会社が倒産・破産したときに確認すること 従業員・取引先・利用者が最初に取るべき対応
勤めていた会社が突然営業を停止した。給料が振り込まれない。納品した商品の代金が支払われない。予約金や回数券が残っている――。
会社の倒産によって影響を受けるのは、経営者や金融機関だけではない。従業員、取引先、利用者など、会社に関わっていた多くの人が、生活や事業上の問題に直面する。
こうしたときに優先すべきなのは、会社への批判や責任追及ではなく、現在どの段階にあり、いつまでに何をしなければならないのかを確認することである。

「事業停止」と「破産開始決定」は同じではない
倒産情報を見る際には、まず手続きの段階を確認したい。
「事業を停止した」「弁護士に事後処理を一任した」「自己破産申請の準備に入った」という段階では、裁判所による破産手続きが始まっているとは限らない。
会社や代理人が裁判所へ破産を申し立てた後、裁判所が内容を審査し、要件を満たしていると判断した場合に破産手続開始決定が出される。破産手続きが開始されると、通常は破産管財人が選任され、会社の財産を換価し、法律に従って債権者への配当を行う。
最初に確認したいのは、次の事項である。
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会社の正式名称と所在地
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破産手続開始決定の有無
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申立先または決定を出した裁判所
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事件番号
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破産管財人または申立代理人の氏名・連絡先
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債権届出期限
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債権者集会や財産状況報告集会の日時
新聞記事やインターネット上の情報だけで判断せず、会社から届いた通知、破産管財人の案内、裁判所の公告などを確認することが重要である。
従業員は給料と雇用保険の手続きを確認する
会社が倒産した場合、従業員は未払い給料だけでなく、離職票、退職証明書、雇用保険、健康保険、年金など、複数の手続きを進める必要がある。
まず、次の資料を手元に残しておきたい。
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雇用契約書、労働条件通知書
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給与明細
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タイムカードや勤務表
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給料が振り込まれていた通帳
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会社とのメールやメッセージ
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解雇通知書、退職証明書
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未払い給料や退職金の金額が分かる資料
会社の事務所に入れなくなったり、担当者と連絡が取れなくなったりすると、後から資料を集めることが難しくなる。手元にある資料は処分せず、紙とデータの両方で保存しておきたい。
未払い給料には立替払制度がある
会社の倒産によって給料を受け取れないまま退職した労働者には、国の「未払賃金立替払制度」が利用できる場合がある。
対象となるのは一定の条件を満たした定期給与と退職金で、賞与は含まれない。立替払額は未払賃金総額の8割だが、退職時の年齢に応じた上限が設けられている。また、破産手続開始決定などの日から2年以内に請求する必要がある。
法律上の倒産では破産管財人などによる証明が必要となり、事実上の倒産では労働基準監督署長の認定が必要になる。
未払い給料がある場合は、会社からの連絡を待ち続けるのではなく、早めに最寄りの労働基準監督署へ相談したい。制度は全国の労働基準監督署と労働者健康安全機構が取り扱っている。
離職票が届かないときはハローワークへ
雇用保険の基本手当を受けるためには、原則として離職票を提出し、ハローワークで求職の申し込みを行う必要がある。
会社が手続きを行わず、退職後も離職票が届かない場合は、本人確認書類と退職したことが分かる資料を持って、住所地を管轄するハローワークへ相談できる。厚生労働省は、会社へ交付を求めても退職後10日を過ぎて届かない場合には、早めにハローワークへ相談するよう案内している。
離職票に「自己都合退職」と記載されているものの、実際には倒産や解雇による離職だった場合は、そのままにしてはいけない。解雇通知書、会社からのメール、倒産に関する通知などを提示し、ハローワークの窓口で事情を説明する必要がある。離職理由は、雇用保険の給付条件や給付日数に影響する場合がある。
取引先は債権額と証拠書類を整理する
商品を納品したのに代金が支払われていない、工事を終えたのに工事代金を受け取っていないという取引先は、売掛金や請負代金などの債権を整理する必要がある。
確認するのは、請求額だけではない。
契約日、納品日、支払期日、入金済みの金額、返品された商品、相殺できる債務の有無などを整理し、契約書、注文書、請求書、納品書、検収書、通帳、メールなどの資料を保存しておきたい。
破産管財人から破産手続開始通知書と破産債権届出書が届いた場合は、必要事項を記載し、請求書などの証拠書類の写しを添えて、指定された期限までに破産管財人へ提出する。
裁判所は、期限内に債権届出をしなかった場合、配当を受けられないことがあるとして注意を促している。
自社が債権者であるにもかかわらず通知が届かない場合は、放置せず、破産管財人や申立代理人に債権者として把握されているかを確認したい。
ただし、債権届出をしたからといって、代金の全額が戻るとは限らない。会社に残っている財産や優先される債権の状況によっては、配当がない場合や、ごく一部にとどまる場合もある。
債権額が大きい場合、所有権留保、担保、相殺、仕掛品や預けている商品などが関係する場合は、自己判断で処理せず、早い段階で弁護士へ相談した方がよい。
利用者は予約金、回数券、前払金を確認する
エステ、学習塾、結婚式場、旅行会社、スポーツクラブ、住宅会社などが倒産すると、利用者が支払った予約金、入会金、回数券、受講料、工事代金などが戻らないことがある。
破産手続開始決定後は、会社の財産が破産管財人の管理下に置かれるため、元従業員や店舗へ直接返金を求めても、支払いを受けられるとは限らない。一般的には、利用者も債権者として破産管財人へ債権を届け出ることになる。
契約書、領収書、会員証、回数券、振込記録、カード利用明細、サービスを受けた回数が分かる資料などは保存しておきたい。
前払金は、破産手続きによって全額返金されるとは限らず、実際には回収が難しい場合がある。
一方、旅行業など、業種によっては営業保証金や弁済業務保証金などの制度が利用できる場合もある。すべての業種に共通する制度ではないため、契約したサービスの種類ごとに確認が必要である。
クレジット払いはカード会社にも連絡する
サービスを受けていないのに、クレジットカードの分割払いやローンの引き落としが続いている場合は、カード会社や信販会社へ早急に連絡したい。
契約内容などの条件を満たせば、今後の支払いの停止を求める「支払停止の抗弁」を主張できる場合がある。ただし、支払い停止が認められるかどうかは契約内容によって異なり、すでに支払った金額が返金される制度ではない。
一括払いの場合も対応はカード会社によって異なるため、利用者自身で支払いを止めるのではなく、カード会社へ事情を説明して対応を確認する必要がある。
判断に迷った場合は、消費者ホットライン「188」に電話すると、最寄りの消費生活センターなどにつながる。
SNSの情報だけで判断しない
会社が倒産すると、SNSやインターネットのコメント欄には、経営者や会社に対するさまざまな情報が書き込まれる。
しかし、「社長が資産を隠した」「計画倒産だった」「夜逃げした」といった書き込みが、事実であるとは限らない。
確認できない情報を広めても、未払い給料や売掛金が回収できるわけではない。実名を挙げた誹謗中傷や断定的な投稿は、新たなトラブルにつながる可能性もある。
まず確認すべきなのは、破産手続きの段階、破産管財人の連絡先、債権届出期限、未払い給料や契約内容である。
困ったときの主な相談先
従業員の未払い給料は労働基準監督署、雇用保険や離職票はハローワーク、消費者の前払金やカード払いは消費生活センターが主な相談先となる。
取引先の売掛金、担保、相殺、契約解除など、法律的な判断が必要な場合は弁護士への相談を検討したい。
相談先が分からない場合は、法テラスが法制度や適切な相談窓口を案内している。収入や資産などの条件を満たす人を対象とした無料法律相談や、弁護士・司法書士費用の立替制度もある。
期限を過ぎる前に行動を
会社の倒産は突然起きることが多く、従業員や取引先、利用者が十分な説明を受けられないまま手続きが進むこともある。
しかし、何もせずに待っていると、債権届出や未払賃金立替払制度、雇用保険などの手続きが遅れるおそれがある。
会社から届いた書類は捨てず、未払い金額と契約内容を整理し、分からないことは破産管財人や公的な相談窓口に確認する。
責任の所在を考えることも必要だが、最初に守るべきなのは、自分や家族の生活、そして自社の事業である。
会社の倒産・破産に関する相談先・関連リンク
未払い賃金、雇用保険、債権届出、前払金などで困ったときは、状況に応じて次の公的窓口を確認してください。
※個別の破産事件については、会社から届いた通知書に記載された破産管財人または申立代理人へ確認してください。
※本記事は一般的な制度と対応を説明したものであり、個別の事件に対する法律相談ではありません。具体的な対応は、破産管財人、労働基準監督署、ハローワーク、消費生活センター、弁護士などに確認してください。





