
大村市新庁舎(庁舎棟)建設工事は、大林組・西海建設・高瀬建設JVが予想通り落札した。
入札前から業界内で有力視されていた組み合わせが、そのまま落札者となった。
もちろん、それだけで不正があったと断定することはできない。
しかし、市民から疑問の声が上がっている以上、大村市が「適正に入札を執行した」と繰り返すだけでは、説明責任を果たしたことにはならない。
では、行政側の説明が十分なのか、審査過程に不自然な点がなかったのかを、誰が検証するのか。
その責任を負っているのが、大村市議会ではないのか。
市議会は契約案件の追認機関ではない
市議会は、市長が提出した議案を黙って承認するための機関ではない。
市民の代表として、市の予算執行や契約手続、事業者選定が公正かつ適正に行われたのかを監視する役割を負っているのが市議会なのである。。
新庁舎は、単なる大型建築物ではない。
平常時には行政サービスの中枢となり、大規模災害時には市民の生命と暮らしを守る防災拠点となる。
巨額の税金を投じる以上、工事価格だけでなく、施工体制、企業の法令順守、安全管理、過去の事故や行政処分への対応まで、厳しく検証されなければならない。
大林組は、広島市において令和8年7月10日から8月9日まで、1か月間の指名停止措置を受けているが、大阪府岸和田市では7月10日から10月9日(3ヶ月間)の指名停止が続いている。
その対象となったのは、工事現場で発生した労働災害をめぐり、労働基準監督署に事実と異なる説明をしたとされた問題である。
令和8年3月24日には、大林組と同社社員2人に対し、労働安全衛生法違反による罰金刑の略式命令が出されている。
問題は、大林組が指名停止を受けたという事実だけではない。
大村市がこの事案をいつ把握し、どのように検討し、どのような理由で新庁舎建設工事の代表企業として問題がないと判断したのかである。
そして市議会が、その判断過程を本当に確認したのかということである。
市議会は何を確認したのか
大村市議会の各議員に問いたい。
大林組に対する広島市の指名停止措置を、落札決定前に把握していたのか。
大林組及び同社社員に罰金刑の略式命令が出されていたことを知っていたのか。
市が行った入札参加資格審査の内容を確認したのか。
今回の事案について、市の契約担当部署から説明を受けたのか。
安全管理上の問題や法令順守体制について、担当部局に質問した議員はいるのか。
議会として、審査記録、内部協議資料、入札参加資格確認書類などの提出を求めたのか。
何も確認せず、「市が適正に審査したと言っているから問題ない」としているのであれば、それは監視ではない。
行政判断の追認にすぎない。
「違法ではない」で議論を終わらせるな
広島市による指名停止の効力が、大村市の入札に当然に及ぶとは限らない。
そのため、大林組JVの参加や落札が直ちに違法であると断定することはできない。
だが、市議会が確認すべきなのは、単に「参加を排除する法的根拠があったか、なかったか」だけではない。
市民の防災拠点を任せる相手として、本当に適格だったのか。
事故発生後の報告をめぐって刑事処分を受けた事案を、市はどの程度重大に受け止めたのか。
その企業を代表構成員とするJVを落札者とするに当たり、通常以上に慎重な審査を行ったのか。
その判断を裏付ける客観的資料は存在するのか。
「違法ではない」という最低限の説明と、「市民が安心して任せられる」という説明は、まったく別物である。
公開すべき資料を公開せよ
大村市が本当に公正かつ適正に審査したというのであれば、可能な範囲で次の資料を公開すべきである。
• 入札参加資格の確認・審査記録
• 大林組に対する他自治体の指名停止措置を把握した時期
• 罰金刑の略式命令に関する市内部の検討記録
• 契約、技術、安全管理及び法務の各部門による協議の有無
• JV各社の評価内容及び評価理由
• 入札参加者ごとの評価項目別得点
• 審査委員の構成、選任理由及び利害関係の確認状況
• 落札者決定に至る会議録、議事要旨及び決裁文書
• 落札後の安全管理・法令順守を担保するための措置
企業の正当な営業秘密や個人情報を保護する必要がある部分は、適切に非公開とすればよい。
しかし、それを理由に審査過程全体を見えなくしてよいわけではない。
税金を支払う市民には、なぜこのJVが選ばれたのかを知る権利がある。
議員は自分の言葉で説明できるのか

今後、大村市議会で関連議案や契約変更、追加予算などが審議される場面も想定される。
そのとき議員は、執行部が用意した説明を聞くだけで賛成するのか。
それとも、市民の疑問を代弁し、審査資料の提出を求め、必要な質問を尽くしたうえで判断するのか。
問われているのは、大林組・西海建設・高瀬建設JVだけではない。
発注者である大村市の姿勢であり、それを監視する市議会の存在意義である。
入札前から名前が取り沙汰されていたJVが、実際に落札した。
だからこそ、市は通常以上に丁寧に説明し、市議会は通常以上に厳しく検証しなければならない。
市民が求めているのは、根拠のない疑惑の拡散ではない。
疑惑を招かないための情報公開であり、客観的資料に基づく説明である。
議会が沈黙すれば、「市議会は行政の追認機関なのか」という疑問は、さらに大きくなるだろう。
大村市議会は、いまこそ市民の代表として動くべきである。
「予定通り」の落札を、「問題なし」の一言で終わらせてはならない。
JC-net・日刊セイケイ編集長 中山洋次