.6
|
6.0
|
10.1
|
5.74
|
27.3
|
22/6月
|
1.75
|
9.1
|
5.9
|
10.4
|
6.22
|
27.4
|
22/7月
|
2.50
|
8.5
|
5.9
|
10.9
|
6.25
|
27.5
|
22/8月
|
2.50
|
8.3
|
6.3
|
11.4
|
6.81
|
26.6
|
22/9月
|
3.25
|
8.2
|
6.6
|
11.2
|
7.37
|
27.8
|
22/10月
|
3.25
|
7.7
|
6.3
|
10.9
|
7.20
|
27.9
|
22/11月
|
4.00
|
7.1
|
6.0
|
10.6
|
7.20
|
28.1
|
22/12月
|
4.50
|
6.5
|
5.7
|
10.4
|
7.52
|
28.2
|
23/1月
|
4.50
|
6.4
|
5.6
|
10.1
|
7.60
|
28.3
|
23/2月
|
4.75
|
|
|
|
|
28.4
|