犬は減ってもトリミング需要は拡大 「保管業」10年で4割増、ペット美容代も上昇
国内で犬の飼育頭数が長期的に減少する一方、トリミングサロンをはじめとするペット関連サービスの事業所は増加を続けている。ペットを「飼う」世帯の拡大から、1頭により多くの費用をかける市場へと、ペットビジネスの構造が変化している。
環境省に提出された全国ペット協会の資料によると、第一種動物取扱業のうち、トリミングサロンやペットホテルなどが含まれる「保管業」の登録数は、2014年の2万2575件から2024年には3万1629件へ増加した。10年間で9054件、率にして約40%の増加となる。
一方、ペットショップやブリーダーなどが含まれる「販売業」は、2014年の2万846件から2024年の2万2334件へ約7%増にとどまった。2014年には販売業と保管業の差は約1700件だったが、2024年には約9300件まで拡大した。
| 年 | 販売業 | 保管業 |
|---|---|---|
| 2014年 | 20,846件 | 22,575件 |
| 2019年 | 21,069件 | 27,420件 |
| 2024年 | 22,334件 | 31,629件 |
| 2014年比 | 約7%増 | 約40%増 |
※「保管業」にはトリミングサロンのほか、ペットホテル、ペットシッターなどが含まれるため、登録数をそのままトリミングサロンの店舗数とみなすことはできない。顧客から動物を預かってトリミングを行う事業は、原則として第一種動物取扱業の「保管」の登録対象となる。詳しくは環境省の動物取扱業者に関する制度を参照。
犬は10年間で約140万頭減少
事業者の増加とは対照的に、トリミングの主要顧客となる犬の飼育頭数は減少している。
ペットフード協会の調査を基にした資料によると、2014年に約820万頭だった犬の推計飼育頭数は、2024年には約679万6000頭まで減少した。10年間で約140万頭、率にして約17%の減少となる。2025年は約682万頭とわずかに持ち直したものの、長期的には低い水準が続いている。
犬の飼育頭数が約17%減少する一方、トリミングサロンなどを含む「保管業」は約40%増加した。
この逆方向の動きは、ペット市場が「飼育頭数の増加」だけでは説明できなくなっていることを示す。背景にあるのが、ペット1頭あたりにかける支出の増加だ。
ペット市場は2兆円規模へ
矢野経済研究所の「2026年版 ペットビジネスマーケティング総覧」によると、2025年度の国内ペット関連総市場は前年度比2.1%増の1兆9504億円と推計されている。
犬猫の新規飼育頭数が大きく伸びないなかでも市場規模は拡大しており、商品の高付加価値化や値上げに加え、ペットの家族化を背景とした「1頭当たり支出額の増加」が市場を押し上げている。2028年度には2兆317億円まで拡大すると予測されている。
トリミング料金も上昇
トリミング料金も上昇している。中小企業基盤整備機構のJ-Net21が総務省「小売物価統計調査」を基にまとめたデータによると、全国の「ペット美容院代」の平均料金は2019年の6131円から2024年には6989円となり、5年間で約14%上昇した。
| 項目 | 2019年 | 2024年 | 増加率 |
|---|---|---|---|
| ペット美容院代 | 6,131円 | 6,989円 | 約14%増 |
ペットの飼育頭数が増えなくても、定期的なシャンプーやカット、爪切り、歯磨き、エステ、高齢犬向けケアなどの利用が増えれば、1頭から生まれるサービス需要は積み上がる。
トリミングサロンも従来の独立店舗やペットショップ併設型だけでなく、動物病院への併設、移動式トリミングカー、訪問型サービスなどへ形態が広がっている。
増える店舗、競争激化も
ただ、市場が拡大しているからといって、すべてのトリミングサロンが恩恵を受けられるとは限らない。顧客となる犬の飼育頭数が長期的に減るなかで、保管業の登録事業所は増え続けており、1店舗当たりでみれば顧客獲得競争が強まっている可能性がある。
トリミングは定期利用が期待できる一方、技術者であるトリマーの確保が必要で、人件費に加えて電気、水道、シャンプーなどの材料費、設備費、テナント賃料も発生する。料金を引き上げれば採算改善につながるものの、周辺店舗との価格競争も無視できない。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、トリマーのハローワーク求人賃金は2024年度平均で月20万9000円。店舗運営では、技術を持つ人材を確保しながら採算を維持できるかも重要な課題となる。
「ペットを売る」から「ペットにサービスを売る」市場へ
数字から見えてくるのは、国内のペット市場が、生体販売を中心としたビジネスから、すでに飼われているペットに継続的なサービスを提供する市場へ比重を移していることだ。
2014年から2024年に犬の飼育頭数が約17%減少する一方、トリミングサロンなどを含む保管業は約40%増加した。さらに美容料金も上昇し、国内ペット市場全体は2兆円規模に近づいている。
「ペットを売る」だけではなく、美容、健康、介護、預かりといったサービスを1頭に繰り返し提供するビジネスへ――。トリミング業界は、ペットを家族の一員として扱う消費者意識の変化を追い風に成長してきた。一方で、事業所の急増による競争も進んでおり、今後は固定客を確保できる店舗と、価格や人件費の上昇に耐えられない店舗との二極化が進む可能性もある。





